imanishi_TK
DONE2月4日 恋せよ音のなるほうへ! の展示小説です。月鯉 明治軸 ハピエン 全年齢
続きの18禁も同じくポイピクにあります。
夢見る少尉殿【鯉】
今日も訓練と書類仕事が終わった。
私は机の上の書類を重ねて補佐の月島軍曹に渡すと、大きく伸びをする。バキリと背中が鳴った。
「お疲れ様でした、鯉登少尉殿」
「うん、今日は少し疲れた」
日頃そんな事を言わない私から愚痴のような言葉を聞いて、月島軍曹が目を丸くする。
「珍しいですね、少尉殿が疲れたなどと言うのは」
「昨日遅くまで将校の集まりがあったのだ。偕行社でな。集まるのは良いがその辺の集会所で済ませて欲しい」
「なるほど。それはお疲れでしたね」
「そうだぞ「新品少尉殿」なんて揶揄されながらも頑張っているのだ」
冗談めかしてそう言うと、月島の眉がピクンと跳ね上がった。
あっ、まずい、
「誰です。そんな事を言うのは。宇佐美ですか尾形ですか」
12874今日も訓練と書類仕事が終わった。
私は机の上の書類を重ねて補佐の月島軍曹に渡すと、大きく伸びをする。バキリと背中が鳴った。
「お疲れ様でした、鯉登少尉殿」
「うん、今日は少し疲れた」
日頃そんな事を言わない私から愚痴のような言葉を聞いて、月島軍曹が目を丸くする。
「珍しいですね、少尉殿が疲れたなどと言うのは」
「昨日遅くまで将校の集まりがあったのだ。偕行社でな。集まるのは良いがその辺の集会所で済ませて欲しい」
「なるほど。それはお疲れでしたね」
「そうだぞ「新品少尉殿」なんて揶揄されながらも頑張っているのだ」
冗談めかしてそう言うと、月島の眉がピクンと跳ね上がった。
あっ、まずい、
「誰です。そんな事を言うのは。宇佐美ですか尾形ですか」
zeana818
MOURNING軍曹、新兵、壮年、ショタ(全員ツキシマ)とコイトの5pの書きかけw複数島と少尉殿ーーこれは困ったことになった……と深刻に捉えているのは、実は月島軍曹ただ一人である。鯉登少尉の借りている家に今、四人の『月島基』がいる。
一人はまだ少年だ。月島の推察では、おそらく六歳くらい。少年は事態が全く理解ができないらしく、そして考えても無駄なことは早々に頭から追い払うのが一番手っ取り早いとわかっているのか、ごま塩頭の老人と手遊びに夢中だ。彼がそういう、誰かと一緒にやる子供の遊びと縁がなかったのは月島もよく知っているので、やめろとも言いづらい。
彼の相手をしている老人ーーと言っても五十絡みで、若くはないが枯れてもいない。少々筋肉が落ちたが、それでも他の同年代に比べたらがっしり逞しい身体付きだ。子供の相手を、穏やかな顔でしている。面倒見がよく、厠に行きたくなった少年がそれを言い出せないのを察して促してやったり、台所を借りて飴湯を作ってやったりしていた。俺がああなるとはとても思えない……となんとも複雑な気持ちで老人の一挙手一投足を眺めている。
3246一人はまだ少年だ。月島の推察では、おそらく六歳くらい。少年は事態が全く理解ができないらしく、そして考えても無駄なことは早々に頭から追い払うのが一番手っ取り早いとわかっているのか、ごま塩頭の老人と手遊びに夢中だ。彼がそういう、誰かと一緒にやる子供の遊びと縁がなかったのは月島もよく知っているので、やめろとも言いづらい。
彼の相手をしている老人ーーと言っても五十絡みで、若くはないが枯れてもいない。少々筋肉が落ちたが、それでも他の同年代に比べたらがっしり逞しい身体付きだ。子供の相手を、穏やかな顔でしている。面倒見がよく、厠に行きたくなった少年がそれを言い出せないのを察して促してやったり、台所を借りて飴湯を作ってやったりしていた。俺がああなるとはとても思えない……となんとも複雑な気持ちで老人の一挙手一投足を眺めている。
kyosato_23
MAIKING父親を殺して服役してた月と、アパレルショップ店員で眼鏡着用の鯉の月鯉です。月視点は一旦ここまで。
ガラス越しのかくれんぼ 3*
