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    フカフカ

    DONEK2/T先生と和久井くん(たぶん大人)の話/車の中で世間話をしたり、こいつっていつからこんな「医者の覚悟完了」だったんだろうな〜と思ったり、高潔さと狡猾さの話をする/前に書いた「ザクロの飴」と「まったく傷ひとつない」と同じ世界の話だと思います/当シリーズはカップリング要素なしです(いつもない)
    グラッパ 雨は幾千の針となって地上を縫い付けにくる。銀色の空から、銀色の雨が降っている。
     真田は湿った地下駐車場を足早に渡った。
     濡れたコンクリートに砂がざらつき、足音が滲む。
     どことない焦りに任せて握る杖は冷たく、一向に真田の体温を吸わず、手になじまず、ただ真田に使われるがまま固く地面を打つ。普段よりも耐衝撃の具合が悪いように思った。杖から伝わる硬質な手応えのせいで手のひらが、腕が痺れる。 
     冬で、雨で、冷えた病人の持ち物だからか、と苛立ちが遠くから打ち寄せて真田の心を浸した。己の道具が己の思うままの仕事をしないのは裏切りめいて不快だった。自分の肉体ですらそうなのだから、杖ともなれば余計だった。
     足を止めると、ざん、と雨音が耳に触れた。はるか前方の坂の上に口を開け、地上の景色を平行四辺形に切り取った駐車場出口から、外の光と音とが流れ込んでいる。
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    nbsk_pk

    DOODLEおじ炎博、あんまり美味しくなかったのど飴の話。おじ炎さんが考えすぎている。庭園メンバーいつまでも仲良しだととても嬉しい。
    おじ炎さん一人称にした結果、おじ炎さんの認識がだいぶずれてるのでスズちゃんたちがめちゃ小さかったことになってたり鉱石病があんまり脅威じゃなかったりしてるのに博さんの体調にはすこぶる敏感で、自分で書いてて愛じゃん…て勝手にニコニコしていた。
    「だから置いていっていいよって言ったのに」
     何のことを言われているのかと尋ねられたところで、俺に返せるのは無言だけである。だが目の前の人間はといえばその無言からですら情報を引き出しあっさりと真相へとたどり着いてしまうほどの脳みその持ち主であるため、つまるところこれはただの意味のない抵抗でしかないのだった。

     鉱石病というのはそれなりに厄介な病気で、時間をかけて徐々に内臓の機能を奪っていく。そのスピードや広がりやすい箇所には個人差が大きいとされているが、やはり感染した元凶である部分、俺に取っては左肩から喉元にかけての不調が最近とみに目立つようになってきた。そもそもこんな年齢まで生きるつもりもなかったのだと言えば、目の前の妙なところで繊細な男はわかりやすく気落ちして、挙句の果てに食事量まで減らして回りまわって俺が怒られる羽目になるため口にするつもりはない。たかがサルカズ傭兵というそこらじゅうで使い捨てにされる命ひとつにまで心を割く余裕など持ち合わせてもいないくせに、固く握り込まれるその小さな拳をそこまで悪いものとは思わなくなったのは、まさしく病状の悪化のせいに違いない。決してこの男に感化されたわけではない。決して。
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