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    おじ炎博、あんまり美味しくなかったのど飴の話。おじ炎さんが考えすぎている。庭園メンバーいつまでも仲良しだととても嬉しい。
    おじ炎さん一人称にした結果、おじ炎さんの認識がだいぶずれてるのでスズちゃんたちがめちゃ小さかったことになってたり鉱石病があんまり脅威じゃなかったりしてるのに博さんの体調にはすこぶる敏感で、自分で書いてて愛じゃん…て勝手にニコニコしていた。

    #炎博
    yanbo

    「だから置いていっていいよって言ったのに」
     何のことを言われているのかと尋ねられたところで、俺に返せるのは無言だけである。だが目の前の人間はといえばその無言からですら情報を引き出しあっさりと真相へとたどり着いてしまうほどの脳みその持ち主であるため、つまるところこれはただの意味のない抵抗でしかないのだった。

     鉱石病というのはそれなりに厄介な病気で、時間をかけて徐々に内臓の機能を奪っていく。そのスピードや広がりやすい箇所には個人差が大きいとされているが、やはり感染した元凶である部分、俺に取っては左肩から喉元にかけての不調が最近とみに目立つようになってきた。そもそもこんな年齢まで生きるつもりもなかったのだと言えば、目の前の妙なところで繊細な男はわかりやすく気落ちして、挙句の果てに食事量まで減らして回りまわって俺が怒られる羽目になるため口にするつもりはない。たかがサルカズ傭兵というそこらじゅうで使い捨てにされる命ひとつにまで心を割く余裕など持ち合わせてもいないくせに、固く握り込まれるその小さな拳をそこまで悪いものとは思わなくなったのは、まさしく病状の悪化のせいに違いない。決してこの男に感化されたわけではない。決して。
     その病状の悪化の結果、最近どうも喉の調子が悪くなったのが冒頭の例の腹の立つ発言の理由である。
     庭園でのいつもの作業中に、自分では意識できていなかったのだがどうも咳き込む回数が増えたらしい。以前は腰ほどまでしかなかった幼子たちが、いつの間にかおのれの肩ほどまでに背が伸びていたことを最近ようやく受け入れたが、彼女たちは背丈と同時に小言も増えた。もとより庭園においては遠慮のない関係で、むしろ草花の種類によっては彼女たちが先達だ。調子が悪いようでしたら、と遠回しにおすすめされた購買部の新商品ののど飴を、俺が手に取らない理由はどこにもなかった。
     だがしかし、そののど飴の開封をよりによってこの男の執務室で行ってしまったのは失態だった。もう何度繰り返したかもおぼえていない教本の作成を終え、報告に行った先のことだった。来たならついでにお茶でも飲んでいきなよ、という言葉には残って男の仕事を手伝えという意味が隠しきれていなかったが、男の目の下に滲む疲労はそれ以上のものであったため、せめてもの嫌がらせとしてため息とともに重い椅子を引く。そうして作業に没頭してしまえば時間の経つのは速いもので、つまりは茶も飲まずに乾燥した室内での長時間作業に、ごほっと俺の喉がとうとう抗議を開始したというわけだ。
     上着のポケットに入れたままののど飴を思い出したときは救世主にも思えたのだが、しかし失念していたことに、彼女たちと俺との味覚の好みの差はかなり大きかったようだ。確かに香草の強い香りはいっときの清涼感をもたらしてくれたが、残念ながら飴本体の甘ったるさは逆に舌と喉を焼いた。彼女たちには申し訳ないが、次に購買部へ行ったとしてこの飴を手に取ることはないだろう。口内のまだそれなりの大きさを保っている飴を前に残りをどうするべきかを考えていると、ふ、ととうとう堪えきれなくなったといわんばかりの不愉快な笑い声が耳に届いた。その声の持ち主はといえば当然この部屋の主であるドクターという男である。
    「だって、君すごい顔してるのだもの。そのキャンディ、私も食べてみたいな」
     その言葉が暗に、好みでない味のものならば自分に寄越せと言っていることくらいはこの長くなってしまった付き合いでわかるようになった。この男の悪食は年を経てなお冴えわたり、いっこうに改善の余地がない。あれだけのクオリティを誇るロドスの食事に囲まれてこの有り様だというのだから男の舌はもう一生このままなのだろう。救いがない。救いがないといえばそんなことまで理解してしまえるようになったおのれの頭そのものについても言える。ふふ、と再び噴き出した笑い声によりいっそう眉間のしわが深くなるが元凶はといえばペンを持ったままの指先をこちらへとひらひらと向けている。どうして、そんな当然のように、何でもないことのように、その小さく薄い手のひらでまとめて包んでみせようとするのか。目の下の隈が消えなくなるほど背負い込んでいるものに、こんな些細な菓子まで加えようというのか。ならば生まれ出た不愉快さは少なくとも俺自身が保持すべき矜持だ。
    「やらん」
    「えー」
     ガリ、と噛み砕いた飴は変わらず喉を焼くほど甘かったが、そんなもの目の前の男の寄越す言葉に比べればなんということもない。私だって新商品食べてみたかったのに、と文句を垂れる男に、いい気味だと返しながら、エンカクはいつかおのれの喉を焼くだろう目の前の男のもたらす炎の温度に思いを馳せたのだった。
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    DOODLE岳博ギャグ、自分のもちもちロングぬいぐるみに嫉妬する重岳さんの話。博さんずっと寝てます。絶対もちもちロングおにい抱き枕寝心地最高なんだよな…
    180センチのライバル 重岳は破顔した。必ず、この眼前の愛おしいつがいを抱きしめてやらねばならぬと決意した。重岳は人という生き物が好きだ。重岳は武人である。拳を鍛え、千年もの年月を人の中で過ごしてきた。けれども、おのれのつがいが重岳を模したもちもちロングぬいぐるみを抱きかかえて、すやすやと寝台の上で丸くなっていることについては人一倍に敏感であった。


