Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    まきの

    8hacka9_MEW

    DONEワタルと虎王が豆まきの豆を食べる話ワタルは、包みを抱えて、龍神山の階段を登っていった。今日は自治会で子ども向けの節分の催しがあり、その時にワタルは、食べる用の豆をもらったのだ。歳の数だけ食べるといいと言われたが、持っている豆はワタルの歳以上に入っていた。どうしたものかと考えて、ふと思いついて、こうして龍神山へとやってきたのだ。
    いつもの近道を通って、龍神池へと出る。辺りはしんとしており、誰もいなかった。
    ワタルは、桜の木の下向かい、腰を下ろした。地面が少し冷たかった。
    来る確信はどこにもなかった。会えれば嬉しいが、会えなければ『そういうものだ』と思えばいい。そのくらいの気持ちの整理の仕方を、ワタルは覚えていた。

    やがて……

    「よう」

    頭上から声が聞こえて、ワタルは振り返って桜の木を見上げた。木の枝に紛れて、虎王の姿が見えた。ワタルは、虎王に笑いかけた。
    「やあ」
    「なにしてんだ?こんなところで」
    「虎王こそ、どうしたんだ?」
    「オレ様か?なんとなくワタルに会える気がして、歩いてきたんだ。そうしたらこの木を見つけて、登ってみたら、お前の姿が見えるんじゃないかって、そう思ったんだ。そうしたら、お前はすぐそこにいた」
    2021