蜘蛛
masasi9991
DONE土蜘蛛さんと大ガマさんの出会ったときの話悪い妖怪 鬱蒼と茂った深い山の奥だ。あまりにか細い獣道を見るにつけ、人も獣もまともに寄り付かぬと見て取れる。
その場所によくない噂があるのは知っていた。それを重々承知でやってきた。根も葉もあるのかどうかは知らないが、噂なんぞは怖くない。むしろこちらが恐れ追い立てられる側なのだ。そこに潜むのが妖怪変化の類ならばはらからだ。話の通じる相手であれば、と断り書きを入れようが。もしも話せぬような相手であれば……まあよい。まずは会って考えてみようではないか。仮にここがだめでも、幸いこの国は広い。まだ彷徨うあてがある。
……などと考えて歩く折、何かに追われているのを察した。
命を付け狙うといった苛烈な様子ではない。獣道の草を踏む怪しい足音。草木を分け入って、吾輩とそう変わらぬ速さで歩いている。付かず離れず、こちらの様子を伺っているようだ。
2246その場所によくない噂があるのは知っていた。それを重々承知でやってきた。根も葉もあるのかどうかは知らないが、噂なんぞは怖くない。むしろこちらが恐れ追い立てられる側なのだ。そこに潜むのが妖怪変化の類ならばはらからだ。話の通じる相手であれば、と断り書きを入れようが。もしも話せぬような相手であれば……まあよい。まずは会って考えてみようではないか。仮にここがだめでも、幸いこの国は広い。まだ彷徨うあてがある。
……などと考えて歩く折、何かに追われているのを察した。
命を付け狙うといった苛烈な様子ではない。獣道の草を踏む怪しい足音。草木を分け入って、吾輩とそう変わらぬ速さで歩いている。付かず離れず、こちらの様子を伺っているようだ。
masasi9991
DONE出会う前の土蜘蛛さんと大ガマさん観察 この大きな生き物は、やたらめったら動き回っていて落ち着きがない。朝日が登る前に突然出てきたかと思えば何もせずにまた巣に戻っていき、何だ何だと思っている間に巣の別な出口からどこかへ出ていった。気配でわかる。うろうろとほっつき回るのは鳥や魚と変わりゃしないが、妙なのは獲物を取っているわけでもないようだ、ということだ。
食うものも食わずにあっちこっちへ動いている。あの大きな生き物は変な奴だ。それは蜘蛛か人かに似た影の形をしているが、獲物も取らずに動き回っている蜘蛛なんか見たことがないし、人というのは確かに一見なんの意味もなく動き回っていることが多いけど、それでも獲物を取るし、食うものを食っている。だからそれは蜘蛛でも人でもないようだ。
1750食うものも食わずにあっちこっちへ動いている。あの大きな生き物は変な奴だ。それは蜘蛛か人かに似た影の形をしているが、獲物も取らずに動き回っている蜘蛛なんか見たことがないし、人というのは確かに一見なんの意味もなく動き回っていることが多いけど、それでも獲物を取るし、食うものを食っている。だからそれは蜘蛛でも人でもないようだ。
masasi9991
DONE土蜘蛛さんと大ガマさんとホラーっぽいもの車両内にて ふと気付いたら電車の中だった。ここはどこ? ――学校に行く途中、電車の中。私は誰? ――私は――私だ。別に疑う余地もない。いつもの私だ。名前も経歴も特にこれといっておかしいと感じるところはない。私は私。ここは電車の中。私はまるで今生まれたばかりのようにふと目を開いて、ふとここは一体どこなのか、今はいったいいつなのか、私は誰だったのか、と何もかもが初めてであるかのようなことを考えたけれど、どれもこれも答えは簡単だった。
寝ぼけているみたいだ。きっとそう、お昼寝で熟睡しすぎてママに叩き起こされた夕方に似ている。どうして自分がここにいるのか、わからない。自分が何をしていたのかわからない。結果だけを目の当たりにしている感じ。耳に入れたイヤホンから好きな曲が流れている。この曲を初めて聞いたのはいつ――ずっと昔――今? いつスマホの再生ボタンを押したんだろう? ワイヤレスイヤホン、お小遣いで買うには高かった――どうして手に入れたんだっけ。おばあちゃんが――だったっけ。電車の揺れる音と音楽が混じっている。聞いた、ことがある、電車の音とこの曲の――そんなの考えたこと、あっただろうか。寄りかかった電車のドアのガラス窓に、私が映って、映って、映って、映って、これは誰?
