天野叢雲
TRAINING攻め視点で振り返る3〜4、5話目。魔獣の花嫁 #7「面影と眼差し(後編)」 クロノから魔獣の事を聞き出すのは一度邪魔されて終わった。物音を聞きつけて他の冒険者がやってきたからだ。いくら奴が気に食わないと言っても側から見れば俺とクロノは同じ依頼を受けた冒険者同士。死体が転がる場所で同業者を斬ったとなれば更に面倒な事になる。苛立つ気持ちはあったものの、屋敷の警備依頼は続行中なのだから焦らなくてもクロノは逃げたりしない。
それに俺自身、少し冷静になるべきだと思ったのだ。
どうにもあの男を前にするとどこかで冷静さを欠く。キスにしろ擦り傷にしろ落ち着いて対処すれば防げたものだ。それにその後のクロノとのやりとりでもそうだ。徐に自分の右手を見る。弾かれて痺れはしたが、大した外傷にすらなっていなかった。
8223それに俺自身、少し冷静になるべきだと思ったのだ。
どうにもあの男を前にするとどこかで冷静さを欠く。キスにしろ擦り傷にしろ落ち着いて対処すれば防げたものだ。それにその後のクロノとのやりとりでもそうだ。徐に自分の右手を見る。弾かれて痺れはしたが、大した外傷にすらなっていなかった。
天野叢雲
TRAINING攻め視点で振り返る1〜2話目。魔獣の花嫁 #6「面影と眼差し(中編)」 その夜は満月が明るく、夜だというのに影が出来るほどだった。だからこそ、その影は夜の闇と相まって一層暗く見える。案外、そんな明るい夜の方が警戒すべきなのかもしれない。
商人バルトが一般の冒険者も多数雇ったので、ほっといてもこの屋敷は常に冒険者たちが警戒に当たっている。おかげで俺は自分に都合の良い時間だけ働けば良い。昼の間に森の調査に出てみたのだが、やけに静かな事以外今の所はおかしな点はなかった。意外と道も整備されていたので警護に問題が無いようなら次はあの道の先を確認しに行っても良いだろう。しかし着任から数日は依頼主に仕事をしている所を見せなくては不味かろう。そんな訳で仮眠を取って現在屋敷内の巡回をしている所だ。
7106商人バルトが一般の冒険者も多数雇ったので、ほっといてもこの屋敷は常に冒険者たちが警戒に当たっている。おかげで俺は自分に都合の良い時間だけ働けば良い。昼の間に森の調査に出てみたのだが、やけに静かな事以外今の所はおかしな点はなかった。意外と道も整備されていたので警護に問題が無いようなら次はあの道の先を確認しに行っても良いだろう。しかし着任から数日は依頼主に仕事をしている所を見せなくては不味かろう。そんな訳で仮眠を取って現在屋敷内の巡回をしている所だ。
天野叢雲
TRAINING攻め視点で振り返る0、5話目。魔獣の花嫁 #5「面影と眼差し(前編)」 四年前のあの日から俺は、シェゾ・クォンティーと名を変えた。亡き父レナルドルフからこの名をもらった当時、俺はこんなものいらないと抗議したのだが、今となってはこれも父にもらった大切なものになってしまった。
俺がまだ何も知らないガキの頃。クーデターが起こる前のリムブルムは、地方での争いが頻繁にあった。だから生まれて直ぐ預けられた孤児院には俺のような子供が何人もいた。そしてとうとうその孤児院までもが戦火に巻き込まれる。村に火を掛け、同じ国の兵士たちが雪崩れ込んで来て、暴行と略奪を行うのだ。
ただ支持している貴族が違うだとかそんな理由で、最も容易く刃は向けられる。一度そうなって仕舞えば、後は理由なんて置き去りで良い。俺にはただ暴れたくて理由を付けているように見えた。だから女子供でも気分次第で傷付ける。
7576俺がまだ何も知らないガキの頃。クーデターが起こる前のリムブルムは、地方での争いが頻繁にあった。だから生まれて直ぐ預けられた孤児院には俺のような子供が何人もいた。そしてとうとうその孤児院までもが戦火に巻き込まれる。村に火を掛け、同じ国の兵士たちが雪崩れ込んで来て、暴行と略奪を行うのだ。
ただ支持している貴族が違うだとかそんな理由で、最も容易く刃は向けられる。一度そうなって仕舞えば、後は理由なんて置き去りで良い。俺にはただ暴れたくて理由を付けているように見えた。だから女子供でも気分次第で傷付ける。
