坂井
tenka__TRPG
SPOILERCoCシナリオ『THESEUS』KP てんか
HO1 えびさん/PC 碧落 焱
HO2 31さん/PC 野分 風真
HO3 あゆさん/PC 坂井田 佑果
HO4 ザザリさん/PC 翅谷 渚
END1 全生還にてシナリオクリア。お疲れさまでした~~~~~!!!!頑張ったね!
ザザリ
SPOILER◇CoC THESEUS◆KP
てんか
◇PC/PL
HO1:碧落 焱/えび
HO2:野分 風真/31
HO3:坂井田 佑果/あゆ🐟
HO4:翅谷 渚/ザザリ
(敬称略)
◆END1
2024.11.6-23 2
dentyuyade
DONE矢野と坂井の集大成みたいな。坂井の実家に矢野が遊びに行く話。信仰じゃない「春期休みは実家に帰ろうと思っているのだけれど」
夕方、居候先兼仕事先である店の締め作業後、坂井はおもむろにそんな話を切り出した。瞬時、ただの同居人にまで律儀にそんなことを報告しなくても、と突き放しの一言を口にするのを躊躇するようになったのは、成長かそれとも後退か。そんな問答に答えを出すほど考え込む余裕は、当たり前に進んでいく日常会話にはなくて、矢野は「はあ」と置きの一言を返すことしかできなかった。まあ高々一、二泊なんだけどさ、従妹が泊まりに来てるらしくて、僕もたまには顔出すように言われたからさ。そうまるで言い訳でもするように話す意味が解らない。別に矢野はこの男がいなければ死ぬ愛玩動物でもなければ、この男と当たり前にすべての時間を過ごすような夫婦や恋人的な関係でもないのだし。
38150夕方、居候先兼仕事先である店の締め作業後、坂井はおもむろにそんな話を切り出した。瞬時、ただの同居人にまで律儀にそんなことを報告しなくても、と突き放しの一言を口にするのを躊躇するようになったのは、成長かそれとも後退か。そんな問答に答えを出すほど考え込む余裕は、当たり前に進んでいく日常会話にはなくて、矢野は「はあ」と置きの一言を返すことしかできなかった。まあ高々一、二泊なんだけどさ、従妹が泊まりに来てるらしくて、僕もたまには顔出すように言われたからさ。そうまるで言い訳でもするように話す意味が解らない。別に矢野はこの男がいなければ死ぬ愛玩動物でもなければ、この男と当たり前にすべての時間を過ごすような夫婦や恋人的な関係でもないのだし。
dentyuyade
DONE矢野葵と坂井克樹の今の話。いつか幽霊になる朝起きて、嗚呼ダメだと思った。それは突発的な衝動であって、緩やかに首を絞めてくる破壊衝動でもある。自分はこの空間に存在していることに慣れすぎてしまったのだと、これ以上ここにいてはいけないのだと、何かが自分を責め立てている感覚。それがじっと、己の臓腑のさらに奥から湧き上がってくるのだ。何度目だろうか。いつも黙って出ていくのも、懲りずに帰ってくるのも、そろそろ終わりにしなくてはならない。
「……」
鏡を見る。成熟した大人の体がそこに映っている。気づけばあの人の歳をとうに越していて、それでもなぜだか生きている。まったくあの人に似ていない自分。心も体も、どれほど似せようとしたってあの人にはなれない。そのことを考えれば考えるほど自分が嫌になって、惨めになる。早く、消えたくなる。それでも死は選べない。その加害性をよく知っているから、周囲の人間にそんなものを行使したくはないのだ。
23981「……」
鏡を見る。成熟した大人の体がそこに映っている。気づけばあの人の歳をとうに越していて、それでもなぜだか生きている。まったくあの人に似ていない自分。心も体も、どれほど似せようとしたってあの人にはなれない。そのことを考えれば考えるほど自分が嫌になって、惨めになる。早く、消えたくなる。それでも死は選べない。その加害性をよく知っているから、周囲の人間にそんなものを行使したくはないのだ。
dentyuyade
DONE矢野と坂井の話。矢野くんは多分その気になればお店レベルのものが作れる。オムライス冷蔵庫の中に覚えのない皿が鎮座している。のせられているのは鮮やかな黄色の定番料理だ。ケチャップをかけたくなるな、と坂井は無意識に手を伸ばしてキッチンテーブルの上に置いてみる。もちろんそれは突然姿を変えて襲い掛かってくるわけでもなく、爆発するでもなく、相も変わらずそこに佇んでいるだけだった。作った覚えはない。はて、と小首をかしげて立ち往生していると、背後から「それ、食べていっすよ」と軽薄な声がかかった。
「どうしたんだい、これ」
「どうしたって……普通に」
卵を割ってフライパンに落とすジェスチャーをする。大袈裟なパントマイムに坂井は気を取られながらも、その大意を読んだ。作ったのか、君が。やや大きめの声が響くのに矢野はわずかにびくつきつつ、はい、とうだつの上がらない様子で頷いた。
2760「どうしたんだい、これ」
「どうしたって……普通に」
卵を割ってフライパンに落とすジェスチャーをする。大袈裟なパントマイムに坂井は気を取られながらも、その大意を読んだ。作ったのか、君が。やや大きめの声が響くのに矢野はわずかにびくつきつつ、はい、とうだつの上がらない様子で頷いた。
dentyuyade
