Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    五十

    フォ……

    DONE五十歳になった司類

    お題「真紅の怒りをまといしお茶」
    15分トレーニング 17 ※作業時間1H

    2990文字(所要時間約6分)
    「類、お前も呑むか?」
    「……ああ、最初から赤ワインなんて、珍しいねぇ」
    「うむ。これなら、呑みやすそうだしな」
    「司くんは本当、食べ物に詳しくなったよねぇ」

     海に沈む夕日を眺めていた。しっかりと、この景色を忘れないように。
     爽やかに流れる海風が涼しい。
     まだ、夏は始まったばかりだ。薄いYシャツだけではこの老体に応えるかと思ったが、思っていた以上に今日は天候がよく、むしろ少しばかり汗ばむような、そんな行楽日和の一日だった。

     類が、このヴィラのバルコニーに一人佇んでいる間、共にこの場所へ来ていた司は、いそいそと二人夕涼みをする準備をしていたようだ。
     彼の、年なりに少しかすれた声に振り返り、その方を見てやると、そこには備え付けられた真っ白なソファテーブルの中央に、先程二人で買ってきたワインと、色とりどりのフルーツが並べられているのだった。

    「ディナーまではあと二時間もある。少し、この場所で休むぞ」

     先に座っている司は、同じくキッチンから持ってきたらしいフルーツナイフで丁寧にオレンジを剥いていた。彼は相変わらず料理がうまい。五十を超えて、未だに料理という物を覚えてこなかっ 3071

    さらさ

    MAIKING『蒼穹の灰燼』(ページ数未定/B6サイズ/無料配布/BoothでのDL頒布を予定)

    真EDのクロウとノーマルEDのリィン(五十鈴)が現代日本らしきどこかで出会って、因果の違いを受け入れてくっつくまで。(閃Ⅳ後、創なし)

    何ページになろうと無料配布です。尻叩きのために1章後半をアップします。
    Ⅰ.あの花は知っていたのだろうか
    (前略)
     引き取られてから季節は幾度となく過ぎ、クロウは十六で世話になっているシュバルツァー家を離れて特に理由もなく日本に留学した。そうは言いつつもシュバルツァー家は彼の事を気にかけているし、長期休みになれば唯一実子であるエリゼが遊びに来る。彼は人付き合いも得意であることから退屈はしていなかった。心にある空洞に目をそらしたままではあるが。三度目の春を迎え、進路の選択を迫られている訳なのだが今のクロウに将来を考えるような気力は残されていなかった。

    「――で、どこだろうここ」
    「うーん、わからないな……」

    話し声にそっとクロウは聞こえるほうに目を向けた。まだ制服姿がぎこちない二人の少年が辺りを見回しながらどこかを目指しているようだった。季節も季節だし、新入生だろうとは思ったのだが。どちらともなんとなく見覚えがある気がして少し目を凝らす。ふと、クロウは片方の少年に目を向けてしまった。初めて出会った頃と同じような体格に、癖のある黒髪。距離があって見えないが、その姿はかつて彼が大切にしていた人を思い出させる。起き上がって彼の元に駆け寄ると、思わず手首を掴ん 1371