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TRAINING調子に乗って第二弾。創作BLの続き。連載はまだまだ続くのだよ…。この辺から年下攻め成分が入ります。魔獣の花嫁 #4「内緒話」 シェゾと握手を交わすと、彼はさっさと詳細を聞かせるとばかりに狭いテント内にドカリと腰を下ろした。若さ故なのか、俺の寝首を掻こうとしていたのに切り替えは早いようだ。まぁ、確かに印書も四つ端が崩れて無くなっている。手を組むと約束は取り付けたは良いが、まだ肝心の中身を話していないのだからここからはサクサク進めたい。その方が助かるというものだ。
しかしずっと待て状態だったからか、結局シェゾが先に口を開いた。本題の魔獣について。
「四年前、東のリムブルムで魔獣が目撃された」
「それなら知ってるよ。噂では騎士団が壊滅させられたそうだな」
「魔獣と戦ったのは第五騎士団。俺はかつてそこに所属していた」
「…生き残りがいたのか⁉︎ じゃあ噂は本当だったんだな」
9945しかしずっと待て状態だったからか、結局シェゾが先に口を開いた。本題の魔獣について。
「四年前、東のリムブルムで魔獣が目撃された」
「それなら知ってるよ。噂では騎士団が壊滅させられたそうだな」
「魔獣と戦ったのは第五騎士団。俺はかつてそこに所属していた」
「…生き残りがいたのか⁉︎ じゃあ噂は本当だったんだな」
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TRAINING調子に乗って創作BLの続きを上げます。主人公が告白(仲間勧誘)する話し。魔獣の花嫁 #3「互いの求めるもの」 シェゾに憎悪と凶器を突きつけられて、今度も俺はなんと言葉を返せば良いか分からないでいた。正確には、頭が追いついていないのだ。だって色んな事が急過ぎる。俺はこの事態を一体何から理解して行けば良いのだろうか。それさえ分からなくなっていた。
するとドタドタと複数の足音が近付いてくるのが聞こえた。目の前の剣士もそれに気付いたようだ。俺に向けられた張り詰めた殺気が消える。見ると走って来たのは同じ仕事を請け負った冒険者たちだ。確か…風の導きという四人パーティーの内の二人だったかな。俺が暴れた物音に驚いて見に来たらしい。もう少し到着するのが遅かったら、俺はこの剣士に斬られていただろうか? いや、それよりも早く来られて俺がシェゾに抱き付いているのを見られた方がヤバかったかもしれない。返り血まみれの俺じゃあどう見てもシェゾを襲っているようにしか見えないし、そのタイミングで攻撃なんて受けたら折角大人しくなった魔獣がまた暴れ出しただろう。そう言う意味では絶妙なタイミングと言えるだろう。
7972するとドタドタと複数の足音が近付いてくるのが聞こえた。目の前の剣士もそれに気付いたようだ。俺に向けられた張り詰めた殺気が消える。見ると走って来たのは同じ仕事を請け負った冒険者たちだ。確か…風の導きという四人パーティーの内の二人だったかな。俺が暴れた物音に驚いて見に来たらしい。もう少し到着するのが遅かったら、俺はこの剣士に斬られていただろうか? いや、それよりも早く来られて俺がシェゾに抱き付いているのを見られた方がヤバかったかもしれない。返り血まみれの俺じゃあどう見てもシェゾを襲っているようにしか見えないし、そのタイミングで攻撃なんて受けたら折角大人しくなった魔獣がまた暴れ出しただろう。そう言う意味では絶妙なタイミングと言えるだろう。
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TRAINING興が乗ったので2話目。状況はちっとも好転しないね。今の所カプ要素ほぼ無いですが、一応は花嫁×獣憑きです。美形×平凡で年下攻めのおっさん受け。まぁ、このおっさんまだ40手前の見た目ですがね。魔獣の花嫁 #2「壊し屋と剣士」 魔獣が人間に恋をする。おとぎ話ならありそうな話ではある。しかしそういう話ってのは、大体が悲恋で終わるものだ。