月島への言動は品があって隙がなく、眼鏡で目元の表情が見えにくいのもあって、怜悧で作り物めいていた。それだけなら住む世界が違う、近寄り難い相手であるというだけだった。
落ち着かない様子で顔を赤らめ、横に流した前髪の毛先を指で耳にかける仕草を目にすると途端にマネキンから血と温度のある人間に変貌する。住む世界が違っても心臓の脈打つ人間なのだと感じた。
鯉登がメモに予約の日時を書き、月島に手渡してきた。きれいな、整った字だった。
どうも、とそのメモを折り曲げ、ズボンのポケットにしまう。しまってから、きちんと鞄に入れるべきだったかと少し恥ずかしくなった。
鯉登は特に気に留めず、店を出る鶴見と月島への見送りにつき従い、粛々とした様子で頭を下げた。つられて月島も会釈する。鶴見は微笑みと僅かな頷きで返した。
6033月島への言動は品があって隙がなく、眼鏡で目元の表情が見えにくいのもあって、怜悧で作り物めいていた。それだけなら住む世界が違う、近寄り難い相手であるというだけだった。
落ち着かない様子で顔を赤らめ、横に流した前髪の毛先を指で耳にかける仕草を目にすると途端にマネキンから血と温度のある人間に変貌する。住む世界が違っても心臓の脈打つ人間なのだと感じた。
鯉登がメモに予約の日時を書き、月島に手渡してきた。きれいな、整った字だった。
どうも、とそのメモを折り曲げ、ズボンのポケットにしまう。しまってから、きちんと鞄に入れるべきだったかと少し恥ずかしくなった。
鯉登は特に気に留めず、店を出る鶴見と月島への見送りにつき従い、粛々とした様子で頭を下げた。つられて月島も会釈する。鶴見は微笑みと僅かな頷きで返した。
kyosato_23
MAIKING父親を殺して服役してた月と、アパレルショップ店員で眼鏡着用の鯉の月鯉の続きです。ガラス越しのかくれんぼ 2*
月島さま。
耳慣れない呼ばれ方に気後れしながら鯉登に促されるまま、店の奥まった場所へ案内される。月島を導く手は指先が五本きっちりと揃っていて隙がない。掌の色だけ少し薄い肌色なのが目に入った。
「よろしければお荷物はこちらへどうぞ」
鯉登がそう言うので、近くにあった一人がけのソファにどっさりと大量の紙袋とほぼ空っぽの鞄を置く。
大きな姿見の前へ立つと自分の姿だけしかけ絵本の飛びだす人形のように浮いて見えた。いかにいい服を着ていても、高級店に慣れている面々とはまず立ち方や手先の仕草が違う。
それに健康的な鯉登と並ぶと自分の肌の青白さというか、生気のなさがひどい。
ずっと死ぬことを考えて生きてきた、今日出所したての服役囚だぞ、当然だ、と内心で誰に言い訳するでもなく諦めまじりの弁明を吐く。
5086月島さま。
耳慣れない呼ばれ方に気後れしながら鯉登に促されるまま、店の奥まった場所へ案内される。月島を導く手は指先が五本きっちりと揃っていて隙がない。掌の色だけ少し薄い肌色なのが目に入った。
「よろしければお荷物はこちらへどうぞ」
鯉登がそう言うので、近くにあった一人がけのソファにどっさりと大量の紙袋とほぼ空っぽの鞄を置く。
大きな姿見の前へ立つと自分の姿だけしかけ絵本の飛びだす人形のように浮いて見えた。いかにいい服を着ていても、高級店に慣れている面々とはまず立ち方や手先の仕草が違う。
それに健康的な鯉登と並ぶと自分の肌の青白さというか、生気のなさがひどい。
ずっと死ぬことを考えて生きてきた、今日出所したての服役囚だぞ、当然だ、と内心で誰に言い訳するでもなく諦めまじりの弁明を吐く。
鰐淵__
DOODLE注)※死ネタ注意 / 冒頭、明治軸2人が戦闘でなくなるシーンがあります
※月いご要素あり
【記憶あり転生月鯉】
偶然再会したものの諸事情あり🌙が結婚してると勘違いした🎏が独り相撲するドタバタラブストーリー!に最後はなる予定の漫画です。ボチボチ更新予定
🌙🎏幸せにするぞの党、党員が描いていますので約束されしハッピーエンドとなりますが、苦手な要素ありましたら自衛お願いします! 15
kyosato_23
MAIKING父親を殺して服役してた月と、アパレルショップ店員で眼鏡着用の鯉の月鯉です。眼鏡してる鯉と、客をさま付けで呼ぶ鯉が書きたかった。
