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    兵長

    きたまお

    TRAINING兵長の耳掃除をする団長。でもヨーロッパの人って耳かきしないらしいですね。リヴァイが自分の右耳に小指を突っ込んでいた。次に、右に頭を傾け、左側頭部を軽く掌底で叩いている。
    「よければ耳かき使うか」
     エルヴィンは机の引き出しから耳かきを取り出した。竹製の薄く細い精巧なつくりである。たまたまトロスト区の商店で見かけて入手したが、お気に入りの品だ。
     しかし、エルヴィンが取り出した耳かきを見たリヴァイは、露骨に眉間にしわを寄せた。
    「そうか、潔癖のおまえには他人の耳かきなど気持ち悪いだけか」
     しまい直そうとしたエルヴィンに、リヴァイが、あ、いや、と声をかける。
    「……使ったことがねえ」
    「そうなのか? 一度も?」
     リヴァイがこくりとうなずいた。もともとの小柄さとあいまって、とても実年齢には見えない。
    「耳掃除、してやろうか」
     そうと決まれば善は急げ。リヴァイに手伝わせて、長椅子を窓のそばに移動する。エルヴィンは日の光が当たっている側に座り、自分の膝を叩いた。
    「頭をここにのせなさい」
     長椅子の座面を見下ろしたリヴァイは口をへの字に曲げた。
    「おい」
    「この姿勢が一番都合がいいだろう。ほら」
     不承不承、リヴァイは長椅子に横たわった。黒髪の小作りな頭がエル 1227

    きたまお

    TRAINING兵長が傷ついた鳥を保護し、元気になったら放す飛び上がった先に、それがいた。
     巨大樹の森はウォール・マリア領内にある。壁外調査の際に比較的安全が確保される場所であるため、工程に組み入れられることが多い。奇行種とおぼしき十五メートル級の巨人が、森の中まで入り込んでいた。届きはしないのだが、巨人が下から腕を伸ばしたり、幹に体当たりをしてくるのがうっとうしくて、立体機動装置を使って樹の上を目指した。
     さすがは巨大樹、地上より二十メートルの高さに上がっても、枝の幅は二メートル以上はある。ひょいっと身体を持ち上げたら、枝の根元、幹のすぐそばに先客がいた。
     最初に目に入ったのが焦げ茶色に黒の混じった平たい頭だ。頭に比して大きな真っ黒く丸い目。目の上のひとすじと、ほおはほとんど白に近い茶色だ。とんがった先をもつ下向きの黒いくちばし、翼の色は頭と同じ焦げ茶で腹には茶色の斑が入っていた。体長三十センチもなさそうな小さな鳥だ。
    「おっと、悪いな」
     人に驚いて飛び立ってしまうだろうと思い、リヴァイは言った。が、予想に反して鳥は飛び立たず、首を少し傾けてリヴァイを見ただけだった。よく見ると、左の足の爪の先が黒い。血だ。
    「なんだ怪我してるのか」
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