Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    夕凪

    鶴田樹

    DONE突発SS企画4本目、夕凪さんのリクエストで【お互いのために料理するくわぶぜ】です。ピーンポーンと、できたてのカレーのにおいが満ちた部屋に脳天気な音が響き渡る。

    「ほーい!」

    スウェット姿でスマホをいじっていた豊前は、身体のバネを使ってソファから飛び起きると、何も着ていなかった上半身に黒のトレーナーをずぼっと被る。

    安アパートにインターホンなどという高尚なものはなく、ボタンを押すと音が鳴るだけのチャイムに応じるには直接玄関に出るしかない。だが所詮ひとり暮らしの狭い部屋だ。ほんの数歩のうちにドアまで辿り着く。
    廊下の壁に掛けた赤と黒のグラデーションが鮮やかなロードバイクの横を通り、玄関のサンダルの片方を踏みながらドアを開ければ、そこにはいつものにこにこ笑顔を湛えた恋人の桑名の姿が。そしてその手には豊前の部屋と同じく芳しいカレーのにおいをさせる黄色の可愛い鍋がある。
    「お邪魔するよぉ」と律儀な挨拶をして靴を脱いだ桑名は、部屋中に充満するカレーのにおいを吸い込んで「いいにおいだねぇ」と満足そうに笑顔を綻ばせた。

    「今日はねぇ、手作りのらっきょう漬けも持ってきたよぉ」
    「まじか!すげー嬉しい!っつーか桑名ってカレーの付け合せらっきょう派なんだな」
    「そういう豊前は福神 2391

    Hoopono41030595

    DONE夕凪(@lotus_kwbz)さんより頂きましたお題「くわぶぜがお互い秘密にしていること」で書かせていただきました。
    結局、秘密は明らかにしておりませんが、一応秘密の内容は考えてあるんだよ。
    短刀とわちゃわちゃするくわぶぜは可愛い。
    「あー。毛利!またお弁当のピーマン、わざと下に落っことしたでしょ!」
    のどかな昼時。桑名の声が響き渡る。
    「ちっ、ちがいますよ、桑名さん。アリンコが食べたそーにしてたから、あげたんですって。」
    それに続くのは、ちょっと不満げな毛利藤四郎の声だ。
    「アリンコは、ピーマン食べません!そうやって野菜ばっかり残して……。燭台切や一期が朝早くから作ってくれたんにー。」
    桑名が、むぅっと毛利に詰め寄る。

    のんびりした遠征、そのお昼はいつもこんな感じだった。
    ふたりのやり取りを、他の男士たちもにこやかに眺めている。

    「そんなに野菜ばっかり残してると……一期に言いつけるよ。」
    桑名の勝ち誇った表情に、一気に毛利の顔色が悪くなる。

    「く、桑名さん、それはやめて……。それだけは……。」
    「えーどうしようかな。」
    ふふん、と勝ち誇る桑名に毛利が縋り付く。
    「やめてくださいよぉ。それだけは……。桑名さんが知らない、豊前さんの秘密、教えてあげますからぁぁ。」
    今度は桑名の顔色が変わる番だった。

    「え?豊前の秘密……?」
    「うん、桑名さんが絶対知らない、豊前さんの秘密です。僕、知ってるんですよねぇ。」
    1541