2人しかいない惑星。「乾さん、あのグレーのパーカーの奴です」
「ああ」
部下が乾へ数十メートル先に居る人物を顎で指し示すと、乾は目視して頷いた。ターゲットとされる男はグレーのパーカーの黒いキャップ、デニムにスニーカーといった極平凡でどこにでも溶け込めるような出で立ちだった。
相手側だって見つかれば無事では済まないリスクを覚悟でやっているんだろう。服装や顔つきに特長を持たせず覚え難くするのは当然だ。
男は最近この界隈に現れた。分類的には薬物の売人になるのだろう。昔のように反社組織のシノギとしての生業という訳でもなく、一般人が簡単に薬物や脱法ハーブなんかを手に入れられる。ちょっとした知識があればブレンドしオリジナルの物だって作れてしまう。それをSNSなんかで隠語を使い売り捌く。
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