Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    2015年

    アイム

    PAST鶴獅子のさみしい話。by2015年彼の子はきらびやかな見目をしていると日頃常々思っている鶴丸国永であったが、そういう勝手な主観はさて置いても、正しい事実としてあれは宝物として存在している子なのだなと感じた。
    ふと視線を投げた先は庭である。そこは朝食前に通りがかった時と何ら変わりないように思えたが、よく見れば淡い色味が一つ二つ増えていて、そのせいで瞬間的に目を奪われて釘付けとされてしまった。
    実のところ屋敷の庭は、元は殺風景であったところに管理者である主が気紛れ一つで種を埋め苗を植え、どこからともなく樹木まで連れて来たため、様々な植物が渾然一体となっている。それを目の保養だと酒の杯を掲げる者もいれば、ちょっと喧しいなと眉を顰める者もいるのだから、楽しめるかどうかは受け取り手によるだろう。鶴丸は季節によってどちらもの感想も抱いていた。

    夏のこの時期は縁側から身を乗り出した先の近いところで朝顔が育てられていた。あちこちに突き立てられた添え木の背丈を追い越すほどツルは長く高く伸び、重なり合った大振りの葉は辺りをむせ返るような緑一色に染め上げる。そんな中でぽつぽつと青や紫、桃色が鮮やかに花開いたのは、今朝方ようやくのことだった 3170

    アイム

    PAST雰囲気の暗い鶴獅子。by2015年。拝啓、じっちゃん。
    お元気ですか。俺は少し元気です。
    この間、今の主から人間は死んだら天国か地獄に行くのだと教えてもらいました。だからじっちゃんは天国にいるんだと俺は思っています。
    そっちは楽しいですか。淋しくないですか。俺がいなくて淋しいといいな、と俺は願っています。

    どうして突然こんな手紙を書き始めたのかというと、なんと俺は先日、鶴丸国永という同じ刀の一人から、愛の告白を受けました。
    鶴丸は他人を驚かせることが好きな人で、今まで何度もからかわれて遊ばれたことがあったから、だから俺はいつもの冗談だと思ったんだけど、どうやら冗談ではなくて本当だったらしい。
    あれは真夜中のことで、俺がふと目を覚ましたら隣の布団で寝ているはずの鶴丸が起きていて、眠れないと言うので、気分転換に少し散歩に誘って外へ出たら、その時に言われました。
    鶴丸は、夏の風みたいな爽やかで軽やかな声をしていて、俺はそれをすごく気に入っているんだけど、この時は初めて聞く抑揚の無い声で『獅子王は、ずるい』と俺に言いました。

    実は、俺は誰かからじっちゃんのことを聞かれるのがどうしても嫌なので、俺も誰かに前の主の話を聞こうとは 2810