1335寝ぼけているみたいだ。きっとそう、お昼寝で熟睡しすぎてママに叩き起こされた夕方に似ている。どうして自分がここにいるのか、わからない。自分が何をしていたのかわからない。結果だけを目の当たりにしている感じ。耳に入れたイヤホンから好きな曲が流れている。この曲を初めて聞いたのはいつ――ずっと昔――今? いつスマホの再生ボタンを押したんだろう? ワイヤレスイヤホン、お小遣いで買うには高かった――どうして手に入れたんだっけ。おばあちゃんが――だったっけ。電車の揺れる音と音楽が混じっている。聞いた、ことがある、電車の音とこの曲の――そんなの考えたこと、あっただろうか。寄りかかった電車のドアのガラス窓に、私が映って、映って、映って、映って、これは誰?
norimaki
DONEkmt🎃これが最後。ど偏見ですが、獪i岳好きな人って、だいぶ強火❤️🔥で好きで保護者的存在(モンペ)というイメージ(自分含め)。
初見ではそれほどでしたが、読み返すごとに獪i岳の境遇が不憫すぎて守りたい、その笑顔という気持ちになります🙈
被ってるのはカニじゃないよ、蜘蛛だよ🕷
KOTO15_
DOODLEオマケ漫画1,2年前に描いたあけおめ絵のオマケ漫画風で、流星街近くの飲み屋にて。
コルトピがナレーションというか、説明をしてくれてます。
「お尻振らないでよ、風圧で店が壊れる」って台詞だったんだけど、コルトピを生かすためにセリフを変えました。
蜘蛛の一員なのでウボォーの尻で吹っ飛んだくらいで大した怪我しません。ご安心を。
ハッピーハロウィン!
beanjum
DONE「火点し頃の蜘蛛踊り」HO1西風蝶子表情差分と浴衣。最後はげんみ×!
NPCの信ちゃんから貝殻とリボンをもらったから、蝶子は赤いカチューシャあげました。最後は貝殻に手を合わせて今日も頑張りますって祈る蝶子。
髪型は信ちやんと同じです。うあうあうう… 12
masasi9991
DONE土蜘蛛さんと大ガマさんの出会いの話飴細工 物珍しい蛙が庭の池に入り込んでいた。ちょうど梅雨の時期、蛙なんぞ珍しくもなかったが、それはどうにも目を引いた。天から落ちる雨だれと同じように、その身体は半分透けて、水の色をしていたのである。
手を差し伸べるとまるでこちらを餌だとでも思うたか、指の上に飛びついた。
傘では遮れぬ雨が指の上に降り注ぐ。ひやりと冷たい。その透けた身体の蛙もまたはっきりと冷たい。爪の先のような一粒が。
「まるで飴細工のようだ」
誰に語るでもなしに、思うたことが勝手に口をついて出た。梅雨のあまりの静けさに、どうせその蛙の他には誰にも聞こえはしなかったであろうと思われる。
蛙だって人の言葉などわかるまい。
そう思うたが、案外それは賢い蛙であったのか、まるで吾輩の言葉に驚いたかのようにぴょんと指の上から飛び降りて、雨の庭を遠くへ跳ねて逃げていった。
795手を差し伸べるとまるでこちらを餌だとでも思うたか、指の上に飛びついた。
傘では遮れぬ雨が指の上に降り注ぐ。ひやりと冷たい。その透けた身体の蛙もまたはっきりと冷たい。爪の先のような一粒が。
「まるで飴細工のようだ」
誰に語るでもなしに、思うたことが勝手に口をついて出た。梅雨のあまりの静けさに、どうせその蛙の他には誰にも聞こえはしなかったであろうと思われる。
蛙だって人の言葉などわかるまい。