昔、一目惚れとは遺伝子が適正の相手を見付けたシグナルだとかそういった説を耳にした事があるが、この場合はそれの真逆に当たる。そもそも異種間では寿命が違うのだから添い遂げることが出来ない。必ずどちらかが先に死ぬし、生物として子孫を残せない。いや、ファンタジーならハーフ種として確立する場合もあるが、この異世界ではどれほどが可能なのだろうか。少なくとも男同士では無理だろう。でなければ性別が男女に分かれている意味がない。
おそらくだがこの老衰した魔獣は、大昔に人間に恋をした。そこまでは良い。長い長い年月を経て、今生きているのはその魔獣に好かれた人間の末裔だろう。若しくは、偶然にも物凄〜く似ているだけ。当人はきっと骨すら残って無いだろう。で、問題はここからだ。魔獣の性別が雌雄どちらだったか俺は知らん。俺の男としての機能が今までなんの問題も無かったからてっきりオスだと思っていたが、まぁそれは置いておこう。兎に角コイツは男であり人間である俺に取り憑いた。そして、この魔獣が今この世界で再会を果たした想い人のそっくりさんだか末裔だかも男だった。
7265昔、一目惚れとは遺伝子が適正の相手を見付けたシグナルだとかそういった説を耳にした事があるが、この場合はそれの真逆に当たる。そもそも異種間では寿命が違うのだから添い遂げることが出来ない。必ずどちらかが先に死ぬし、生物として子孫を残せない。いや、ファンタジーならハーフ種として確立する場合もあるが、この異世界ではどれほどが可能なのだろうか。少なくとも男同士では無理だろう。でなければ性別が男女に分かれている意味がない。
おそらくだがこの老衰した魔獣は、大昔に人間に恋をした。そこまでは良い。長い長い年月を経て、今生きているのはその魔獣に好かれた人間の末裔だろう。若しくは、偶然にも物凄〜く似ているだけ。当人はきっと骨すら残って無いだろう。で、問題はここからだ。魔獣の性別が雌雄どちらだったか俺は知らん。俺の男としての機能が今までなんの問題も無かったからてっきりオスだと思っていたが、まぁそれは置いておこう。兎に角コイツは男であり人間である俺に取り憑いた。そして、この魔獣が今この世界で再会を果たした想い人のそっくりさんだか末裔だかも男だった。
天野叢雲
TRAININGそういえば小説も上げられるんだなぁと思ったので、お試し的に創作BL載せてみる。続きは気が向いたら上げます。魔獣の花嫁 #1「ウソだと言ってくれ」 なんでそいつだったのだろうと思う。せめて可愛いとまでも行かなくても、女性でも良かっただろうに。何故同性の男で、よりにもよってこんな面倒臭そうなのが俺が探し求めていた相手だったのか。もし神様がいるなら胸ぐらを掴みたい。
本当にあんまりだと思う。俺がここに辿り着くまでどんな目に遭ったか。少し語らせて欲しい。
事の始まりはあの日、散々勤務が続いてからの帰り道だ。あの時俺は確か……六、いや。違うな。佐藤が熱で出られないってんで肩代わりしたから、計九連勤してたんだ。九連勤を終えての帰り道。
あ。因みに警備員なんてものをやってたんで、俺の言う連勤は連続数=日数には当てはまらない。警備の仕事には日勤と夜勤と、それから二十四時間勤務の当務なんてものもある訳なので、日勤→夜勤→当務なんて続いたりしたら、二日間で三連勤する事が可能だからだ。完全に労基違反も良い所なのだが、業法上制服着たら即勤務という訳にはいかず、そして残念な事にうちの会社は人手不足だったのだ。
8314本当にあんまりだと思う。俺がここに辿り着くまでどんな目に遭ったか。少し語らせて欲しい。
事の始まりはあの日、散々勤務が続いてからの帰り道だ。あの時俺は確か……六、いや。違うな。佐藤が熱で出られないってんで肩代わりしたから、計九連勤してたんだ。九連勤を終えての帰り道。
あ。因みに警備員なんてものをやってたんで、俺の言う連勤は連続数=日数には当てはまらない。警備の仕事には日勤と夜勤と、それから二十四時間勤務の当務なんてものもある訳なので、日勤→夜勤→当務なんて続いたりしたら、二日間で三連勤する事が可能だからだ。完全に労基違反も良い所なのだが、業法上制服着たら即勤務という訳にはいかず、そして残念な事にうちの会社は人手不足だったのだ。