高間晴
DOODLEチェズモク800字。お揃いのマグカップ。■おそろいモクマはチェズレイとともにヴィンウェイのセーフハウスに住むことになった。あてがわれた自室で荷物を広げていると、チェズレイが顔を出す。
「モクマさん。やっぱり食器類が足りないので、買い出しについてきてくれませんか」
「おっ、いいよー」
タブレットに充電ケーブルを挿し込んで、モクマはいそいそと後をついていく。
食器店――こちらの方ではテーブルウェア専門店とでも言うのか。最寄りの店に入る。そこには洒落た食器が棚に所狭しと並んでいた。さすがチェズレイも利用するだけあって、どれも美しい芸術品のように見える。
「ええと、ボウルとプレートと……」
店内を歩きながら、モクマの押すカートに食器を次々と入れていく。
「あとはカップですが、モクマさんがお好きなものを選んでくださって結構ですよ」
「ほんと? どれにしようかなぁ……」
白磁に金の葉の模様がついたものや、ブルーが美しいソーサーつきのカップなどがあって目移りしてしまう。そこでモクマは思いついたように訊いた。
「なあ、お前さんはどれ使ってるの?」
「――そうですね、普段はこのブランドのマグカップを使っています。軽量で手首に負 825
高間晴
MAIKINGチェズモクの話。あとで少し手直ししたらpixivへ放る予定。■ポトフが冷めるまで極北の国、ヴィンウェイ。この国の冬は長い。だがチェズレイとモクマのセーフハウス内には暖房がしっかり効いており、寒さを感じることはない。
キッチンでチェズレイはことことと煮える鍋を見つめていた。視線を上げればソファに座ってタブレットで通話しているモクマの姿が目に入る。おそらく次の仕事で向かう国で、ニンジャジャンのショーに出てくれないか打診しているのだろう。
コンソメのいい香りが鍋から漂っている。チェズレイは煮えたかどうか、乱切りにした人参を小皿に取って吹き冷ますと口に入れた。それは味付けも火の通り具合も、我ながら完璧な出来栄え。
「モクマさん、できましたよ」
声をかければ、モクマは顔を上げて振り返り返事した。
「あ、できた?
――ってわけで、アーロン。チェズレイが昼飯作ってくれたから、詳しい話はまた今度な」
そう言ってモクマはさっさと通話を打ち切ってしまった。チェズレイがコンロの火を止め、二つの深い皿に出来上がった料理をよそうと、トレイに載せてダイニングへ移動する。モクマもソファから立ち上がってその後に付いていき、椅子を引くとテーブルにつく。その前に 2010