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    歩く

    シウト@のんびり

    MAIKING観葉植物を愛でる独歩くんとそれによりなんだかソワッとしてしまう一二三くんの話。まだ付き合ってない。唐突に思いついたネタ。文章も投稿出来るようになったと見たので上げてみます。書きかけのネタがいくつかあるのでとっとと書き上げたいです。「おまえの名前借りてもいいか」
    珍しく休日に出かけていた独歩が、左手にぶら下げたビニール袋を掲げて聞いてくる。
    一瞬何のことかわからなくて首を傾げたけど、ビニール袋に印字してあるホームセンターのロゴを見て把握した。
    「なに、また買って来たの?」
    「またって言うな、俺の数少ない趣味のひとつだぞ」
    ちょっと拗ねたように言って、ローテーブルに恭しく置かれたビニール袋から独歩が取り出した観葉植物は、黄色と緑色が混在する多肉植物だ。
    いや、これ絶対俺の髪色と似てるからって名前借りるとか言い出しただろ。
    「別にいいけどさぁ、でも今まで名前なんかつけてなかったじゃん?」
    「ん···なんかおまえの名前つけたら生命力強くなりそうだなって」
    「それは褒められてるんだよね?」
    「もちろん」
    なんだか釈然としなかったけど、その手のひらサイズの「ひふみ」を見つめる独歩の顔がいつになく輝いていたので、それ以上何かを言うのもはばかられた。
    激務が続いて心身ともに疲弊してくると、独歩はよく観葉植物たちに話しかけてるみたいだから、俺の名前がつけられたあいつにも愚痴ったりすんのかなって思うとちょっと面白くて、悪い気はしな 1514

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    TRAINING出島のマーケットを夜歩く話。
    800文字チャレンジ17日目。
    月のない夜(あなたのいる夜) 出島は景観整備がほとんどされていないから、夜にマーケットを歩くとほとんど空に月はない。星もないし、店から登る湯気や、煙草の煙なんかで薄くけぶっている。けれど俺はその風景が好きだった。それこそが彼が日本に戻ってきた理由のような気がして。
     狡噛が日本に戻って再び寝るようになった時、彼はここでは月は見えないのだなと、少し寂しそうに言った。そりゃあそうだろう、彼が道を作るように進んでいた発展途上国には夜には明かりはない。みな早くに寝て、早くに起きて仕事をする。こんなふうに夜を楽しむのは、電気が通っているところだけだ。
    「飲んで帰るか?」
    「今日はそうするか」
     花城と離れたら本当はすぐにでも官舎に戻らねばならないのに、俺たちは彼女の監視がルーズなのをいいことに聞きなれない言葉を話す店主に勧められて、読めもしない文字が書かれたビールを二本頼んだ。狡噛はそれを温かい夜にぐいぐい飲んで身体を暖かくして、俺の指先に、ベンチに手を置くふりをして触った。俺もそれに同じように触った。あたりにはまだ人がいて、月はなくて、通りに掲げられたぼんやりとした明かりだけが夜市を照らしていた。美しい夜だった。
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    百合菜

    PAST遙か6・有梓
    「私は幸せだから」

    こちらの世界にやってきた有馬と銀座を歩く梓。
    そこでふとしたひと言とは……
    「寒くなってきましたね」
    そう言いながら梓は隣を歩く有馬に話しかける。
    銀座の街は銀杏の葉が金色に輝き、もうじき寒い冬がやってくることを伝えてくる。
    ふたりでこうして一緒に歩いていると思い出す。
    風景は違えど、帝都の銀座でこうして歩き、街を守っていた日々を。
    しかし、あのときは自分たちだけではなく、千代や秋兵たちもいた。

    「みんな、元気かな……」

    思わずそんな言葉が口から出てしまう。
    しまったと思ったときには遅かった。
    隣にいる有馬が何か言いたげに梓のことを見つめてきた。

    「ごめんなさい、そういうつもりでは……」

    他意はない。
    ただ、隣にいる人にこの言葉を向けると必要以上に責任を感じることは、少し考えればわかりそうなものなのに。

    「すまない」

    その言葉が指しているのが何であるか。はっきりとは伝えていないが、何であるか梓は理解した。

    自分を守るために神子の力を使った。
    そのために仲間たちとは別れの挨拶すらできなかった。
    仕方がないとわかっているが、名残惜しい気持ちはどこかにある。

    「一さんが謝る必要はないです」

    こちらの世界とあちらの世界。どっちみち、どちらかを選ばない 820