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    zeppei27

    DONE何となく続いている主福の現パロです。本に書下ろしで書いていた現パロ時空ですが、アシスタント×大学教授という前提だけわかっていれば無問題!単品で読める、ホワイトデーに贈る『覚悟』のお話です。
    前作VD話の続きでもあります。
    >熱くて甘い(前作)
    https://poipiku.com/271957/11413399.html
    心尽くし 日々は変わりなく過ぎていた。大学と自宅を行き来し、時に仕事で遠方に足を伸ばし、また時に行楽に赴く。時代と場所が異なるだけで、隠し刀と福沢諭吉が交わす言葉も心もあの頃のままである。暮らし向きに関して強いて変化を言うならば、共に暮らすようになってからは、言葉なくして相通じる折々の楽しみが随分増えた。例えば、大学の研究室で黙って差し出されるコーヒーであるとか、少し肌寒いと感じられる日に棚の手前に置かれた冬用の肌着だとか、生活のちょっとした心配りである。雨の長い暗い日に、黙って隣に並んでくれることから得られる安心感はかけがえのないものだ。
     隠し刀にとって、元来言葉を操ることは難しい。教え込まれた技は無骨なものであったし、道具に口は不要だ。舌が短いため、ややもすると舌足らずな印象を与えてしまう。考え考え紡いだところで、心を表す気の利いた物言いはろくろく思いつきやしない。言葉を発することが不得手であっても別段、生きていくには困らなかった。だから良いんだ、と放っておいたというのに、人生は怠惰を良しとしないらしい。運命に放り出されて浪人となった、成り行き任せの行路では舌がくたくたに疲れるほどに使い、頭が茹だる程に回転させる必要があった。
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    再走(サイソウ)

    DONE2025/3/16に開催されたHARU COMIC CITY 34の無配…予定だった散文。体調不良で欠席し配布できなかったため、こちらで供養します。
    同日がトーハクのdkj展の最終日だったので、それに合わせたネタです。2月のVRFで配布したこちら↓とうっすら繋がってますが、単品でも読めると思います。
    https://poipiku.com/4918557/11382208.html
    同一ケース展示の話 ―最終日― 展示物を眺める人々のささやくような声が、薄暗い室内の空気を密やかに震わせる。展示室の中央、ことさら目立つ位置に並んで展示されている膝丸と髭切は、空気を隔てる硝子越しに今日も流れゆく人々を見つめていた。
     注がれるいくつもの熱心な視線、佩裏まで見られるのは面映ゆい心地でもあったが、そんな眼差しを受けとめるのが今代の彼らの役目のひとつだ。
     ――でも、今日の弟はそれどころじゃないみたい。
     髭切が視線を走らせた先にいるのは、今回の展示の目玉のひとつであり、髭切がここに呼ばれる所以ともなった弟刀・膝丸である。刀身へ注がれる視線を前にして、今朝から何度も周囲を気にしては居住まいを正し、を繰りかえしている。人出が少なくなってきてからは、もはや動くまいと決した心を物語るように、両手を膝の上で固く握りしめていた。
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