    「失礼、ドクターはどちらに」
    「ドクターでしたら、仮眠をとると私室へ」
     あと一時間くらいでお戻りになると思いますが、と教えてくれた事務オペレーターに礼を伝え、重岳はくるりと踵を返した。向かう先はもちろん、先ほど教えてもらった通り、ドクターの私室である。
     この一か月ばかり、重岳とドクターはすれ違いの生活が続いていた。ドクターが出張から戻ってきたかと思えば重岳が艦外訓練へと発ち、短い訓練ののちに帰艦すれば今度はドクターが緊急の呼び出しですでに艦を離れた後という始末で、顔を見ることはおろか声を聞くことすら難しかったここ最近の状況に、流石の重岳であっても堪えるものがあったのだ。いや流石のなどと見栄を張ったところで虚しいだけだろう、なにせ二人は恋仲になってまだ幾ばくも無い、出来立てほやほやのカップルであったので。
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    nbsk_pk

    DOODLE岳博、いちゃいちゃギャグ。寒い日に一緒に寝る姿勢の話。岳さんが拗ねてるのは半分本気で半分はやりとりを楽しんでいる。恋に浮かれている長命種かわいいね!うちの博さんは岳さんの例の顔に弱い。
    「貴公もまた……」
     などと重岳に例の表情で言われて動揺しない人間はまずいないだろう。たとえそれが、冬になって寒くなってきたから寝ているときに尻尾を抱きしめてくれないと拗ねているだけであったとしても。


