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    ame

    mitsu_ame

    DONEくりんばわんどろ。+10mくらい。【季節外れ】【枕元】
    事後っぽい表現があります。
    @mitsu_ame

    **
    ざぁ、ざぁぁ、崖下を流れる川の音が、窓辺に凭れる自分の耳に遠く響く。抑揚の少ない音は疲れた身体を眠りに誘った。重い瞼をゆるゆる動かすと、川向うの景色が鮮やかに眩しい。崖下のどうどうとした川の流れ、切り立った斜面を覆う、赤、オレンジ、黄色。彩り豊かな樹木たち。窓辺の紅葉した銀杏の金色は自分の頭髪より数段濃い色をして、寒風に身を揺らしている。あちらはどうだか知らないが、火照った身体にはこの冷たさは心地よかった。

    本来真夏にあるはずだった長期休暇が、随分季節外れに与えられた。ぽかりとできた連休を、ふたりでゆっくり過ごそう、と持ち掛けてきたのは大倶利伽羅だった。二つ返事で承諾して訪れた、紅葉の名所の温泉街。急流に削られた渓谷の両岸にホテルや旅館の立ち並ぶ場所で、ふたりで選んだのはその並びから少し外れた宿だった。
    景色を、温泉を、食事を楽しんで、夜。お互いに期待して、求めて、溺れた。本丸は集団生活で、周りを気にして兎に角せっかちに進めがちだし静かにことに及ばねばと気を使う。旅先で、周囲の気配は薄く、ほかにも、だって。理由付けはいくらもできて、結果はとても奔放だった。それだけ。

    それで結局、ふ 2018