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    夜空

    hiromu_mix

    DOODLEファ切で18.奪われた心
    「ディープキス 夜空 ルームキー」
    ※ヴィランパロです
    見えるのは夜の色最上階に向かう高速エレベーターの、目まぐるしくカウントしていく数字を切島は、睨みつけながら軽い浮遊感を味わう。手の中にはルームキーが一つ。突然、切島のヒーロー事務所に送りつけられたそれは、封筒には少し癖の字で宛名と。中にはこのルームキーと、ホテルの住所、誰にも言わないで来るようにと書かれたメモ。いたずらだろうと捨て置くにはこのルームキーはこの辺りでは一番の高級ホテルの最上階のものだったし、メモに『ファットガム』と走り書きされたサインを、切島は知っていた。
    だから来た。誰にも、言っていない。これが罠だとは思いつつも、誰かに告げたことで他の誰かを巻き込むのは避けたかった。
    柔らかなメロディーと共にドアが開く。切島は一歩、外側に踏み出した。夜の海みたいな濃紺の絨毯は、まだだれも踏んだことがないみたいになめらかで。そこを恐る恐る歩きながら、この階にたったひとつの部屋を目指した。本来であれば控えているはずのコンシェルジュたちには、切島が来るのと入れ替わりで階下に降りてもらっている。彼らは、この部屋を取った人間がどんな人かなんて知らない。たとえそれが、彼らにとってはとても紳士的な男だたとしても。
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