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    2022年

    lyra_m

    PAST2022年公開、完売済みの同人誌「猫の日後遺症」
    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18149545
    頒布時に無配でつけた小話です。一度支部でもまとめで公開しましたが、
    現在非公開中なのでこれだけでもお届け…!!


    ***
    猫のままでは済まないもので山姥切長義の恋刀の部屋には、二振りで並んで転がっても十分にくつろげる、巨大なクッションがある。今日も部屋を訪れたとき、部屋主――長義の恋刀でもある南泉一文字は、クッションに埋もれてぴすぴすと、愛らしい寝息を立てていた。ほっこりと目を細めつつも一応は礼儀のため、声をかけて。

    「入るよ、猫殺しくん。寝てるかな」
    「んにゃ…?寝てね……にゃ…」
    そうして長義は入室すると、転がる彼の懐へ、いそいそともぐりこんだ。まるで短刀のような甘え方だが、自分と彼との間では、すでにこれくらいは慣れたものなのだ。気づいてか無意識なのか南泉も、擦り寄る長義に腕を回して、髪に頬ずりをしている。

    二人して猫になってしまったあの日から、早くもひと月と半分が過ぎている。その間に二人の関係は、距離感を掴み損ねた古馴染みから、恋刀へと進展した。始まりが始まりだからか、いつだって二人の間の距離は近くて、それは長義にとって、とても嬉しいことだった。
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    月海 故

    DONE2022年3月27日発行の無配。
    植物研究者の無惨とカフェ店員の縁壱の話。
    キャラクター崩壊が顕著。なんでも許せる人向け。むざより未満。
    第3話は2025年3月16日【HARU COMIC CITY 34/日輪鬼譚 HARU2025】にて頒布予定。

    💝第1話、第2話共に冊子版の頒布が終了したため公開いたします。
    お手に取ってくださりありがとうございました。
    カフェ・ボタニカル 私の行きつけの喫茶店には、花を咲かせるように笑う店員がいる。
     だがその男、始終ニコニコとしているわけではなく、どちらかといえば仏頂面を見せていることの方が多い。ただ、目が合うと綻ぶように表情を和らげるし、問い掛けに答えればそれを満開にさせるのだ。
     人と触れ合うのが好きなのだろう、私とは違って。


     早春、新たな仕事に就くためこの地へ来た。
     職場近くにあるその店の外観を気に入って立ち寄ったのがきっかけだったが、出す料理もコーヒーもなかなかに美味い。
     それからもう三ヶ月ほど通い詰めているが、今は週に数回、食事や茶を楽しんでいる。

     件の店員は二十代半ばといったところだろうか。主な仕事は給仕。
     座席数はカウンターの他、テーブル席が十席ほどの店内だ、そこまで広くはない。給仕の男はそのテーブルの間をデカい図体で行ったり来たりする。
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