薬膳りんごカルピス
PAST高咲と歩夢ちゃんが一緒に登下校する話『そういうの』冬の空気は頬に冷たく、吐く息が白く曇る。私たちは放課後の帰り道、人気の少ない公園のベンチで一息ついていた。マフラーをぐるぐる巻きにして、コートのポケットに手を突っ込んでいるけれど、それでもやっぱり寒い。
隣で侑ちゃんが空を見上げている。彼女の顔がほんのり赤いのは、寒さのせいだろうか。それとも夕焼けの光のせいだろうか。そんなことをぼんやり考えながら、私はぎゅっと肩をすくめる。
「歩夢、こっちきて」
突然、侑ちゃんが私を呼ぶ。その声に顔を上げると、彼女はじっと私を見つめていた。
「え、なに?」
少し不安になりながらも、私は彼女の近くに寄る。すると、侑ちゃんは何も言わずに自分の首に巻いていたマフラーを外して、それを私の首に優しく巻きつけた。
1559隣で侑ちゃんが空を見上げている。彼女の顔がほんのり赤いのは、寒さのせいだろうか。それとも夕焼けの光のせいだろうか。そんなことをぼんやり考えながら、私はぎゅっと肩をすくめる。
「歩夢、こっちきて」
突然、侑ちゃんが私を呼ぶ。その声に顔を上げると、彼女はじっと私を見つめていた。
「え、なに?」
少し不安になりながらも、私は彼女の近くに寄る。すると、侑ちゃんは何も言わずに自分の首に巻いていたマフラーを外して、それを私の首に優しく巻きつけた。
薬膳りんごカルピス
PAST🎀「愛ちゃんってさ、美里さんと話すときの声ワントーン高いよね」🙌「…え?」
『特別な声』愛ちゃんと私は、放課後の道を並んで歩いていた。冬の空気が頬を刺すけれど、彼女と話しているとその冷たさもどこか心地よい。夕暮れに溶け込む彼女の横顔は、どこか暖かさを持った月明かりのようで、私の心を穏やかにしてくれる。
「ねぇ、愛ちゃん。」
「ん? どうしたの、歩夢?」
振り返った愛ちゃんの声は、いつものように軽やかで明るい。それが聞きたくて、私はいつも彼女に話しかけてしまう。
「この前、美里さんと話してるとき、愛ちゃんの声、少しワントーン上がってたよね。」
何気なく言った言葉だった。けれど、その瞬間、愛ちゃんの足が止まったのが分かった。振り向くと、彼女は目を大きく見開き、唇を少し開いている。
「……え?」
小さな声がこぼれる。夕焼けが、彼女の顔を薄紅色に染めていく。頬を彩るその色は、冬の冷たい風と対照的に、春先の花びらのように優しかった。
1343「ねぇ、愛ちゃん。」
「ん? どうしたの、歩夢?」
振り返った愛ちゃんの声は、いつものように軽やかで明るい。それが聞きたくて、私はいつも彼女に話しかけてしまう。
「この前、美里さんと話してるとき、愛ちゃんの声、少しワントーン上がってたよね。」
何気なく言った言葉だった。けれど、その瞬間、愛ちゃんの足が止まったのが分かった。振り向くと、彼女は目を大きく見開き、唇を少し開いている。
「……え?」
小さな声がこぼれる。夕焼けが、彼女の顔を薄紅色に染めていく。頬を彩るその色は、冬の冷たい風と対照的に、春先の花びらのように優しかった。
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PAST自分の1/7スケールフィギュアの試作品をまじまじと鑑賞される栞子さんの話『1/7の純情な感情』部室のドアを開けると、すでに歩夢さんと侑さんが中で談笑していた。穏やかな時間が流れるいつもの部室だが、今日は少しだけ空気が違う気がする。歩夢さんは私を見つけると、いつも以上に嬉しそうな笑顔を浮かべ、すぐに話しかけてきた。
「栞子ちゃん、聞いたよ!フィギュア化おめでとう!」
「ありがとうございます……」
