公
drsakosako
TRAINING火傷の感触タル鍾 ややねっちょり
交合、交接、交尾。交わると称するそれが繁殖を主とする行為ではない事を知ったのは、どれだけ昔のことだったろうか。情を交わすとはよく言ったものである。髪を指で梳き、ぬるい手の甲で唇の温度を確かめて、少しだけ伏せた瞼の奥から水底のような青藍が見据えてくる。肉付きの良くなった魂が、じわりと熱を持つ。
「上の空に見える」
「ん、……」
タルタリヤの手指が鍾離の輪郭をつ、と撫ぜる。少しだけ緊張に強張っているようにも見えたそれに頬を擦り寄せると、鍾離のなめらかな髪の一房が褥に広がった。
「余裕があるな」
「理性を取るなんて、らしくないかな」
鍾離がほくそ笑んで煽ってみせても、タルタリヤは目の色を変えることはなかった。それどころか、白布に散った鍾離の髪に、身を屈めて口を付ける振る舞いまですると来た。
578「上の空に見える」
「ん、……」
タルタリヤの手指が鍾離の輪郭をつ、と撫ぜる。少しだけ緊張に強張っているようにも見えたそれに頬を擦り寄せると、鍾離のなめらかな髪の一房が褥に広がった。
「余裕があるな」
「理性を取るなんて、らしくないかな」
鍾離がほくそ笑んで煽ってみせても、タルタリヤは目の色を変えることはなかった。それどころか、白布に散った鍾離の髪に、身を屈めて口を付ける振る舞いまですると来た。
清(せい)
DONE⚠️死ネタ好みが分かれるカテゴリなのでご注意を。
タル鍾だけどしょ先生しか出ません。
独白のようなもの。
あれはいつの日のことだったか
もうずっと前のことのようにも
つい先日のことのようにも感じる。
月日が流れるのは早い。
流れる時間は同じなはずなのに、
いつだって自分は世界に取り残されるのだと、
そう感じる。
喧嘩をした。
らしくもなく、彼が声を荒らげたのは
俺が別れを申し込んだからだ。
何人も友を見送ってきた。
だからこそ、彼を見送れる気がしなかった。
お前が旧友になってしまう日が来るのがこわい
そう伝えると彼は
驚いたような顔をした後、
寂しげに、安堵のため息をついた。
「そう、じゃあ俺にも分けてよ。
先生ほどじゃないかもしれないけど
普通の人間よりは長く生きられるようにできるでしょう?」
「不可能ではないが、いいのか?」
「もちろん。
1068もうずっと前のことのようにも
つい先日のことのようにも感じる。
月日が流れるのは早い。
流れる時間は同じなはずなのに、
いつだって自分は世界に取り残されるのだと、
そう感じる。
喧嘩をした。
らしくもなく、彼が声を荒らげたのは
俺が別れを申し込んだからだ。
何人も友を見送ってきた。
だからこそ、彼を見送れる気がしなかった。
お前が旧友になってしまう日が来るのがこわい
そう伝えると彼は
驚いたような顔をした後、
寂しげに、安堵のため息をついた。
「そう、じゃあ俺にも分けてよ。
先生ほどじゃないかもしれないけど
普通の人間よりは長く生きられるようにできるでしょう?」
「不可能ではないが、いいのか?」
「もちろん。
drsakosako
TRAINING紙一重の交歓タル鍾
戯れに重ねた刃がぶつかり合う音は、身体の暗い奥底でたゆたう熾火へ注がれる揮発油のようなものだった。児戯であるはずの剣戟の一つ一つが、退屈な策謀でなまくらになりかけた身体を乱暴に叩き起こし、つまらない謀略で喜悦を忘れた精神を目覚めさせていく。
此方が半歩踏み出せば、彼方が半歩引いて、薙ぐ。彼方が強烈に数歩踏み込めば、此方とて引いてなぞおれない。激流の刃のかけらを服に染ませるタルタリヤは、得も言われぬ興奮を背筋に走らせる。散る水の花びらの奥で、梔子色に爛々と輝く彼の瞳があまりにも熱を帯びていたから。