続きはちまちま書いていきます。
最終的にお互い好きになります。
ガラス越しのかくれんぼ*
覚悟を決めて、月島はその場所から一歩を踏み出した。
実に十年ぶりの出所だった。
月島が父親を殴り殺したあの日から十年、裁判の期間を含めれば十一年近くが経過している。
二十代の大半を刑務所の中で過ごした。体が重く感じるのは歳をとったせいだけではないだろう。前科持ちとなった月島には外の空気は眩しすぎた。
晴れて自由の身、と言いたいところだが、月島にはもう次の拘束場所、もとい就職先が決まっている。
本来はありがたいことなのだろう。怒りに身をまかせて人を殺したような男が、出所してすぐに上等な仕事にありつけるなど。
重い体を引きずって、先日受け取った手紙に書いてあったとおりの待ち合わせ場所へと向かう。たいした荷物も入っていないスカスカの鞄すら鉛のように重く感じる。
4509覚悟を決めて、月島はその場所から一歩を踏み出した。
実に十年ぶりの出所だった。
月島が父親を殴り殺したあの日から十年、裁判の期間を含めれば十一年近くが経過している。
二十代の大半を刑務所の中で過ごした。体が重く感じるのは歳をとったせいだけではないだろう。前科持ちとなった月島には外の空気は眩しすぎた。
晴れて自由の身、と言いたいところだが、月島にはもう次の拘束場所、もとい就職先が決まっている。
本来はありがたいことなのだろう。怒りに身をまかせて人を殺したような男が、出所してすぐに上等な仕事にありつけるなど。
重い体を引きずって、先日受け取った手紙に書いてあったとおりの待ち合わせ場所へと向かう。たいした荷物も入っていないスカスカの鞄すら鉛のように重く感じる。
kyosato_23
MAIKING子供の頃に女の子の服を着て近所の子の性癖をおかしくさせていた少尉の話です(書きかけ)推しが子供の頃に好奇心などで女の子の服を着て周囲の男の初恋泥棒になるのが性癖です
月鯉ですが幼少時代モブから好かれている描写あり。
金塊争奪戦後設定のある種生存ifですが、中尉や師団に関する話は出てきません(パパは原作の現状通り亡くなった前提で書いています)
菫の花の君*
月島は函館の鯉登邸に足を踏み入れるのはこれが初めてだった。
全てが終わってから初めて迎える年の瀬、故郷に帰らないのならば自分の家へ来いと鯉登に半ば引きずられるように連れて来られたのだ。
月島は当初は遠慮したが、お前と私の仲なのだから家に来るくらいはいいだろうと拗ねられてしまうと弱かった。
先の戦で夫を失った母親が心配なのも大きいのだろう。人数が多い方が賑やかで良いと白い息を吐く横顔に僅かな憂いが滲んでいた。
鯉登邸で月島は歓迎された。服喪であるからと大々的な新年の祝いの料理はなかったが、それでも鯉登家のささやかな料理というのは月島にとっては大層立派な膳である。
十分に礼を尽くして出された食事を平げ、鯉登やその母親と歓談したり近くを散策したりと緩やかに時間は過ぎた。
4993月島は函館の鯉登邸に足を踏み入れるのはこれが初めてだった。
全てが終わってから初めて迎える年の瀬、故郷に帰らないのならば自分の家へ来いと鯉登に半ば引きずられるように連れて来られたのだ。
月島は当初は遠慮したが、お前と私の仲なのだから家に来るくらいはいいだろうと拗ねられてしまうと弱かった。
先の戦で夫を失った母親が心配なのも大きいのだろう。人数が多い方が賑やかで良いと白い息を吐く横顔に僅かな憂いが滲んでいた。
鯉登邸で月島は歓迎された。服喪であるからと大々的な新年の祝いの料理はなかったが、それでも鯉登家のささやかな料理というのは月島にとっては大層立派な膳である。
十分に礼を尽くして出された食事を平げ、鯉登やその母親と歓談したり近くを散策したりと緩やかに時間は過ぎた。
うえき
DOODLEきっと探したらどこかにありそうな勘違いでプロポーズが成立するタイプの現パロ月島と平之丞さんが同級生(高校生)くらいで少尉が幼児の月←鯉(月鯉…?)
