胡蝶の夢
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DOODLEミラプト/胡蝶の夢白亜の蝶は夜に羽ばたく ────星が、瞬いている。
うっすらとした闇が空を覆って、その薄闇の中を幾つもの光が漂っている。
その小さな光の一つひとつを繋げていけば、何らかの形になるのだという。
だが生憎と、あの朗らかな博士のように天文学の知識を然程有していないからか、ただの光の粒にしか見えなかった。
そうして見上げた視界の端、遠くで輝く星よりも近距離で桃色の花びらが風によって散る様が見える。
忘れ去られつつあったボレアスの地、その頭上で煌々としていた惑星クレオがシンジケートの手によって【ゲーム】のアリーナへと変貌を遂げたのは最近の出来事だった。
本来ならばボレアスが【ゲーム】開催地となる筈だったが、シアを主導としたその計画は頓挫まではいかずとも、どうやら予定調和とはいかなかったらしい。……シンジケートが一枚噛んでいる時点で、希望通りに行く方が珍しいのだろうが。
6107うっすらとした闇が空を覆って、その薄闇の中を幾つもの光が漂っている。
その小さな光の一つひとつを繋げていけば、何らかの形になるのだという。
だが生憎と、あの朗らかな博士のように天文学の知識を然程有していないからか、ただの光の粒にしか見えなかった。
そうして見上げた視界の端、遠くで輝く星よりも近距離で桃色の花びらが風によって散る様が見える。
忘れ去られつつあったボレアスの地、その頭上で煌々としていた惑星クレオがシンジケートの手によって【ゲーム】のアリーナへと変貌を遂げたのは最近の出来事だった。
本来ならばボレアスが【ゲーム】開催地となる筈だったが、シアを主導としたその計画は頓挫まではいかずとも、どうやら予定調和とはいかなかったらしい。……シンジケートが一枚噛んでいる時点で、希望通りに行く方が珍しいのだろうが。
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DOODLEみかつるワンドロさんのお題「胡蝶の夢」です。胡蝶の夢夢の中で、俺は蝶だった。
ふわふわとフラフラと飛んでいく、蝶になったせいか意識は朦朧としているがやりたいことはある。
たどり着きたい場所があったので、俺は必死に飛ぶ、そこを目指して何も考えずに一心不乱に飛んだ。
そして、見えたのは見覚えのある後ろ姿である。
着物は白く、髪も白くなっているが見間違えるはずはない、その歩く姿の後ろにぴったりとつけた。
すれば彼は、指先をこちらへ向けた白くなった指先に止まってみる。彼は俺の名前は呼ばなかったが、いつものように微笑んでいた。
「駄目だぞ」
(どうしてたい)
「お前のことは連れていけない」
(いいじゃないか、旅は道連れ世は情けと言うだろ)
「手八丁口八丁を弄されても、俺は連れて行かない」
1439ふわふわとフラフラと飛んでいく、蝶になったせいか意識は朦朧としているがやりたいことはある。
たどり着きたい場所があったので、俺は必死に飛ぶ、そこを目指して何も考えずに一心不乱に飛んだ。
そして、見えたのは見覚えのある後ろ姿である。
着物は白く、髪も白くなっているが見間違えるはずはない、その歩く姿の後ろにぴったりとつけた。
すれば彼は、指先をこちらへ向けた白くなった指先に止まってみる。彼は俺の名前は呼ばなかったが、いつものように微笑んでいた。
「駄目だぞ」
(どうしてたい)
「お前のことは連れていけない」
(いいじゃないか、旅は道連れ世は情けと言うだろ)
「手八丁口八丁を弄されても、俺は連れて行かない」
mondlicht1412
DONEワンドロワンライの第64回 お題「胡蝶の夢」お借りしました。【夏五】第64回 お題「胡蝶の夢」――…る、――…とる
「悟!」
びくりと、体が跳ねた。目を開けると、葬式にでも行ってきたような上下黒のスーツ姿の男が、呆れ顔で天井からぶら下がっている。
…いや違う、五条が仰向けにひっくり返っているのだ。
「――…れ、すぐる?」
「待っても来ないと思ったら…ほら起きて、移動だよ」
「本当に、すぐる?げとー、すぐる?」
「はあ?」
とにかく起きろと屈んだ男に額を軽く叩かれ、渋々上体を起こす。途端にくらりと襲ってきた眩暈を、首を振って追い出した。
起き上がってみてようやく、五条自身も全く同じ黒いスーツを着ていることに気づく。寝るためになのかネクタイは緩んでいたが、こちらも同じく黒である。
混乱していた思考が徐々に落ち着きを取り戻す。今の状況を思い出す。
1930「悟!」
びくりと、体が跳ねた。目を開けると、葬式にでも行ってきたような上下黒のスーツ姿の男が、呆れ顔で天井からぶら下がっている。
…いや違う、五条が仰向けにひっくり返っているのだ。
「――…れ、すぐる?」
「待っても来ないと思ったら…ほら起きて、移動だよ」
「本当に、すぐる?げとー、すぐる?」
「はあ?」
