Meri0_cherry
DONE朱桜家の庭に咲く桜の木、その“人格”がこはくに移ってしまったお話お分かりの通り特殊設定ですので「何でも許せる方」向けです
不穏だけどハピエンなこはつかになる予定
サクラ、サクラ、巡りゆく 第一話 ある日、小鳥が現れた。白い羽をめいっぱい広げて、一本の木の枝に降り立つ。
小鳥は枝を一度つつくとピーピーと鳴いた。鳴き声はごく普通の鳥のまま、止まっている木の“魂”に語りかける。
『心を決めたか』
それに呼応して木の枝が揺れる。小鳥の“魂”への返事だ。カサカサと葉が重なる音が響く。
『うん、決めた』
小鳥がまた鳴く。
『最後に確認する。お前は想いを告げたら必ずこの桜の木に戻ることとなる。それでも良いのか』
『うん』
『今のお前の記憶は“向こう”では不完全になり得る。即ちそれは、お前の想い人の記憶も、その感情も、消えてしまう可能性があるということ。それでもお前は、想い人の傍を望むのか』
3386小鳥は枝を一度つつくとピーピーと鳴いた。鳴き声はごく普通の鳥のまま、止まっている木の“魂”に語りかける。
『心を決めたか』
それに呼応して木の枝が揺れる。小鳥の“魂”への返事だ。カサカサと葉が重なる音が響く。
『うん、決めた』
小鳥がまた鳴く。
『最後に確認する。お前は想いを告げたら必ずこの桜の木に戻ることとなる。それでも良いのか』
『うん』
『今のお前の記憶は“向こう”では不完全になり得る。即ちそれは、お前の想い人の記憶も、その感情も、消えてしまう可能性があるということ。それでもお前は、想い人の傍を望むのか』
Meri0_cherry
DONE十年前、こはくとの別れが前触れもなく突然訪れたものだったとしたら、司はその別れを、喪失感を、今でも忘れられないんじゃないか。そして、一度別れてしまったからこそ、今隣に居られる幸せを実感しているんじゃないか。
そんなお話です。
なかなかお話の中で表現が難しかったので、なんとなくこういうこと言いたいのね〜と思いながらゆる〜くお楽しみいただければと思います
※過去捏造
さようならは似合わない「こはくん、次はいつ会えるのですか」
空は橙色に染まり、烏が大声で日暮れを告げている。朱桜家の中庭にそびえ立つ大きな木の下で、司は頭上の枝に腰掛ける彼を見上げていた。
「お別れんときはいつもそれやな、坊」
「だ、だって…!最近会える頻度が減っているでしょう?」
「それはわしの都合やなくてぬしはんの方やろ。お勉強にお稽古にで大忙しやんけ」
「…はい、次期当主として学ばなくてはならないことばかりで……でも、僕はまだ子供です。お友達とこうして遊んでいたい」
「そのお友達が桜河の人間やと知ったら、ご両親はどないな顔するやろなぁ」
「こはくんはこはくんです!お友達に家柄は関係ありません」
「……やとええけどなぁ」
4630空は橙色に染まり、烏が大声で日暮れを告げている。朱桜家の中庭にそびえ立つ大きな木の下で、司は頭上の枝に腰掛ける彼を見上げていた。
「お別れんときはいつもそれやな、坊」
「だ、だって…!最近会える頻度が減っているでしょう?」
「それはわしの都合やなくてぬしはんの方やろ。お勉強にお稽古にで大忙しやんけ」
「…はい、次期当主として学ばなくてはならないことばかりで……でも、僕はまだ子供です。お友達とこうして遊んでいたい」
「そのお友達が桜河の人間やと知ったら、ご両親はどないな顔するやろなぁ」
「こはくんはこはくんです!お友達に家柄は関係ありません」
「……やとええけどなぁ」
Meri0_cherry
DONE世間はエイプリルフールで賑わっていますが(勿論私も嬉々として恋すくパロディ小説を書き始めています)、桜が咲き始めた頃に出そうと決めていたこはつか♀小説を投稿させてもらいますかなりアバウトですが“武士が活躍する時代”パロです
※司視点
貴方の隣で、これからも。「おうかわこはくや、よろしゅう」
彼との出会いは今でも鮮明に覚えている。葉が落ちた桜の木に雪が降り注がれた寒い冬。背後に立つ母親らしき人物が頭を深々と下げる間、片時も私の目から視線を逸らさなかったその少年からは、静かに死の匂いがした。
♢♢♢
ドタドタと廊下を駆けていく武士の姿が障子に映る。
また彼奴らか畜生め、場所は?西の方角だ、既に着いた三人が重傷を負っている。了解、加勢するぞ、おう。
小声で話しているのは障子越しにいる私を気遣ってなのだろうか。残念ながらこうして全て私の耳に届いてしまっているのだが。
廊下に人気が無くなったのを確認すると黙々と進めていた編み物を床に置き、はあ、と大きく溜息をついた。
5689彼との出会いは今でも鮮明に覚えている。葉が落ちた桜の木に雪が降り注がれた寒い冬。背後に立つ母親らしき人物が頭を深々と下げる間、片時も私の目から視線を逸らさなかったその少年からは、静かに死の匂いがした。
