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    ルシュカ

    hariyama_jigoku

    PROGRESS鍾タル小説。「一月のゾールシュカ」前編。公i子が帰国する話。続きはできたら…。.

    「先生のことが好きなんだよね」

     タルタリヤと食事を共にした帰路。今日は随分と話が弾み、互いに酒も進んでいた。日が落ちてから時間も経ち、人気のない道をチ虎岩から緋雲の丘へと歩く。
     その最中、丁度橋へと差し掛かった辺りで投げられた言葉が先のそれだった。
    「それは、愛の類いの話か」
    「まあ、愛よりも恋かな」
     飄々と答えるタルタリヤを、まじまじと見つめる。
    「理解はしたが」
     足を止めて言葉を切った。視線の先に映るタルタリヤは、くるりと振り返って笑う。平静と変わらない表情に見えた。
     鍾離に、もしくはモラクスの化身であった何者かに対して。愛または恋として伝えられた愛の言葉を、それを吐き出した相手の顔も記憶している。どんな表情でそれを語っていたのかも、だ。期待、焦り、絶望、諦念、憎悪、自信。大抵はそのようなものだったが、タルタリヤのそれは記憶の中にあるどれにも該当しないように見える。平静さは自信に思えないこともないが、それにしては鍾離の動向に注視しているようだった。鍾離が是と言うことを信じて疑わない、という風にはとても思えない。
     不可解なことだ、だがそれは鍾離には関係はなかった。 3983