「――……全く、見惚れちゃうね」
槍の穂先に水の刃を砕かれるやいなや、そのまま弾かれるがままに後ろへと飛び退く。さざめく刃を数千の飛沫に変えてから矢の形へとこごらせて、背負った弓を握り、番える。水の刃を砕かれて、ぐ、と限界まで引いた弦から空気を裂く弓矢が放たれるまでは、一秒も無かった。
1025此方が半歩踏み出せば、彼方が半歩引いて、薙ぐ。彼方が強烈に数歩踏み込めば、此方とて引いてなぞおれない。激流の刃のかけらを服に染ませるタルタリヤは、得も言われぬ興奮を背筋に走らせる。散る水の花びらの奥で、梔子色に爛々と輝く彼の瞳があまりにも熱を帯びていたから。
「――……全く、見惚れちゃうね」
槍の穂先に水の刃を砕かれるやいなや、そのまま弾かれるがままに後ろへと飛び退く。さざめく刃を数千の飛沫に変えてから矢の形へとこごらせて、背負った弓を握り、番える。水の刃を砕かれて、ぐ、と限界まで引いた弦から空気を裂く弓矢が放たれるまでは、一秒も無かった。
drsakosako
TRAININGあやまちの定義タル鍾
普段は食事処で酒を舐め、見目麗しさと簡素さにとらわれず肴を愉しむものだが、何方かの居宅で飲み食いするのも趣があって良い。
逸品が手に入ったんだ、一人で空けるには勿体なくて。先生もどう?
そんなタルタリヤの誘いに、鍾離は二つ返事で快諾した。少しくらいは表情をけぶらせるかとも思ったが、杞憂でしかなかった。
幾つかの小さな椀に盛られた肴は、此処に来るまでの道中に通り過ぎる飲食店で買ったものだ。シンプルな椀や皿に盛られた肴を小器用につまみ、口に運ぶ。火酒で唇を湿らせてから少しだけ口に含み、舌の上で味を確かめてから嚥下する。無駄のない鍾離の所作の一つ一つは、己の飲み食いする手が止まってしまう程に美しかった。僅かに伏せた瞼の奥にとろけそうな梔子色が潤んでいるのを知ったのは、一つの卓を共にするようになって三度目くらいの頃だったように思う。
1860逸品が手に入ったんだ、一人で空けるには勿体なくて。先生もどう?
そんなタルタリヤの誘いに、鍾離は二つ返事で快諾した。少しくらいは表情をけぶらせるかとも思ったが、杞憂でしかなかった。
幾つかの小さな椀に盛られた肴は、此処に来るまでの道中に通り過ぎる飲食店で買ったものだ。シンプルな椀や皿に盛られた肴を小器用につまみ、口に運ぶ。火酒で唇を湿らせてから少しだけ口に含み、舌の上で味を確かめてから嚥下する。無駄のない鍾離の所作の一つ一つは、己の飲み食いする手が止まってしまう程に美しかった。僅かに伏せた瞼の奥にとろけそうな梔子色が潤んでいるのを知ったのは、一つの卓を共にするようになって三度目くらいの頃だったように思う。
清(せい)
DONEナチュラルに付き合っててナチュラルに同棲してます。タル鍾です。
短い。たしかに迂闊だったかもしれない。
股間に同じものをぶら下げた恋人に
女性の姿にもなれるのか、なんて。
聞いてしまったのだ。
旅人が受けた璃月の民からの依頼を手伝ったあと、
帰りの道中。
うっかりそんなことを聞いてしまった。
言い訳をすると、
本当に、ただ気になっただけなのだ。
女であって欲しかったとかそういうことではなく、
純粋に、神という存在への興味だった。
だが、まあ、そりゃそうか。
機嫌を損ねてしまった。
財布というものを持ち歩くのを忘れがちなこの男は
ルーズだとか大雑把などといった類のものではない。
慣れていないから、凡人の感覚がわからないから、
結果的にそう見えてしまうだけで、
実のところは繊細で、常に物思いにふけっている。
