雪ノ下
MEMO2023.04.14『SAI』再録ルビレイディオ
つぐみとアカネがファンからのとある悩みについて考える話
Main:TSUGUMI・AKANE
『SAI』"赤が似合わないんです"
それまでほぼ休むことなく画面をスクロールしていた指が止まった。
それはルビレイディオで特に制限を設けず募集している「お便りコーナー」に投稿されたメールの一文だった。ライブの感想やメンバーへの質問、相談……なんでも気軽に送ってね、という趣旨の。
「んー……」
「どうかした?」
無意識に声を発していたらしい。正面から反応があって視線を上げると、今日のゲストであるつぐみが不思議そうな顔でこちらを見ている。手元にはタブレットを持っていて、自分と同様ファンからのメールを確認していたようだ。珍しく終始無言だったのはそのせいかと合点がいった。
「つーかアンタ、読むの早すぎない?」
2769それまでほぼ休むことなく画面をスクロールしていた指が止まった。
それはルビレイディオで特に制限を設けず募集している「お便りコーナー」に投稿されたメールの一文だった。ライブの感想やメンバーへの質問、相談……なんでも気軽に送ってね、という趣旨の。
「んー……」
「どうかした?」
無意識に声を発していたらしい。正面から反応があって視線を上げると、今日のゲストであるつぐみが不思議そうな顔でこちらを見ている。手元にはタブレットを持っていて、自分と同様ファンからのメールを確認していたようだ。珍しく終始無言だったのはそのせいかと合点がいった。
「つーかアンタ、読むの早すぎない?」
雪ノ下
MEMO2023.04.18『静観の美学』再録帝さんがとあることをきっかけに過去(アカネの幼少期)に思いを馳せる話
Main:日暮帝
『静観の美学』「どうやら俺は、人の目には冷たく映るらしい」
呟くと、隣に立つ楓の視線が頬に刺さるのを感じた。
いきなりなんだと驚いたことだろう。当然だ、あまりにも脈絡がなさすぎる。返答を期待してのことではなかった。ただ口の端から零れ落ちた些末な"ぼやき"に過ぎない。
けれど、それを単なる独り言として片付けないのがうちの次男のよく出来たところで。
「なぜ、そんな事を?」
「取引先の役員に言われたよ」
正確には"元"取引先だ。つい先ほど契約打ち切りの旨を伝えたばかりだった。
『あなたは冷たい御人だ。お父上なら、もっと温情をかけた判断をしてくださっただろう』
膝に置いたふたつの拳をぶるぶる震わせながら、絞り出すようにして吐きだされた言葉が耳について離れない。
3531呟くと、隣に立つ楓の視線が頬に刺さるのを感じた。
いきなりなんだと驚いたことだろう。当然だ、あまりにも脈絡がなさすぎる。返答を期待してのことではなかった。ただ口の端から零れ落ちた些末な"ぼやき"に過ぎない。
けれど、それを単なる独り言として片付けないのがうちの次男のよく出来たところで。
「なぜ、そんな事を?」
「取引先の役員に言われたよ」
正確には"元"取引先だ。つい先ほど契約打ち切りの旨を伝えたばかりだった。
『あなたは冷たい御人だ。お父上なら、もっと温情をかけた判断をしてくださっただろう』
膝に置いたふたつの拳をぶるぶる震わせながら、絞り出すようにして吐きだされた言葉が耳について離れない。