とにかく起きろと屈んだ男に額を軽く叩かれ、渋々上体を起こす。途端にくらりと襲ってきた眩暈を、首を振って追い出した。
起き上がってみてようやく、五条自身も全く同じ黒いスーツを着ていることに気づく。寝るためになのかネクタイは緩んでいたが、こちらも同じく黒である。
混乱していた思考が徐々に落ち着きを取り戻す。今の状況を思い出す。
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TRAINING5/14ワンライお題【祝福/胡蝶の夢/ふりがな】
幸せで、怖い夢をみる五条のお話です。高専時代のお話。
毎夜みる夢 繰り返し何度も見る夢がある。俺はその中で高専の教師をしていて、硝子や、面倒だが可愛らしい生徒たちに囲まれている。そしてそんな俺の隣には髪型を変えた傑もいて、彼もどうやら俺と同じく教師らしいことが分かる。俺たちはその夢の中では呪術師を続けていて、やはり友人であり恋人同士だった。
ここまではよくある俺の願望なんだろう。でも不思議なのは、見たこともない小さな女の子の双子二人が傑になついていることで、彼女らは俺にひらがなで書かれた肩たたき券(肩の部分には可愛らしいふりがながふられている)をくれる。「傑さまと仲良くしてくれてありがとう」「傑さまは寂しがり屋さんだから」そんなふうに俺に言った後、「結婚式は私たちがお花を撒いてあげるからね」なんてませたことを言ってきゃーって叫びながら走り去ってゆく。どうやら彼女らは俺たちの関係を知っているようで、傑も俺もここにいる人々には隠していないようだった。俺が面倒を見ている生徒たちも笑っている。「早く結婚しなよ先生」「見てるだけで恥ずかしいから早く結婚したら」「傑さんと一緒にいたらちょっとはマシになるんじゃないですか」生徒たちは口が悪かったが、俺たちの仲を祝福してくれる。いやあ、僕もそろそろ結婚したいんだけどね、傑が恥ずかしがってさぁ。——僕? あれ、俺は今僕って言った? なんで? そういえば傑がせめて僕って言えって言ってたよな。俺って言うのはよしたほうがいいって。夢の中でそれを思い出してるのかな。俺はまばたきをする。しかし次の瞬間双子が消え、傑が消え、生徒たちも消え、結局残ったのは硝子だけだった。そして彼女は言うのだ。「また気づいちゃったね」と。「気づかなきゃ夢を見てられたのに」と。俺は混乱する。僕は混乱する。そしてまばたきをして、ぼんやりと天井に向かって手を伸ばす。この部屋には、最後まで残ってくれた硝子ももういない。僕は、いや俺は、自分の部屋でどうでもいい夢を見ていたことに気づく。すぐにどっちが夢なのか分からなくて、携帯電話を触る。表示された年月日から、まだ自分が高専生であることに気づく。良かった、俺はまだ高専生だ、傑もいる、硝子もいる、見知らぬ生徒たちや双子の少女たちもいない。俺は吐きそうになりながら着替え、傑の部屋を訪ねる。するとそこにはまだ眠っている彼がいて、俺はその横顔の尊さに泣きそうになりながらベッドの脇に座り込む。
1454ここまではよくある俺の願望なんだろう。でも不思議なのは、見たこともない小さな女の子の双子二人が傑になついていることで、彼女らは俺にひらがなで書かれた肩たたき券(肩の部分には可愛らしいふりがながふられている)をくれる。「傑さまと仲良くしてくれてありがとう」「傑さまは寂しがり屋さんだから」そんなふうに俺に言った後、「結婚式は私たちがお花を撒いてあげるからね」なんてませたことを言ってきゃーって叫びながら走り去ってゆく。どうやら彼女らは俺たちの関係を知っているようで、傑も俺もここにいる人々には隠していないようだった。俺が面倒を見ている生徒たちも笑っている。「早く結婚しなよ先生」「見てるだけで恥ずかしいから早く結婚したら」「傑さんと一緒にいたらちょっとはマシになるんじゃないですか」生徒たちは口が悪かったが、俺たちの仲を祝福してくれる。いやあ、僕もそろそろ結婚したいんだけどね、傑が恥ずかしがってさぁ。——僕? あれ、俺は今僕って言った? なんで? そういえば傑がせめて僕って言えって言ってたよな。俺って言うのはよしたほうがいいって。夢の中でそれを思い出してるのかな。俺はまばたきをする。しかし次の瞬間双子が消え、傑が消え、生徒たちも消え、結局残ったのは硝子だけだった。そして彼女は言うのだ。「また気づいちゃったね」と。「気づかなきゃ夢を見てられたのに」と。俺は混乱する。僕は混乱する。そしてまばたきをして、ぼんやりと天井に向かって手を伸ばす。この部屋には、最後まで残ってくれた硝子ももういない。僕は、いや俺は、自分の部屋でどうでもいい夢を見ていたことに気づく。すぐにどっちが夢なのか分からなくて、携帯電話を触る。表示された年月日から、まだ自分が高専生であることに気づく。良かった、俺はまだ高専生だ、傑もいる、硝子もいる、見知らぬ生徒たちや双子の少女たちもいない。俺は吐きそうになりながら着替え、傑の部屋を訪ねる。するとそこにはまだ眠っている彼がいて、俺はその横顔の尊さに泣きそうになりながらベッドの脇に座り込む。