やはりこの話題か。内心、嬉しい気持ちはある。けれど、この何とも言えない複雑な感情は何なのか。
自分のスケールフィギュアが発売されるなんて、普通の高校生では考えられないことだろう。でも、スクールアイドルとして活動している私にとっては、それが「普通」なのだと嫌でも思い知らされる。
「そういえば、なんで私たちのグッズって、知らない間に商品化されて売られてるんだろう?」
3461「栞子ちゃん、聞いたよ!フィギュア化おめでとう!」
「ありがとうございます……」
やはりこの話題か。内心、嬉しい気持ちはある。けれど、この何とも言えない複雑な感情は何なのか。
自分のスケールフィギュアが発売されるなんて、普通の高校生では考えられないことだろう。でも、スクールアイドルとして活動している私にとっては、それが「普通」なのだと嫌でも思い知らされる。
「そういえば、なんで私たちのグッズって、知らない間に商品化されて売られてるんだろう?」
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PAST重めな中須の話『ぬくもり』昼休みが始まると、いつものように教室の片隅にある席に向かった。しかし、今日はいつもと違う。身体が鉛のように重く、胃のあたりに鈍い痛みが広がっている。最悪だ。よりにもよってこのタイミングで。
私は席に着くなり、そのまま机に突っ伏してしまった。
「かすみちゃん、大丈夫?」
廊下の窓際から声をかけられ、顔を上げるとそこには歩夢先輩が心配そうにこちらを見ていた。両手で抱えられた教科書やノートの類を見るに、どうやら移動教室の途中だろう。いつも笑顔の彼女が、今日は少し眉をひそめている。
「……大丈夫です あー、でもただ少し…疲れちゃって」
そう言ったものの、私の体調が悪いのは歩夢先輩の目から見ても一目瞭然なようで、無理に笑おうとする私に、歩夢先輩は優しく微笑んだ。
1022私は席に着くなり、そのまま机に突っ伏してしまった。
「かすみちゃん、大丈夫?」
廊下の窓際から声をかけられ、顔を上げるとそこには歩夢先輩が心配そうにこちらを見ていた。両手で抱えられた教科書やノートの類を見るに、どうやら移動教室の途中だろう。いつも笑顔の彼女が、今日は少し眉をひそめている。
「……大丈夫です あー、でもただ少し…疲れちゃって」
そう言ったものの、私の体調が悪いのは歩夢先輩の目から見ても一目瞭然なようで、無理に笑おうとする私に、歩夢先輩は優しく微笑んだ。
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DOODLE妄想です三船栞子さんの手紙歩夢さんへ
ご卒業おめでとうございます。長い間、私が胸に秘めてきた想いを、今こうして手紙に綴ります。
ずっと心の中で迷っていました。この秘密をあなたに伝えるべきか、それともこのまま黙っていようかと。でも、かつて「素直でもっといたい」とみなさんの前で歌った自分を思い出した時、気付きました。自分の気持ちを偽ることは、自分自身に嘘をつくことなのだと。だから話します。嘘偽りのない、私の本当の気持ちを。
歩夢さん、ずっとあなたのことが大好きでした
あなたの肩が触れるだけでその目を見つめられなくなり、指が触れるだけで何もできなくなってしまうほどに、あなたの一言に思いを巡らせ、浮き足立つ自分がいました。
優しいあなたが大好きでした。
1093ご卒業おめでとうございます。長い間、私が胸に秘めてきた想いを、今こうして手紙に綴ります。