といえ「おいと といえ すっ?」
ソファからぴょこりと頭を出して首をことりと傾けた幼児にそう問われ、月島はしばらく考えて(トイレする…つまり連れションのことか…?)と独り合点した。
まだ小さい子だ、大好きな兄の友達として随分慕ってくれてしきりと名前を呼んでくれるが「月島」が「ちゅきちま」になりがちな子だ、しかも名前が四文字なのも長くてつらかったのか最近は「ちゅき!」と省略してくるぐらいだ、ラ行の発音にはまだ早いのだろう。
いつもの通りまるい目をくるくるとさせてソファの向こう側からぴょこぴょこと跳ね元気そうに見えるけれど、もしかすると背伸びして怖い絵本でも見てしまって一人でトイレに行くのが怖いのかもしれない。
1341ソファからぴょこりと頭を出して首をことりと傾けた幼児にそう問われ、月島はしばらく考えて(トイレする…つまり連れションのことか…?)と独り合点した。
まだ小さい子だ、大好きな兄の友達として随分慕ってくれてしきりと名前を呼んでくれるが「月島」が「ちゅきちま」になりがちな子だ、しかも名前が四文字なのも長くてつらかったのか最近は「ちゅき!」と省略してくるぐらいだ、ラ行の発音にはまだ早いのだろう。
いつもの通りまるい目をくるくるとさせてソファの向こう側からぴょこぴょこと跳ね元気そうに見えるけれど、もしかすると背伸びして怖い絵本でも見てしまって一人でトイレに行くのが怖いのかもしれない。
3ten98yen
MOURNINGhttps://privatter.net/p/8208460にアップしていたものと同テーマで鯉登視点のものを書こうとしていたけれど手詰まりになってしまったので没ネタ供養&ポイピク試したかったので。ある日、急に軍曹の内心が文字として見えるようになってしまった少尉の話。色々とあるようでさしてない日常、山猫を添えて。
○○は口ほどにものを言う/鯉登の場合【月鯉/転生現パロ】 ある朝、恋人の呼び声で目を覚ましたら、その恋人の顔にデカデカと字が書かれていた。
「鯉登さん? どうかしたんですか? 鯉登さん?」
ベッドの上で身を起こした私の顔を、傍に立つ月島が怪訝な表情で覗き込んでいる。
鼻の低さや目つきの剣呑さなど、造形は少々独特だが渋みがあって男らしい、大好きな月島の顔。ところが今、その肉の薄く固そうな頬になんとも邪魔な黒文字が浮かんでいるではないか。
『寝ぼけてるのか? 大丈夫だろうか』
それも、なぜか角ゴシック体である。
しばらく月島の顔をじっと見つめていた私は、意を決して口を開いた。
「……なあ、月島。お前顔に文字を書いたなどということはないな?」
「は?」
眉根を寄せて聞き返してきた月島の顔にはありありと『この人は何を言ってるんだ』と書いてあるようだった。いや、実際に書かれている。先ほどまで浮かんでいた文字が一瞬でそう変わっていた。
6690「鯉登さん? どうかしたんですか? 鯉登さん?」
ベッドの上で身を起こした私の顔を、傍に立つ月島が怪訝な表情で覗き込んでいる。
鼻の低さや目つきの剣呑さなど、造形は少々独特だが渋みがあって男らしい、大好きな月島の顔。ところが今、その肉の薄く固そうな頬になんとも邪魔な黒文字が浮かんでいるではないか。
『寝ぼけてるのか? 大丈夫だろうか』
それも、なぜか角ゴシック体である。
しばらく月島の顔をじっと見つめていた私は、意を決して口を開いた。
「……なあ、月島。お前顔に文字を書いたなどということはないな?」
