Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    2015年

    アイム

    PAST鶴獅子のさみしい話。by2015年彼の子はきらびやかな見目をしていると日頃常々思っている鶴丸国永であったが、そういう勝手な主観はさて置いても、正しい事実としてあれは宝物として存在している子なのだなと感じた。
    ふと視線を投げた先は庭である。そこは朝食前に通りがかった時と何ら変わりないように思えたが、よく見れば淡い色味が一つ二つ増えていて、そのせいで瞬間的に目を奪われて釘付けとされてしまった。
    実のところ屋敷の庭は、元は殺風景であったところに管理者である主が気紛れ一つで種を埋め苗を植え、どこからともなく樹木まで連れて来たため、様々な植物が渾然一体となっている。それを目の保養だと酒の杯を掲げる者もいれば、ちょっと喧しいなと眉を顰める者もいるのだから、楽しめるかどうかは受け取り手によるだろう。鶴丸は季節によってどちらもの感想も抱いていた。

    夏のこの時期は縁側から身を乗り出した先の近いところで朝顔が育てられていた。あちこちに突き立てられた添え木の背丈を追い越すほどツルは長く高く伸び、重なり合った大振りの葉は辺りをむせ返るような緑一色に染め上げる。そんな中でぽつぽつと青や紫、桃色が鮮やかに花開いたのは、今朝方ようやくのことだった 3170