【ラヴミリ展示】相思　――「これくらい平気だって。心配してくれるのはありがたいけど、すぐ治るからさ。司令も知ってるだろ？」
　居住区域でばったり出会ったガストは、随分と傷だらけだった。
　イクリプスとの戦闘の跡にしては不自然な打撲痕や擦過傷の所以を問えば、どうやら特別任務の関係で出来たものなのだと。司令部に話が舞い込んで来た時は頭を痛めたものだが、今は輪を掛けて胃が痛い。
　口唇そばにまで痛々しい傷を拵えていたこともあって医務室を勧めたところ、先の台詞が返ってきたわけで。それに付け加えて『こんな程度の傷で医務室の厄介になるのも気が引けるしなぁ』と酷く消極的な……けれどもどこかガストらしい言い訳が返ってくるものだから、『医務室の人の厄介になりたくないのなら、せめて私の厄介になって』なんて半ば強引に司令室へ連れ込んで、今に至る。

七灰ワンドロワンライ46.『足音』.





ふと、意識が浅いところまで浮上した。
重たい瞼はなかなか上がっていかないが、なんとなく起きなければならない気がして懸命に目を開けていく。視界に入るのは真っ暗な部屋の中だが、視線を少し頭の方に移すと、カーテンの向こうは薄っすらと明るくなっているように見えた。
パシパシと瞬きを繰り返していると部屋の扉の軋む音が微かに鳴った。自分一人だった部屋の中に自分以外の気配が混ざる。その気配の主が誰かわかった時、鼻先まで引き上げていた布団の中で自然と口元が緩んでいった。
寝ぼけていた意識もはっきりとしてきて、夢から現実へと頭が切り替わる。
数日前から七海が単独で任務に出ていたこと。今夜には帰れるかもと昨晩メールがあったこと。待ってるねと返したら、遅くなると思うから無理しなくていいと返事が来たこと。