ずっと心の中で迷っていました。この秘密をあなたに伝えるべきか、それともこのまま黙っていようかと。でも、かつて「素直でもっといたい」とみなさんの前で歌った自分を思い出した時、気付きました。自分の気持ちを偽ることは、自分自身に嘘をつくことなのだと。だから話します。嘘偽りのない、私の本当の気持ちを。
歩夢さん、ずっとあなたのことが大好きでした
あなたの肩が触れるだけでその目を見つめられなくなり、指が触れるだけで何もできなくなってしまうほどに、あなたの一言に思いを巡らせ、浮き足立つ自分がいました。
優しいあなたが大好きでした。
薬膳りんごカルピス
PAST同好会のみんなの夢を見た"あなたちゃん"の話『あなただけがいないまち』「どうしたの?すごくうなされてたよ?悪い夢でもみた?」
───夢を見ていた。同好会のみんなの夢。
私だけがいない部室で歩夢ちゃん達がマネージャーの女の子を囲んで、楽しそうに笑う夢。
『歩夢ちゃん…!私はここにいるよっ!歩夢ちゃん!』
近くで必死に叫んでも私の声はみんなには届かない。マネージャーの子と親しげに話す歩夢ちゃんは、心なしかいつもより楽しそうで、そんなみんなの姿を見ていると、まるで自分はこの世界に必要ないって言われてるみたいで、それが不安で、悲しくて───
「そっか。怖くなっちゃったんだね。大丈夫だよ。私はずっとそばにいるよ。」
そう言って私の頭を撫でる歩夢ちゃんの声は、いつもよりも優しい。
「ありがとう。歩夢ちゃん…」
488───夢を見ていた。同好会のみんなの夢。
私だけがいない部室で歩夢ちゃん達がマネージャーの女の子を囲んで、楽しそうに笑う夢。
『歩夢ちゃん…!私はここにいるよっ!歩夢ちゃん!』
近くで必死に叫んでも私の声はみんなには届かない。マネージャーの子と親しげに話す歩夢ちゃんは、心なしかいつもより楽しそうで、そんなみんなの姿を見ていると、まるで自分はこの世界に必要ないって言われてるみたいで、それが不安で、悲しくて───
「そっか。怖くなっちゃったんだね。大丈夫だよ。私はずっとそばにいるよ。」
そう言って私の頭を撫でる歩夢ちゃんの声は、いつもよりも優しい。
「ありがとう。歩夢ちゃん…」
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PAST「ねえ、侑ちゃん。私、ずっと侑ちゃんのこと好きだったんだよ。友達として、じゃなくてひとりの女の子として」「うん。知ってた」
幼馴染の花嫁姿を見送る、高咲の話
「福音」私は立ちすくんだまま、祭壇の前に佇む歩夢を見つめていた。彼女の笑顔は純粋で、どこか懐かしさを感じさせる。ほんと、小さい頃から何も変わってない。幼い頃から共に過ごしてきた記憶は、まるで昨日のことのように鮮明で、それらが心を埋め尽くすたびに、胸が締め付けられる。
披露宴が終わり、参加者が帰り支度を始める中、私はやっとの思いで歩夢に近づいた。彼女は振り向き、静かに微笑む。
「ねえ、侑ちゃん。私、ずっと侑ちゃんのこと好きだったんだよ。友達として、じゃなくてひとりの女の子として」
歩夢の言葉は、まるで時が止まったかのように私の心に響いた。本当はずっと前から気づいていた。でも、私が知らないふりをし続けたせいで、ついぞ、名前さえつかなかった歩夢の感情。それが今、私の目の前にある。
946披露宴が終わり、参加者が帰り支度を始める中、私はやっとの思いで歩夢に近づいた。彼女は振り向き、静かに微笑む。
「ねえ、侑ちゃん。私、ずっと侑ちゃんのこと好きだったんだよ。友達として、じゃなくてひとりの女の子として」
歩夢の言葉は、まるで時が止まったかのように私の心に響いた。本当はずっと前から気づいていた。でも、私が知らないふりをし続けたせいで、ついぞ、名前さえつかなかった歩夢の感情。それが今、私の目の前にある。