そう思うたが、案外それは賢い蛙であったのか、まるで吾輩の言葉に驚いたかのようにぴょんと指の上から飛び降りて、雨の庭を遠くへ跳ねて逃げていった。
masasi9991
DONE何かと戦っている土蜘蛛さんと大ガマさん崖っぷち「げっ」
と漏れた声が今の自分の姿にふさわしいものだったのか、それとも蛙の本性そのままだったのか。彼自身どちらか判断もつかないような、なんとも言えない声だった。
ガラガラ、と岩が転がり落ちてくる。砂煙に轟音、それはまあいいだろう。それより彼が焦燥困惑の声を上げたのは、その落石を生み出した元らしき……しかし岩と一緒くたになって落ちてくる……よく見知った妖怪の姿のためだった。
転がり落ちてくる巨岩と比べても何ら遜色のない巨大で歪な黒い身体。全長は数米ほどはあるだろうか。実際どれほどの巨体であるのかということに関しては彼にはしっかり覚えがあるから、仔細は捨て置くとして。問題は、その巨体が崖の上から彼の脳天真っ直ぐ目指して落ちてくるということだ。
1009と漏れた声が今の自分の姿にふさわしいものだったのか、それとも蛙の本性そのままだったのか。彼自身どちらか判断もつかないような、なんとも言えない声だった。
ガラガラ、と岩が転がり落ちてくる。砂煙に轟音、それはまあいいだろう。それより彼が焦燥困惑の声を上げたのは、その落石を生み出した元らしき……しかし岩と一緒くたになって落ちてくる……よく見知った妖怪の姿のためだった。
転がり落ちてくる巨岩と比べても何ら遜色のない巨大で歪な黒い身体。全長は数米ほどはあるだろうか。実際どれほどの巨体であるのかということに関しては彼にはしっかり覚えがあるから、仔細は捨て置くとして。問題は、その巨体が崖の上から彼の脳天真っ直ぐ目指して落ちてくるということだ。
masasi9991
DONE土蜘蛛さんと小さい大ガマさん手習い 箪笥の右側に扉がついている。鍵がかかっており、普段は開くことができない。その鍵穴を覗き込んでいる小さな背中がある。つま先立ちで、やけに危なっかしい。
「これ」
「ゲコッ」
足音を殺して背後に近づき、肩をポンと叩くとそのままびっくり仰天、垂直に飛び上がるほどだった。
しかし二足歩行はまだ慣れると見えて、垂直に立ったままではうまく跳ねるこおができなかったようだ。
「そう驚くことはなかろう。盗人が盗みを見咎められたからといって逐一驚くようでは仕事にならぬであろうし」
「盗人じゃねえよ。ただ中身がちょっと気になっただけだ」
「金目のものは入っておらぬ」
「そのくらいは考えりゃわかる。土蜘蛛が鍵をかけてまで隠しているのが財布の中身なんてなら、はっきり言ってがっかりだ。見損なっちまうぜ」
2370「これ」
「ゲコッ」
足音を殺して背後に近づき、肩をポンと叩くとそのままびっくり仰天、垂直に飛び上がるほどだった。
しかし二足歩行はまだ慣れると見えて、垂直に立ったままではうまく跳ねるこおができなかったようだ。
「そう驚くことはなかろう。盗人が盗みを見咎められたからといって逐一驚くようでは仕事にならぬであろうし」
「盗人じゃねえよ。ただ中身がちょっと気になっただけだ」
「金目のものは入っておらぬ」
「そのくらいは考えりゃわかる。土蜘蛛が鍵をかけてまで隠しているのが財布の中身なんてなら、はっきり言ってがっかりだ。見損なっちまうぜ」