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    からし

    ehara5

    DONE風降と二十四節気を書きたいという野望(その13)
    上司からしたら冗談くらいのテンションでも部下は頑張っちゃうとかあると思います。
    011_小暑(7月7日頃) 風見にとって、七夕の時期は曇りや雨が多いイメージがある。七夕の当日は、お天気キャスターが織姫と彦星の逢瀬が達成されるか否かを必ず口にしているが、今年の予報も曇りだった。晴れようが曇ろうが、都心では天の川が見えることはないため、仕事に支障がなければ風見にはあまり関係のないことだった。
     風見が所用で訪れた警察署の玄関には、七夕の笹が飾り付けられていた。金銀の網飾りが生暖かい風になびいて、鈍い光を放っている。多くの警察署では地域の保育園や小学校と連携して、子供たちに七夕の飾り付けをしてもらうイベントが催される。笹のすぐ近くに協力団体の名が掲示してあった。
     色とりどりの短冊には、つたない字で願い事が書き記されていた。ゲームソフトが欲しいだの、友達ともっと仲良くなれますようにだの、子供らしい純粋な願い事が並ぶ。よくよく見てみると、警視庁からのテコ入れがあるのか、交通安全の標語のような文言も入り交じっており、折り紙で作られたパトカーまである。その中に「お父さんがじこにあいませんように」と健気さを感じるものを見つけ、思わず風見は頬を緩めた。
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