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    ミラー

    kk14ac

    DONE『この旅路の行く先に』-幕間-ジネ・マニングSS化
    ミラージ共和連邦(偽)到着前の夜の一幕
    『懐かしき森に佇む翼』
    テントの外で膝を抱える。晴れた夜空に瞬く星の数々、なんの異常も見当たらない、穏やかで平和な夜番。焚き火と毛布の温もりに包まれながら、何とはなしに空を見上げる。マカジャハット王国を出て数日、ミラージ共和連邦へと続く道中の野宿、その真っ最中だった。見上げた星はグランゼールでも、ここでも変わらない。数回、瞬きをしてからまた地平を見やる。少し乾燥した草原地帯、耳を澄ませば風に揺れる葉の音に、火の爆ぜるリズム。大地を包む月明かりは、空のてっぺんから全てを見下ろしている。時折、薄く雲が明かりを遮る様子は、月が瞬きをしているようだった。心地のよい静寂が、この夜に降り立っている。

    風が柔らかく髪を撫でていく感覚に目を閉じ、ほんの少しの物思いにふける。グランゼールで依頼を受けてから、ずっと頭を離れない場所がある。この先に待つ、生まれ故郷の砂漠。それから、左手に見える黒々とした森。そう、お師匠に拾われてから八年の年月を過ごし、去年に飛び出したあの地。ほんの少し足を延ばせば帰れてしまう、そんな距離に今日、野営地を構えている。
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