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    りんご

    DONEK暁デー
    どっちも『おはよう』を楽しみにしている。
    タイトル詐欺みたいなほのいちゃK暁(当社比)
    おはようまでお楽しみ音をたてないようにノブを限界まで回してからドアを開けると、すっかり穏やかな寝息を立てて眠る彼の姿があった。起きててほしかったという残念さと、でもしんどいだろうから寝ていてほしい気持ちが混ざり合って、それが『やっぱり会えてうれしい』になってしまう自分の甘さに苦笑する。職業柄なにかと敏感なので、間違っても起こしたりしたくない。いつからか後ろ手のドアは金具に差し込めるギリギリまで元に戻して、締め切らないようになってしまった。

    依頼や他の行事で二人の時間がずれることが増えた。大半はKKが戻ってこないことが多いが近ごろはその逆で、就職活動や卒業間近のあれこれで帰りが日付線を超えることもしばしばだ。かつては一人で先走るところもあった典型的な前時代型の彼だが、意外にも気を揉んだりあからさまに機嫌が悪くなるようなことはない。内弁慶気味な彼をして当初は肩透かしを食らっていたが、これが彼なりの気遣いなのだと、最近になって分かり始めている自分がいる。時間が経つのは、楽しい。大切なものばかりすり抜けていた日々の、本来の在り方を初めて暁人に教えてくれた人だった。だからこそ少しだけ、ほんの…少しだけ、寂しさはあってもこの瞬間を損ないたくなかった。傍らにしゃがみ込み、暗がりに浮かぶ彼の寝顔をじっと眺める。以前はこの時点で起きていたことを思えば、これはとんでもない進歩だ。渋谷事変の時のような魂が結び合う感覚とはまた違う、気配が混ざっていると分かる瞬間に頬が緩むのを止められない。弾む気持ちのままに乱れた髪を撫で、顔をつついたのはまずかっただろうか。眉を寄せ寝返りを打ったので、息を止めて見守っていた。そこから変化のないことをよく確認しつつ、こちらを向いたKKをつぶさに観察する。
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