「は?」
眉根を寄せて聞き返してきた月島の顔にはありありと『この人は何を言ってるんだ』と書いてあるようだった。いや、実際に書かれている。先ほどまで浮かんでいた文字が一瞬でそう変わっていた。
もっこぽいぽい
PROGRESS新刊ほんのチラっと。このターンにコイトくんは出てきません。
尾が出てきてこんにちは。
オフィスの絡み楽しいね!
新刊進捗朝食の定番はデスクで食べるコンビニおにぎり三つ。今日はそこへ加えて値段の割に内容量が少なく、甘ったるいビタミンとタウリンのドリンクを追加で流し込む。気休めで買ったものだが、後味の悪さが余計に虚しさを誘う。
「お疲れですか」
五名ずつ島のように配置されたデスクの斜め向こうからおはようございます、の後の一言をくれた後輩の尾形が心配とは裏腹な好奇の視線を向けてきた。個性的な面々が多いこの会社の中でもこの男は際立っている。
「はは〜ぁ。係長殿も、隅に置けませんなぁ」
「そんなんじゃない」
セクハラって言葉知ってるか、と言えば、「失礼しました」と口先だけで謝ってきた。
「……このところ、夢見が悪くてな」
ゴシゴシと顔を擦る両手の下から呻くように漏らす。
553「お疲れですか」
五名ずつ島のように配置されたデスクの斜め向こうからおはようございます、の後の一言をくれた後輩の尾形が心配とは裏腹な好奇の視線を向けてきた。個性的な面々が多いこの会社の中でもこの男は際立っている。
「はは〜ぁ。係長殿も、隅に置けませんなぁ」
「そんなんじゃない」
セクハラって言葉知ってるか、と言えば、「失礼しました」と口先だけで謝ってきた。
「……このところ、夢見が悪くてな」
ゴシゴシと顔を擦る両手の下から呻くように漏らす。
kyosato_23
DONE231話の後、コタンにて自分の為に料理をする鯉に嬉しさと罪悪感の両方がある月の月鯉です。
月の為に米を炊く鯉を無限に吸いたい。
その夜に魚を捌くはそのままの意味だったり、比喩だったりするかもしれない。
私は魚を捌く新しい命の誕生を見届けたその翌朝、月島は間借りしたアイヌの家の中で目を覚ました。
既に陽が高い。こんなに時間まで眠ったのはいつぶりの事だろうか。
軍での仕事以外にすることがないので月島はいつも仕事が終われば食事と風呂をすませてすぐに床に入り、朝も起床時間より早くに目覚めて仕事の為の身支度をする。白米の甘さと体の芯を温める湯船だけがかすかなよすがだった。
ふと横を見るとそこには共に寝ていたはずの鯉登の姿がない。息を呑んで飛び起きた。今更に家永に打たれた薬の後遺症が出てきたか、頭がずきりと痛む。
「なんだ、起きたのか月島。ちょうどいい、飯にしよう」
「……」
顔を顰めてこめかみを押さえている月島をよそに、あっけらかんとした様子の鯉登が入口から現れた。病衣のみでは冷えるだろうとアイヌの女たちが着せた見慣れぬ衣の上に軍衣を羽織っている。
2878既に陽が高い。こんなに時間まで眠ったのはいつぶりの事だろうか。
軍での仕事以外にすることがないので月島はいつも仕事が終われば食事と風呂をすませてすぐに床に入り、朝も起床時間より早くに目覚めて仕事の為の身支度をする。白米の甘さと体の芯を温める湯船だけがかすかなよすがだった。
ふと横を見るとそこには共に寝ていたはずの鯉登の姿がない。息を呑んで飛び起きた。今更に家永に打たれた薬の後遺症が出てきたか、頭がずきりと痛む。
