Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    団長

    きたまお

    TRAINING兵長の耳掃除をする団長。でもヨーロッパの人って耳かきしないらしいですね。リヴァイが自分の右耳に小指を突っ込んでいた。次に、右に頭を傾け、左側頭部を軽く掌底で叩いている。
    「よければ耳かき使うか」
     エルヴィンは机の引き出しから耳かきを取り出した。竹製の薄く細い精巧なつくりである。たまたまトロスト区の商店で見かけて入手したが、お気に入りの品だ。
     しかし、エルヴィンが取り出した耳かきを見たリヴァイは、露骨に眉間にしわを寄せた。
    「そうか、潔癖のおまえには他人の耳かきなど気持ち悪いだけか」
     しまい直そうとしたエルヴィンに、リヴァイが、あ、いや、と声をかける。
    「……使ったことがねえ」
    「そうなのか? 一度も?」
     リヴァイがこくりとうなずいた。もともとの小柄さとあいまって、とても実年齢には見えない。
    「耳掃除、してやろうか」
     そうと決まれば善は急げ。リヴァイに手伝わせて、長椅子を窓のそばに移動する。エルヴィンは日の光が当たっている側に座り、自分の膝を叩いた。
    「頭をここにのせなさい」
     長椅子の座面を見下ろしたリヴァイは口をへの字に曲げた。
    「おい」
    「この姿勢が一番都合がいいだろう。ほら」
     不承不承、リヴァイは長椅子に横たわった。黒髪の小作りな頭がエル 1227

    きたまお

    TRAININGのろける団長が書きたかったがあまりのろけなかったエルリ狂犬だとか野良猫だとか言われていることは承知していた。否定する気にもなれない。地下街ではたまたまファーランとイザベルとつるんでいたが、もともとひとりが性に合っている。
     だが、世の中には物好きがいるもので、その最近入った狂犬とやらを見てみたいという御仁があらわれたそうだ。キースの部屋に呼び出され、渋面を作った団長直々に「一日だけある方の護衛を頼みたい」と言われた。
    「調査兵団は壁の外に行くのが仕事じゃねえのか」
     腕を組んだまま言う。机に肘をおいたキースがため息をついた。
    「そう言うだろうとは思っていたが、有力な後援者のご機嫌をとるのも必要なことだ」
    「俺はたまたま立体機動装置を使いなれて、巨人をそぐのがうまいだけだ。壁内で人間相手に手加減するなどできねえ。殺しちまう」
     事実だから仕方がない。殺すことは慣れていても、殺さないように手加減することは慣れていない。
     もう一度キースがため息をついて、顔を斜め上にあげた。視線の先にでかい金髪の男が手を背中側に組んで立っている。エルヴィンは大きな目をリヴァイに向けて口を開いた。
    「調査兵団の仕事は壁外を巨人から人類の手に取り戻すこと。壁外調査 1916