きよせ
DOODLEりわ ちょっとだけ特別な日常部屋を満たしていく甘い香りに気付き、ペンを片手にうとうとと微睡んでいた航海はゆっくりと顔を上げた。
スン、と改めて意識をして嗅ぐと、焼き菓子特有の卵と砂糖の優しい香りがした。
目の前に広げたままのノートには、文字とは言い難いミミズが這ったような筆跡が残っており、航海は苦笑いを浮かべた。イメージが上手く固まらず、ああでもないこうでもないとしているうちに、どうやら睡魔に襲われてしまったようだ。
覚醒しきらないままの頭を持ち上げながら欠伸を一つ噛み殺し、航海はソファーから立ち上がる。
そのまま香りに釣られるがままキッチンの方へと足を運ばせると、気配を察したのか丁度片付けを終えエプロンを脱いだところで凛生が振り返った。
1222スン、と改めて意識をして嗅ぐと、焼き菓子特有の卵と砂糖の優しい香りがした。
目の前に広げたままのノートには、文字とは言い難いミミズが這ったような筆跡が残っており、航海は苦笑いを浮かべた。イメージが上手く固まらず、ああでもないこうでもないとしているうちに、どうやら睡魔に襲われてしまったようだ。
覚醒しきらないままの頭を持ち上げながら欠伸を一つ噛み殺し、航海はソファーから立ち上がる。
そのまま香りに釣られるがままキッチンの方へと足を運ばせると、気配を察したのか丁度片付けを終えエプロンを脱いだところで凛生が振り返った。
RuriRuri_79
INFOスタコンフェス3頒布作品次の新刊の告知、というかこういう作品書こうと思ってますっていう宣伝です。
りおわた、R18予定
桔梗凛生の凶暴性についてがテーマなので、お好きでない方は注意して下さい。 6
41rau0
TRAININGりおわたSS「的場」
不意に、名前を呼ばれた気がして顔を上げた。そうしたら、台所で洗い物をしていた桔梗がじっと僕を見ていた。あっ、気のせいじゃないんだ、と思った僕はそのままの姿勢でまばたきして
「なに」
と、短く答えた。
「ちょっと、こっちに来てくれないか」
「え?」
なんで? と思っている間にも、桔梗は淡々とお皿を処理していく。数秒間、蛇口から流れる水がばたばたとシンクに叩きつけられる音と、陶器同士がかち合う音だけがこの空間に響き渡った。
……手伝えってことかな。
確かに、家事が当番制とはいえ、任せっきりは負担が大きいよね。配慮が足りなかったかも。後で謝ろうと思いながら、本に栞を挟んでテーブルに置いた。
いざ台所に立ち入ってみると、意外にも……というか、冷静に桔梗凛生という男のスペックを考えると当然とも言えるんだけど、片付けはほとんど終わっているみたいだった。水濡れたお皿は一糸乱れずという風に水切りラックに収められ、シンク自体も心なしかいつもよりぴかぴかと輝いて清潔感が増している。……ような気がする。
2042不意に、名前を呼ばれた気がして顔を上げた。そうしたら、台所で洗い物をしていた桔梗がじっと僕を見ていた。あっ、気のせいじゃないんだ、と思った僕はそのままの姿勢でまばたきして
「なに」
と、短く答えた。
「ちょっと、こっちに来てくれないか」
「え?」
なんで? と思っている間にも、桔梗は淡々とお皿を処理していく。数秒間、蛇口から流れる水がばたばたとシンクに叩きつけられる音と、陶器同士がかち合う音だけがこの空間に響き渡った。
……手伝えってことかな。
確かに、家事が当番制とはいえ、任せっきりは負担が大きいよね。配慮が足りなかったかも。後で謝ろうと思いながら、本に栞を挟んでテーブルに置いた。
いざ台所に立ち入ってみると、意外にも……というか、冷静に桔梗凛生という男のスペックを考えると当然とも言えるんだけど、片付けはほとんど終わっているみたいだった。水濡れたお皿は一糸乱れずという風に水切りラックに収められ、シンク自体も心なしかいつもよりぴかぴかと輝いて清潔感が増している。……ような気がする。
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TRAININGりおわたどっちもダメだ 幾星霜の……。
ううん。
海に輝く……。
ダメだ。
思わず「うーん」と唸って、机に突っ伏した。ため息を吐いたら歌詞ノートに反射して、熱がこもってむっと暑くなった。
傍らできゅうんと搾り出すような音がして、少し顔をずらして確認した。ぽんちゃんがちょこんとおすわりして、僕を見上げていた。きゅんきゅんと舌を出して鳴き続けるぽんちゃんは、もしかしたら僕を心配してくれているのかもしれない。
「ありがとう、ぽんちゃん」僕はぽんちゃんのふわふわの毛並みに指を埋めるようにして、その頭を撫でた。「僕は元気だよ。ちょっと、歌詞作りが煮詰まっててさ」
ぐるぐると頭に薄暗い靄が渦巻く。それを追い出すようにため息を吐くと、気持ちよさそうに撫でられていたぽんちゃんはハッとして、僕の手を必死にペロペロと舐める。動物は人の心の動きに敏感だって説は都市伝説だろうと思っていたけれど、ぽんちゃんを見ているとあながち間違いでもないのかもと思えてくるな。
2232ううん。
海に輝く……。
ダメだ。
思わず「うーん」と唸って、机に突っ伏した。ため息を吐いたら歌詞ノートに反射して、熱がこもってむっと暑くなった。
傍らできゅうんと搾り出すような音がして、少し顔をずらして確認した。ぽんちゃんがちょこんとおすわりして、僕を見上げていた。きゅんきゅんと舌を出して鳴き続けるぽんちゃんは、もしかしたら僕を心配してくれているのかもしれない。
「ありがとう、ぽんちゃん」僕はぽんちゃんのふわふわの毛並みに指を埋めるようにして、その頭を撫でた。「僕は元気だよ。ちょっと、歌詞作りが煮詰まっててさ」
ぐるぐると頭に薄暗い靄が渦巻く。それを追い出すようにため息を吐くと、気持ちよさそうに撫でられていたぽんちゃんはハッとして、僕の手を必死にペロペロと舐める。動物は人の心の動きに敏感だって説は都市伝説だろうと思っていたけれど、ぽんちゃんを見ているとあながち間違いでもないのかもと思えてくるな。