♢♢♢
ドタドタと廊下を駆けていく武士の姿が障子に映る。
また彼奴らか畜生め、場所は?西の方角だ、既に着いた三人が重傷を負っている。了解、加勢するぞ、おう。
小声で話しているのは障子越しにいる私を気遣ってなのだろうか。残念ながらこうして全て私の耳に届いてしまっているのだが。
廊下に人気が無くなったのを確認すると黙々と進めていた編み物を床に置き、はあ、と大きく溜息をついた。
Meri0_cherry
DONE前にかきかけであげていた同棲こはつかいちゃらぶ話です🌸ショートケーキより甘い恋「ありがとうございました」
一礼をしてスタジオをあとにする。
今日のスケジュールはなかなかに過密だった。
朝から雑誌の撮影、インタビュー、そして先ほどまでは長時間の番組収録。
デビューして三年が経ちようやく成人を迎えたからか、今年に入って個人の仕事が増えたように思う。
今日のように忙しなく一日を過ごすことも稀じゃなくなった。
長い廊下を渡り終えドアを開けると、外の生温い空気が体にまとわりついてきた。
もう九月だというのに夜になってもこの暑さ。キンと冷えた冬の空気が恋しく感じる。
まあいざ冬になったら、今度はこの夏の暑さが恋しくなるんだろうけど。
服の襟を掴んでパタパタと扇ぎながら空を見上げた。
入りの時とは大違いのこの暗さは今日一日の長さを物語っているようで、思わず息を吐く。
6205一礼をしてスタジオをあとにする。
今日のスケジュールはなかなかに過密だった。
朝から雑誌の撮影、インタビュー、そして先ほどまでは長時間の番組収録。
デビューして三年が経ちようやく成人を迎えたからか、今年に入って個人の仕事が増えたように思う。
今日のように忙しなく一日を過ごすことも稀じゃなくなった。
長い廊下を渡り終えドアを開けると、外の生温い空気が体にまとわりついてきた。
もう九月だというのに夜になってもこの暑さ。キンと冷えた冬の空気が恋しく感じる。
まあいざ冬になったら、今度はこの夏の暑さが恋しくなるんだろうけど。
服の襟を掴んでパタパタと扇ぎながら空を見上げた。
入りの時とは大違いのこの暗さは今日一日の長さを物語っているようで、思わず息を吐く。
アマテラス
MOURNINGこはつか。AI。
全年齢。
朝のシチュエーションが好きなAIさん。
えっちなシーンの前置きを作って貰ってたけど、ちょっと繋がらなくなっちゃったので これはこれで公開。
えっちなやつのストックあります。また朝になるのもなんなので考えます。AIさんが。 1323
Meri0_cherry
DONE想いの変化に気づけた司のお話・ラストミッション後、ES二年目軸の四月
・こはくがESアカデミーではなく玲明学園に入学しています
間に合った!!サドンデス2周年おめでとう!!!
ぜひNo name yetをBGMにお読みください🙌
名前はまだ無い こはくんのことを、知っていたようでいて実は何も知らなかったのだと、最近気付かされた。
彼と幼少期に同じ時を過ごしたから、朱桜家の当主だから、彼の兄だから。そんな理由だけで彼を一番に理解しているのは私だと思っていた。
しかし事実、彼と同じ屋根の下で生活をし始めてから、彼の未知の一面がどんどんと明るみになっているのだ。
例えば朝に弱いところ。sweetsとは違って案外洋食派なところ(本人は和食に飽きただけだと言い張っているけれど)。horrorが苦手なところ。歯磨き粉はsoftmint以外得意でないところ…どれも初めて知ったことだった。
知らなかった一面を知れた、それはきっと嬉しいことなんだろうけど。
5524彼と幼少期に同じ時を過ごしたから、朱桜家の当主だから、彼の兄だから。そんな理由だけで彼を一番に理解しているのは私だと思っていた。
しかし事実、彼と同じ屋根の下で生活をし始めてから、彼の未知の一面がどんどんと明るみになっているのだ。
例えば朝に弱いところ。sweetsとは違って案外洋食派なところ(本人は和食に飽きただけだと言い張っているけれど)。horrorが苦手なところ。歯磨き粉はsoftmint以外得意でないところ…どれも初めて知ったことだった。
知らなかった一面を知れた、それはきっと嬉しいことなんだろうけど。
Meri0_cherry
DONE無理やり完結です!!!!これまでお付き合い下さりありがとうございました:)
風の贈り物#3 夢夕陽に染まった暖かな木々が風に揺られ、こはくを歓迎する。
以前来た時のような“バレたら終わり”の恐怖を感じる必要はなく、もう二度と立ち入ることはないだろうこの庭をゆっくりと堪能していた。