DONE坂井克樹には大人の相手の方がまだ幸せの道があるような気がします。矢野くん相手にはまったくそういう気持ちはないけど、彼にはちょっとあってもいいな、と思いながら書きました。ライターの底「よお」
「……なんでいるんだ」
坂井克樹の家は、生業としている古書店の二階部分にあたる。古臭く、人間の出入りがない部分には埃すら立ち込めていることも少なくないそこは、坂井ともう一人、今はおらぬ同居人の住処としての機能を持っていた。だから、坂井は終業後の買い出しから戻ったその時、覚えのない灯りがともっているのを見て、ああようやく帰ってきたのかと、そう安堵したにもかかわらず、である。ストーブの前に丸まっているのは男にしては華奢な、かの後ろ姿ではなく、くしゃくしゃになったワイシャツにくるまれた、まさしく年上の男と言わんばかりの背中なのだから、世の中は思うようにならない。坂井は一つ溜息をついて、座布団を投げつけた。
3099「……なんでいるんだ」
坂井克樹の家は、生業としている古書店の二階部分にあたる。古臭く、人間の出入りがない部分には埃すら立ち込めていることも少なくないそこは、坂井ともう一人、今はおらぬ同居人の住処としての機能を持っていた。だから、坂井は終業後の買い出しから戻ったその時、覚えのない灯りがともっているのを見て、ああようやく帰ってきたのかと、そう安堵したにもかかわらず、である。ストーブの前に丸まっているのは男にしては華奢な、かの後ろ姿ではなく、くしゃくしゃになったワイシャツにくるまれた、まさしく年上の男と言わんばかりの背中なのだから、世の中は思うようにならない。坂井は一つ溜息をついて、座布団を投げつけた。
dentyuyade
DONE死を感じることは同時に生を感じることだと思います。首締めが好きです。坂井くんと矢野くんの話。生存本能は執着たり得るか矢野葵は執着心というものとおおよそ縁のない男だと思う。それは坂井がここ数年……もちろん途切れ途切れではあるのだが、それでも幾度となく同じ釜の飯を食ったりして彼を観察し、得た結論だった。物を捨てろと言えば容赦なく捨てる。一口欲しいと言われれば一切の迷いなく差し出すし、挙句の果てにそれは人間関係にまで適応されるのだから世話ない。好意を向けられればそれに応え、かと思えばそれが反転してしまっても何の感慨もなく距離を置ける。今まで坂井と矢野との縁が切れなかったのも、偏に坂井側が拒絶を示さなかったから、の一点に尽きるような気がする。何時だって適当に、流されるままにへらへらと。その軽薄な様子の下に隠されているものを坂井は垣間見たこともあるのだが、だからといって理解できるわけでもないのだから困りものだった。揺蕩うまま、身じろぎ一つせずに、流され沈もうとしている姿は、執着心の人一倍強い坂井には理解しえないものでしかない。
3157dentyuyade
DONE矢野くんと坂井くんのちょっと先の話。坂井克樹、矢野葵に負けないでほしい。世界心中願望にさよならを息をすることは容易いことだと、生きとし生けるものすべてが思っている。それは今を生きる存在は皆等しく呼吸をしているからであり、それが難しくなるというのは即ち、死に近づいているという事実を意味するからだ。だから、肺というのは実のところ心臓よりもずっと生に密接した器官であり、それを損なわんとする行為は自殺と呼ぶに等しいのである。そう、それは例えば煙草であったりだとか。
「あー、まっず……」
一度たりともこの人生において煙草の煙を美味いと思ったことは、矢野にはなかった。ではなぜそれを欲するのか。ニコチンへの依存と言ってしまえばそこまでかもしれないが、あえて言うならば、そこに安心を覚えるからと表現するほかない。肺を汚染することは緩やかな自死で、希死念慮を満たすにはもってこいの小道具なのである。それを思うたび矢野は、大人になってよかったと唯一感じるのだ。フェンスに寄りかかり、マンションの一室から街並みを眺める。知らぬ街からそれなりに知った街になったそこには、いくつもの光が息づいては湛えられていた。いつまでここにいるべきか。そんな答えのない問答に、静かに火蓋が切られたのを矢野は肌で感じ取る。
4743「あー、まっず……」
一度たりともこの人生において煙草の煙を美味いと思ったことは、矢野にはなかった。ではなぜそれを欲するのか。ニコチンへの依存と言ってしまえばそこまでかもしれないが、あえて言うならば、そこに安心を覚えるからと表現するほかない。肺を汚染することは緩やかな自死で、希死念慮を満たすにはもってこいの小道具なのである。それを思うたび矢野は、大人になってよかったと唯一感じるのだ。フェンスに寄りかかり、マンションの一室から街並みを眺める。知らぬ街からそれなりに知った街になったそこには、いくつもの光が息づいては湛えられていた。いつまでここにいるべきか。そんな答えのない問答に、静かに火蓋が切られたのを矢野は肌で感じ取る。
いと@it0c0c
PASTCoC「楽園パラノイア」 現行未通過 一応❌KP:あべるさん[@Abel_Roid]
HO1:坂井知季さん/タケネさん[@takene_hakutaku]
HO2:五郎島金時さん/いまやさん[@imaya346]
HO3:雛森香也子ちゃん/六月さん[@_6gatsu]
HO4:良之倉鸞くん/いと 9