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    川端康成

    お箸で摘む程度

    TRAININGグレイとジェット
    グレイとジェットが右腕を交換する話。川端康成「片腕」に着想を得ています。
    お誕生日おめでとう。
    交感する螺旋「片腕を一日貸してやる」とジェットは言った。そして右腕を肩からはずすと、それを左手に持って僕の膝においた。
    「ありがとう」と僕は膝を見た。ジェットの右腕のあたたかさが膝に伝わった。

     僕とジェットは向かい合って、それぞれの柔らかい椅子に座っていた。ジェットの片腕を両腕に抱える。あたたかいが、脈打って、緊張しているようにも感じられる。
     僕は自分の右腕をはずして、それを傍の小机においた。そこには紅茶がふたつと、ナイフと、ウイスキーの瓶があった。僕の腕は丸い天板の端をつかんで、ソーサーとソーサーの間にじっとした。

    「付け替えてもいい?」と僕は尋ねる。
    「勝手にしろ」とジェットは答える。

     ジェットの右腕を左手でつかんで、僕はそれを目の前に掲げた。肘よりもすこし上を握れば、肩の円みが光をたたえて淡く発光するようだ。その光をあてがうようにして、僕は僕の肩にジェットの腕をつけかえた。僕の肩には痙攣が伝わって、じわりとあたたかい交感がおきて、ジェットはほんのすこし眉間にしわを寄せる。右腕が不随意にふるえて空を掴んだ。
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    DONE学生ネロ×作家ファウストで、ネロがファウストに自分の片腕をひと晩貸してあげる話。設定は川端康成の「片腕」のパロディです。
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    ネロ×ファウスト現パロwebオンリー「ネオンの現に祝杯のファセット」開催おめでとうございます!遅刻してすみません!
    アンディーヴと眠って「先生、眠れないの?なら片腕をひと晩貸してやろうか」

     先生、と僕を呼ぶ彼は、右腕を肩からはずして、それを参考書のうえに置いた。僕はおもわずあたりをみわたす。旧い喫茶室は昼間でも薄暗く、煙草の煙で視界がわるい。おまけに狭い店内のあちこちによくわからない置物や観葉植物が置かれているせいで、僕らの席は完全に死角になっているようだった。(もっとも、この店の主人も客も、他人に興味を払うような性質ではないのだけれど)
     ネロは残ったほうの手で頬杖をつき、僕のほうをじっとみつめた。都内の私立にかよっているという彼は、大抵学校帰りの制服姿でこの店にやって来る。着崩した指定の上着となにかのロゴがはいったTシャツ、フィラのザック、履きつぶしたコンバース。けれども今日はそのシャツの片袖が、萎れた花みたいにうなだれている。僕はテーブルに置かれたものに眼をやった。どこをどうみても、それはやっぱりネロの右腕だった。中指にできたペンだこはみなれたものだったし、手首につけたリストバンドはいつも彼がしているものだ。だというのに、彼の手を離れたそれは、酷く馴染みのない置物のようにみえた。例えば博物館の硝子ケースに飾られた化石や恐竜の骨みたいに。いや、この場合、文字通り手が、離れたのか。ぼんやりとした頭で、つい、くだらないことを考える。
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