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    HbZld

    PROGRESS若い頃の姐さんは王妃様に実らせる気のない片想いをしていたと思っています。 城の石畳に軽快な蹄鉄の音が響く。蔦に彩られた城壁の間を、常歩で進む馬が二頭。白馬には黄金の髪の貴婦人が娘と共に横乗りし、白馬よりやや大きな馬体の黒馬には燃えるような赤い髪の女が跨っていた。
    「ウルボザは馬に乗るのも上手ね」
    「先生が良かったのさ」
    「ふふ。もうとっくに追い抜かされてしまったわ」
     目的地である桟橋まで辿り着くと、砂漠の女傑は黒馬からひらりと飛び降り、白馬に歩み寄って姫と王妃が下馬するのに順に手を貸した。
    「ウゆボじゃ、また来て。やくそくね!」
    女傑の名の発音は幼い姫にはまだ難しい。舌足らずに呼ばれた砂漠の若き長はくすぐったそうに笑って小さな姫を抱き上げた。
    「ああ。また会おう、御ひい様。約束だ」
    浅黒く精悍な頬が子どものふっくらとした頬に寄せられ、青く染めた唇がちゅっちゅっと音を立てる。頬を寄せ合う砂漠式の挨拶に姫は慣れた様子で応じた。
    「このまま連れて帰っちまいたいねえ」
    姫を桟橋に下ろしながら、女傑はしみじみと呟いた。王妃が片手で口もとを覆ってクスクスと笑う。たったそれだけの仕草がひどく優雅だ。
    「ダメよ。ロームが寂しがるわ」
    女傑は大袈裟にため息をついて見せてか 881

    yotou_ga

    PROGRESS五月の新刊になる予定のもの。ひょんなことから現代の北欧に向かうことになったジュナカルとマスターとマルタ姐さん(裁)がわちゃわちゃする話。1.5部時空と思われる。Oollt

    1.

    「と、言うわけでだ立香ちゃん。君には北欧に行ってもらうことになった。それも特異点のじゃない、現代の北欧だ。じゃ、グッドラック!」
    「待って? まってダ・ヴィンチちゃん、ちゃんと順を追って説明して!」
     人理保証機関フィニス・カルデア。その管制室に藤丸立香の叫び声がこだました。
     何しろ管制室に呼び出され、一も二も無く告げられたのが冒頭の台詞である。というわけも何もない。人理修復からこちら、確かに微小特異点やら亜種特異点やらの修復に駆り出されてはいるが、流石に説明なしで北ヨーロッパに送り込まれる理由などさっぱり分からないのである。しかも特異点ではないと来た。
     狼狽える立香に、カルデア技術顧問、レオナルド・ダ・ヴィンチは悪戯げに微笑んでみせた。
    「勿論冗談さ。ちゃんと説明するよ」
    「よ、良かった……」
     ほっと胸を撫で下ろす立香。たまたま管制室にいたサーヴァントたちは呆れ顔でダ・ヴィンチを見るが、当の天才はまるでどこ吹く風である。
    「さっきも言ったけど、今回の任務は特異点修復ではない。実は魔術協会からの依頼でね」
    「協会から……?」
    「そうだ。まあつまるところ、どう 9968