     彼と私が寝台をともにし始めてから季節が三つほど巡った。彼と初めて枕を交わしたのはまだ春の雷光が尾を引く暗い夜のことで、翌朝いつものように鍛錬に向かおうとする背中に赤い跡を見つけ慌てたことをまだおぼえている。それからほどなくして私の部屋には彼のための夜着がまず置かれ、タオルに歯ブラシにひとつまたひとつと互いの部屋に私物が増えていき、そして重ねる肌にじっとりと汗がにじむような暑さをおぼえる頃には、私たちはすっかりとひとかたまりになって眠るようになったのだった。彼の鱗に覆われた尾にまだ情欲の残る肌を押し当てるとひんやりと優しく熱を奪ってくれて、それがたいそう心地よかったものだからついついあの大きな尾を抱き寄せて眠る癖がついてしまった。ロドスの居住区画は空調完備ではあるが、荒野の暑さ寒さというのは容易にこの陸上艦の鋼鉄の壁を貫通してくる。ようやく一の月が眠そうに頭をもたげ、月見に程よい高さにのぼるようになってきた頃、私は名残惜しくもあのすばらしいひんやりと涼しげな尾を手放して使い古した毛布を手繰り寄せることにしたのだった。だが。
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    DOODLEおじ炎博、あんまり美味しくなかったのど飴の話。おじ炎さんが考えすぎている。庭園メンバーいつまでも仲良しだととても嬉しい。
    おじ炎さん一人称にした結果、おじ炎さんの認識がだいぶずれてるのでスズちゃんたちがめちゃ小さかったことになってたり鉱石病があんまり脅威じゃなかったりしてるのに博さんの体調にはすこぶる敏感で、自分で書いてて愛じゃん…て勝手にニコニコしていた。
    「だから置いていっていいよって言ったのに」
     何のことを言われているのかと尋ねられたところで、俺に返せるのは無言だけである。だが目の前の人間はといえばその無言からですら情報を引き出しあっさりと真相へとたどり着いてしまうほどの脳みその持ち主であるため、つまるところこれはただの意味のない抵抗でしかないのだった。

     鉱石病というのはそれなりに厄介な病気で、時間をかけて徐々に内臓の機能を奪っていく。そのスピードや広がりやすい箇所には個人差が大きいとされているが、やはり感染した元凶である部分、俺に取っては左肩から喉元にかけての不調が最近とみに目立つようになってきた。そもそもこんな年齢まで生きるつもりもなかったのだと言えば、目の前の妙なところで繊細な男はわかりやすく気落ちして、挙句の果てに食事量まで減らして回りまわって俺が怒られる羽目になるため口にするつもりはない。たかがサルカズ傭兵というそこらじゅうで使い捨てにされる命ひとつにまで心を割く余裕など持ち合わせてもいないくせに、固く握り込まれるその小さな拳をそこまで悪いものとは思わなくなったのは、まさしく病状の悪化のせいに違いない。決してこの男に感化されたわけではない。決して。
    1956

    nbsk_pk

    DOODLE転生現パロ記憶あり。博が黒猫で花屋の炎さんに飼われている。博猫さんは毛づくろいが下手すぎてもしゃもしゃにされたのを自力で戻せないので、原因にブラッシングを要求しました
    ねことのせいかつ いくら朝から店を閉めているとはいえ、生花という生き物相手の職業であるためやらなければならない作業は多い。ましてや今回の臨時休業の理由は台風、取引先各所への連絡から店舗周辺の点検と補強までひと通り終わらせたときには、すでに窓の外にはどんよりとした黒い雲が広がり始めていた。


    「ドクター?」
     店の奥にある居住スペースの扉を開けても、いつものようにのたのたと走り来る小さな姿はない。しん、とした家の気配に嫌な予感を募らせたエンカクがやや乱暴な足取りでリビングへと駆け込んだとして、一体誰が笑うというのだろう。なにせあのちっぽけな黒猫はその運動神経の悪さに反して脱走だけは得手ときている。植物や薬剤をかじらないだけの聡明さはあるというのに、頑として水仕事で荒れた手のひらで撫でられねば一歩も動かないと主張する小さな生き物に、どれだけエンカクが手を焼いたことか。だがエンカクの心配をよそに、雨戸を閉めた仄暗い部屋の中で黒猫はあっさりと見つかった。キッチンの出窓、はめ殺しの小さな窓には雨戸もカーテンもないため、今にも落ちてきそうなほどの暗雲がよく見て取れた。自身が抱いているものを安堵とは決して認めないものの、やや歩調を緩めたエンカクは窓の外をじっと見つめたまま動かない黒猫の背にそっと立つ。
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