「なんだ、起きたのか月島。ちょうどいい、飯にしよう」
「……」
顔を顰めてこめかみを押さえている月島をよそに、あっけらかんとした様子の鯉登が入口から現れた。病衣のみでは冷えるだろうとアイヌの女たちが着せた見慣れぬ衣の上に軍衣を羽織っている。
aYa62AOT
DONE壮年期の月鯉。除隊した月と中佐になった鯉がただ二人の家で話すだけののんびりとした話。
大体月が60代前半で鯉が50代前後の設定。
月鯉 久方振りの続けての休暇に鯉登中佐の足取りは軽い。軍司令部の目と鼻の先にある街で買った目新しい、所謂ハイカラな食べ物を紙袋いっぱいに両手に抱えて街から少し離れた私邸へと戻ってくる。
広々とした庭園で花の剪定をしていた月島はバタンと聞こえる車の扉の音にゆっくりと腰を上げる、軍人の頃に比べたらその動きは隙だらけだ。出迎えようと首から下げた老眼鏡を外して立派な踏み石に足をかけ縁側に上がる、無意識によいしょ。なんて言葉が出て否が応でも月島は自らの老いを感じていた。
「基ー、!帰ったど」
「お帰りなさい音さ……またあなたは、無駄買いはするなとあれほど…」
「無駄じゃなか、珍しい菓子やら飲ん物やらあったで買うてきたっじゃ」
2279広々とした庭園で花の剪定をしていた月島はバタンと聞こえる車の扉の音にゆっくりと腰を上げる、軍人の頃に比べたらその動きは隙だらけだ。出迎えようと首から下げた老眼鏡を外して立派な踏み石に足をかけ縁側に上がる、無意識によいしょ。なんて言葉が出て否が応でも月島は自らの老いを感じていた。
「基ー、!帰ったど」
「お帰りなさい音さ……またあなたは、無駄買いはするなとあれほど…」
「無駄じゃなか、珍しい菓子やら飲ん物やらあったで買うてきたっじゃ」
kyosato_23
MAIKING酒の勢いでうっかり一線を超える月鯉が書きたかったので書きました。まだ途中です。
着任したての頃。
ビール工場で1番ぐでぐでになってる(杉と比べると特に)のが可愛くて、薩摩人だけどあまり酒に強くない鯉を推してます。
酒の勢いでうっかり一線超える月鯉*
10月も後半になれば北海道の気温は徐々に冬に近づく。昼は太陽のある日はまだ過ごしやすい気温であるが、夕刻を過ぎれば冷える。
汗をかいた素肌の上を夜風が撫でていくのにひどい肌寒さを感じ、鯉登は眉を顰めて目を覚ました。
日は昇っていないが、外はうっすらと白みつつある、明け方のようだった。
素肌、とは。
はたと気付いて寝惚けた意識のまま自分の胸元や肩に手を這わせる。確かに裸である。
潔癖のきらいがある鯉登はよほどのことがない限り寝間着も着ずに床に入ったりはしないので、まず裸であることに困惑した。次にどうやらそもそも自分が寝ている場所が布団の上ではないのにも気付く。どう考えても体の下にあるのは布団の綿の心地よい柔らかさではなく、いぐさの香りだった。畳の上で眠ってしまったというのか。
338010月も後半になれば北海道の気温は徐々に冬に近づく。昼は太陽のある日はまだ過ごしやすい気温であるが、夕刻を過ぎれば冷える。
汗をかいた素肌の上を夜風が撫でていくのにひどい肌寒さを感じ、鯉登は眉を顰めて目を覚ました。
日は昇っていないが、外はうっすらと白みつつある、明け方のようだった。
素肌、とは。
はたと気付いて寝惚けた意識のまま自分の胸元や肩に手を這わせる。確かに裸である。