「女性の姿にも、なれるが…お前は女性の方がいいのか。」
そう言って黙りこくってしまった。
風に吹かれた長髪が、切なげに揺れる。
軽々しく口にしてしまったことを後悔している。
目の前の恋人は真正面から受け止めて、あまりにも真剣に悩むものだから。
「鍾離せんせ、そんなに真剣に受け止めないでよ〜 ただの興味だよ。女がいいと 1527
⚠︎
DOODLEワンドロ没絵テーマは
「恋人のタル鍾が致そうとしているときに部下が入室してきて威嚇するタルタリヤ」です。
タルタリヤの舌なめずりしてるとこめちゃくちゃ試行錯誤しました。
最初はこっちを出そうとしたのですが、初っ端から見てるだけ姿なしとはいえモブの存在があるのは飛ばしすぎだなと思って考え直し没にしました。 2
drsakosako
TRAINING理由現パロのタル鍾 タル先生と少年鍾離
眩い稲妻を含んだ雨雲がすう、と消えると、木の葉の表面や古びた屋根に溜まった夕立の名残が雫となって泥濘に次々と落ちていく。街の喧騒からも程遠く、テレビやラジオもない家の中には、その音が殊更によく響いた。一つの風だけでがたがたと音を鳴らす家にとっては大きすぎる音に、タルタリヤはぼんやりと天井を見上げる。
「雨漏りとか……」
「心配ない。今までに一度でもあったか」
「ない……」
確かに、一度とてない。雨漏りを直した事どころか、悪くなった立て付けを正した事もないし、軋む戸に油を注した事もない。外観も内装も古びてはいるが、傷んだ箇所が気にならない程に手厚く直されているらしかった。らしい、と言うのは、タルタリヤがその場面を見た事がないからだ。
919「雨漏りとか……」
「心配ない。今までに一度でもあったか」
「ない……」
確かに、一度とてない。雨漏りを直した事どころか、悪くなった立て付けを正した事もないし、軋む戸に油を注した事もない。外観も内装も古びてはいるが、傷んだ箇所が気にならない程に手厚く直されているらしかった。らしい、と言うのは、タルタリヤがその場面を見た事がないからだ。
drsakosako
TRAININGけだものの褥タル鍾
滾る血潮に、魂が狂う夜がある。
その時の己を鏡で見た事もないが、もしかしたら『けだもの』と呼んでも差し支えないような、弧を描き開いた唇の中に潜む犬歯と犬歯の間に、抑えきれない涎が滴っているのかもしれないし、月だけがぽっかりと浮かぶ闇のとばりの中で爛々と輝く目は理性を失っているように見えるかもしれない。
勿論、そうであれと望んだ事はない。だが、身の裡に潜む衝動は否応なしにそのけだものを鞭打って目覚めさせようとしてくるのだ。
たとえば、そう、巨大な異形のものと対峙した時。自らが持つ神の目によってもたらされた、とめどない水流でかたどられた刃がきちきちと音を立てる。その音をどこか他人事のように聴くタルタリヤは、それを一瞬武者震いかと誤認した。
1582その時の己を鏡で見た事もないが、もしかしたら『けだもの』と呼んでも差し支えないような、弧を描き開いた唇の中に潜む犬歯と犬歯の間に、抑えきれない涎が滴っているのかもしれないし、月だけがぽっかりと浮かぶ闇のとばりの中で爛々と輝く目は理性を失っているように見えるかもしれない。
勿論、そうであれと望んだ事はない。だが、身の裡に潜む衝動は否応なしにそのけだものを鞭打って目覚めさせようとしてくるのだ。
たとえば、そう、巨大な異形のものと対峙した時。自らが持つ神の目によってもたらされた、とめどない水流でかたどられた刃がきちきちと音を立てる。その音をどこか他人事のように聴くタルタリヤは、それを一瞬武者震いかと誤認した。