中庭の中央にそびえ立つ大きな木、青々とした葉からはあまり結びつかないがたぶんこれは桜だ。これと大きさまでそっくりな桜の木が桜河家にも植えられている。同じ頃に植樹されたのだろうか。
「その桜、私が産まれたときに記念に植えられたそうですよ」
突然、背後から声がした。
驚きながら顔をそちらに向ける。
視界いっぱいに広がる御簾、その向こうに人の気配を感じた。
(………この人や)
今日、会いたかった人。会いに来た人。
そんな人が今、御簾を隔てたすぐそこにいる。
4922以前来た時のような“バレたら終わり”の恐怖を感じる必要はなく、もう二度と立ち入ることはないだろうこの庭をゆっくりと堪能していた。
中庭の中央にそびえ立つ大きな木、青々とした葉からはあまり結びつかないがたぶんこれは桜だ。これと大きさまでそっくりな桜の木が桜河家にも植えられている。同じ頃に植樹されたのだろうか。
「その桜、私が産まれたときに記念に植えられたそうですよ」
突然、背後から声がした。
驚きながら顔をそちらに向ける。
視界いっぱいに広がる御簾、その向こうに人の気配を感じた。
(………この人や)
今日、会いたかった人。会いに来た人。
そんな人が今、御簾を隔てたすぐそこにいる。
Meri0_cherry
DONE風の贈り物 #2 桜の決意「…ほんまに、綺麗やった」
帰宅後、いつものように談笑しに牢へ訪れると珍しくこはくの方から話を始めた。
決まりを破り外に出たこと、朱桜家の敷地に入ったこと、そこで一人の女性に目を奪われたこと。前触れもなく語られるには内容が突飛しておりかなり困惑したが、こはくの目は至って真剣だ。
「…姿、見たんか?」
「いや、御簾がかかっとったから見えたんは赤い髪だけや。風が吹いたときにふわぁっちなびいてな」
(……赤い…髪…)
途端、先程から感じていた胸騒ぎが一段とざわついた。思い当たる人物が一人、いるのだ。
仕事上朱桜家の内情は全て桜河に筒抜けであるから、人物の容姿はもちろんのこと誰がいつどこで何をしているかさえ把握している。自分の知る中では赤髪の女性なんて特徴的な人は一人しか思いつかない。しかもその人はちょうど今日、一日家にいたはずだ。
1689帰宅後、いつものように談笑しに牢へ訪れると珍しくこはくの方から話を始めた。
決まりを破り外に出たこと、朱桜家の敷地に入ったこと、そこで一人の女性に目を奪われたこと。前触れもなく語られるには内容が突飛しておりかなり困惑したが、こはくの目は至って真剣だ。
「…姿、見たんか?」
「いや、御簾がかかっとったから見えたんは赤い髪だけや。風が吹いたときにふわぁっちなびいてな」
(……赤い…髪…)
途端、先程から感じていた胸騒ぎが一段とざわついた。思い当たる人物が一人、いるのだ。
仕事上朱桜家の内情は全て桜河に筒抜けであるから、人物の容姿はもちろんのこと誰がいつどこで何をしているかさえ把握している。自分の知る中では赤髪の女性なんて特徴的な人は一人しか思いつかない。しかもその人はちょうど今日、一日家にいたはずだ。
Meri0_cherry
DONEこはつか♀ 平安パロシリーズものです
風の贈り物 #1 出会いとん、とん、とん。軽快なリズムが響き渡る。
人気のないとある一家の中庭、薄桃の髪をした少年が一人、まりをついていた。
桜河こはく───代々この地の長、朱桜家の護身として仕える桜河家の、たった一人の男子である。
ただ護身と言う程聞こえの良いものではなく所謂“汚れ仕事”を請け負い裏社会で暗躍している彼らは、時折あらぬ誤解を招き一族の繁栄を恐れられる。
『桜河を根絶やしにする』という朱桜家前当主の意向から逃れるように匿われて育ったこはくは、前当主が死んだ今も尚“禁忌”として扱われており、これ以上事を大きくしないためにもと自由に外出することを許されていない。
鋼で囲まれた暗い牢での暮らしを強いられているこはくにとって、家の者が皆仕事で出払っているこの時間は、外の空気を味わえる唯一の機会なのである。
3634人気のないとある一家の中庭、薄桃の髪をした少年が一人、まりをついていた。
桜河こはく───代々この地の長、朱桜家の護身として仕える桜河家の、たった一人の男子である。
ただ護身と言う程聞こえの良いものではなく所謂“汚れ仕事”を請け負い裏社会で暗躍している彼らは、時折あらぬ誤解を招き一族の繁栄を恐れられる。
『桜河を根絶やしにする』という朱桜家前当主の意向から逃れるように匿われて育ったこはくは、前当主が死んだ今も尚“禁忌”として扱われており、これ以上事を大きくしないためにもと自由に外出することを許されていない。
鋼で囲まれた暗い牢での暮らしを強いられているこはくにとって、家の者が皆仕事で出払っているこの時間は、外の空気を味わえる唯一の機会なのである。