潔癖のきらいがある鯉登はよほどのことがない限り寝間着も着ずに床に入ったりはしないので、まず裸であることに困惑した。次にどうやらそもそも自分が寝ている場所が布団の上ではないのにも気付く。どう考えても体の下にあるのは布団の綿の心地よい柔らかさではなく、いぐさの香りだった。畳の上で眠ってしまったというのか。
もっこぽいぽい
DOODLE日付跨ぎギリセーフ(嘘)ハロウィン落書き!!残さず食べて 『月末は忙しいのでデートは来週末に』
そんなそっけないメールを見てため息をついているだけの私はもうどこにもいない。
なんと言っても、私の手には月島宅の合鍵があるのだ。
合鍵、すなわちそれは二十四時間いつでも月島宅を訪問できる魔法のアイテム。それが今、私の手の中にある。
何も外で会うだけがデートではない。疲れた月島を癒すべく、おうちデートとしけこもうではないか。そしてうってつけに今日はハロウィンだ。恋人がイベントの日に託けて愛を確かめ合うのは世の常である。手土産も持った。すべからくなんの問題もない。
私は、手にした魔法の鍵で月島の寝込みを襲うことにした。
鍵穴に鍵を差し込んで回す。難なくその扉は開いた。
4352そんなそっけないメールを見てため息をついているだけの私はもうどこにもいない。
なんと言っても、私の手には月島宅の合鍵があるのだ。
合鍵、すなわちそれは二十四時間いつでも月島宅を訪問できる魔法のアイテム。それが今、私の手の中にある。
何も外で会うだけがデートではない。疲れた月島を癒すべく、おうちデートとしけこもうではないか。そしてうってつけに今日はハロウィンだ。恋人がイベントの日に託けて愛を確かめ合うのは世の常である。手土産も持った。すべからくなんの問題もない。
私は、手にした魔法の鍵で月島の寝込みを襲うことにした。
鍵穴に鍵を差し込んで回す。難なくその扉は開いた。
うえき
DOODLE樺太での一幕 杉元と少尉が話しているだけほんのりした月鯉
■口吸いの話■「少尉は故郷に想い人なんかはいるのか?」
たまたま二人だけになった時に何気なく杉元に聞かれ、鯉登はひょいと眉を上げた。
「いるわけがなかろう。それに私はいつか旗手を拝命することを目標としているのだ。」
胸を張って続ける鯉登にそっか、と自分で尋ねておいて杉元はどこか気の抜けた返事をする。
「なら口吸いなんかもしたことはないのか?」
「口吸い…」
鯉登はひとつ瞬きをした。
「一度だけある」
「へぇ?」
「叶うことならいつか旗手になりたいと月島に話した時に。そう、それでだから口吸いだってしたことはないと私が話したら」
『そうですか』
月島は平素の無表情を崩すことなく鯉登の目の前に立った。
『旗手は品行方正、重ねて童貞処女であることが望ましいと言われていますが…』
857たまたま二人だけになった時に何気なく杉元に聞かれ、鯉登はひょいと眉を上げた。
「いるわけがなかろう。それに私はいつか旗手を拝命することを目標としているのだ。」
胸を張って続ける鯉登にそっか、と自分で尋ねておいて杉元はどこか気の抜けた返事をする。
「なら口吸いなんかもしたことはないのか?」
「口吸い…」
鯉登はひとつ瞬きをした。
「一度だけある」
「へぇ?」
「叶うことならいつか旗手になりたいと月島に話した時に。そう、それでだから口吸いだってしたことはないと私が話したら」
『そうですか』
月島は平素の無表情を崩すことなく鯉登の目の前に立った。
『旗手は品行方正、重ねて童貞処女であることが望ましいと言われていますが…』