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    創の軌跡

    kuro_ctrl

    MAIKING書きかけ話の冒頭。
    咬みついたら君は笑った 不意に目が覚めて、ラピスは寝袋の中で目を擦った。眠気もなくすっきりと起きられたのはラピスにしては珍しい。どれほど早めに就寝するようにしても朝には「もっと寝ていたい……」となるのがほとんどなのだ。
     ぼんやりと見上げたテントの中は暗い。ラピスの両眼に高性能な暗視機能が備わっているから周囲が見えるだけでまだ闇に包まれている。テントの入口付近を見遣っても日光が差し込んできている様子はないのでまだ夜なのは間違いなさそうだった。こんな時間に目覚めたとなるとますます珍しい。
     とりあえずラピスはもそもそと身動ぎして起き上がってみた。できるだけ物音を立てないように周囲を見回してみる。隣には人型に膨らんだピンク色の寝袋。更にその向こうには同じように膨らんだ青色の寝袋。どちらからも規則的な寝息が聞こえてくる。では、と逆側に目を向けてみればもぬけの殻となったシンプルな黒色の寝袋が転がっている。つまり今は本来そこで寝ているはずの人、ルーファスが周辺の見張りをしている時間帯ということだ。野営の際はラピスを除いた三人で寝ずの番を交代している。ラピスも協力したいと度々申し入れているもののこれまで一貫して却下されどおしである。子ども扱いされているようでラピスが常々不満に思っていることの一つだった。
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    kuro_ctrl

    MAIKING物凄く短い書きかけ。
    尽きる酸素を愛して「ねぇねぇ、ルーファス。キス、ってどんな感じなの?」

     あまりにも唐突に鼓膜を揺らした衝撃的な文字列に、ルーファスはまず「ふぅ」と大きく息を吐き出した。徐に読書用の眼鏡を外す動作に紛らせて眉間に生まれつつあった皺を指先で消し去る。次に読みかけの本をパタンと閉じて脇に置いた。栞を挟み忘れていたことには直後に気付く。その些細だが普段なら絶対にしないミスから己の動揺具合を測り、ルーファスはそっと虚空を見据えた。一、二、三。ゆっくりと三秒数えて事なきを得る。セルフコントロールはルーファスの得意とするところだ。問題はない。
     そもそも、つい数分前までこの突飛な発言をしてきた少女――ラピスはルーファスの隣で眠りこけていた。アフタヌーンティーを旅の連れである四人で楽しんだ後、ナーディアとスウィンは街に向かい、ルーファスとラピスはもう少し紅茶と菓子をそれぞれ楽しむためにホテルの自室に戻った。その内に満腹になったラピスは目を擦り始め、遂には読書するルーファスの腕に凭れてうたた寝を始めてしまった。その時点で彼女をベッドまで運んでやる選択肢もあったものの腕にかかる重みが不快ではなかったのでルーファスはそのままにして今まで読書を続けていた。そうして30分ほどが経過した頃、短い昼寝を終えたラピスが伸びをしながら目覚めた気配をルーファスはしっかり把握していた。
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