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    天野叢雲

    @onitakemusya
    だいたい出来心

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    天野叢雲

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    攻め視点で振り返る0、5話目。

    #魔獣の花嫁
    brideOfTheHexenbiest
    #創作BL
    creationOfBl

    魔獣の花嫁 #5「面影と眼差し(前編)」 四年前のあの日から俺は、シェゾ・クォンティーと名を変えた。亡き父レナルドルフからこの名をもらった当時、俺はこんなものいらないと抗議したのだが、今となってはこれも父にもらった大切なものになってしまった。




     俺がまだ何も知らないガキの頃。クーデターが起こる前のリムブルムは、地方での争いが頻繁にあった。だから生まれて直ぐ預けられた孤児院には俺のような子供が何人もいた。そしてとうとうその孤児院までもが戦火に巻き込まれる。村に火を掛け、同じ国の兵士たちが雪崩れ込んで来て、暴行と略奪を行うのだ。
     ただ支持している貴族が違うだとかそんな理由で、最も容易く刃は向けられる。一度そうなって仕舞えば、後は理由なんて置き去りで良い。俺にはただ暴れたくて理由を付けているように見えた。だから女子供でも気分次第で傷付ける。

    「こいつは売り飛ばそう。金になりそうだ」

     兵士の一人がそう言ったのを覚えている。他のみんながどうなったかは分からない。剣で背中を斬られて動けなかった俺は、そこから連れ去られたのだ。荷台に乗せられ、ボロきれを被せられたのでどこをどう移動したのか分からない。そしてそのまま意識を失った。このまま死ぬんだと思っていた。そんな俺を助けてくれたのが父だった。

     今でもその時の光景が目に焼き付いている。彼が、優しく俺を抱きしめてくれた事を。心配そうなその表情を。

     父は暴徒鎮圧の命で近くの村を訪れていて、たまたま辺りを散策中に略奪品を運ぶ兵士に出会ったそうだ。そして荷物の中に俺を見付けたという。俺は飲ませてもらった回復薬で命を取り留めて、傷が完治するまでは近くの村で世話してもらった。本当なら恩人の騎士様とはそれで終わりになるはずだった。だが、彼は俺を引き取りに戻って来てくれたのだ。生き永らえただけでも奇跡なのに、奇跡はもう一度起きた。

    「俺の息子になってくれるか?」

     貴族であるはずのその人は、親のいない平民の子供相手に命令するでもなく、どこか遠慮がちに手を差し伸べてくれたのだ。夢じゃないかと思った。もう腹を空かせて過ごす事も無くなるという事より、初めてお父さんと呼んでいい人が出来た事が嬉しくてたまらなかった。

     レナルドルフ・シン・セスト。セスト伯爵家の三男であり、第五騎士団の団長に就任仕立ての彼は、俺にとって優しい父親だった。そして剣においては厳しい師匠だった。現王派閥のセスト家でなければもっと出世出来たと噂される程に父は強かったのだから。父さんは俺の恩人であり、憧れの人だった。この人のために生きようと思った。

     だが、いつからだったろう。そんな自分の愛情が、普通ではないと気が付いたのは…。

     成長するにつれ、その気持ちは顕著になって行った。俺は育ての親であるレナルドルフを一人の人間として愛してしまっていたのだ。彼を独り占めしたかった。心から父と呼ぶ人を抱く夢だって何度も見た。それでもそれを口にする事は許されなかった。あの人の愛を裏切りたくはなかったから。




     そんな愛しい父は、もうこの世にいなくなってしまった。

     屋敷で父の帰りを待つ俺に訃報を届けに来たのは新王派閥の騎士だ。そいつは配下を連れてズカズカと屋敷に上がり、出て行けと言い放ったのだ。

    「お前の親父は死んだ。現王も落ち目だというのに、くだらん武人ごっこなんぞするからこういう目にあう。所詮は貴族の連れ汚しが。
     さあ、もうお前を守ってくれる奴はいないぞ。平民ごときが烏滸がましいんだよ。目障りだ!」
    「…死んだとは、どういう事ですか…?」
    「どういう事も何もない。第五騎士団は魔獣にボロ負けしたんだ。全員死んだんだよ。王の為の剣とは笑えるな。口先だけの負け犬集団よ。いい気味だ」
    「そんな………」

     信じられなかった。信じたく無かった。そして父に…国の為に戦った者へ向ける言葉遣いに腑が煮え繰りかえりそうになる。それが…そんなものが貴族の振る舞いなはずがない。少なくとも俺は父にそう教わった。

    「…………。アーシェ・ゾム・セスト…だったか。確かに噂通り面だけは良い。俺の愛妾になるなら情けをやらんでもない」
    「…………恥を知れ」
    「ならばお前には生きる価値もない。が、死人にその服は上等すぎる。全部はいでから殺してやれ」
    「…我が剣の師はレナルドルフ・シン・セスト。この剣をもって父を愚弄した事を後悔させてやる」

     俺は剣を取った。そして向かって来る者たちと戦った。父と暮らしたその家で。沢山の思い出が詰まった大切な場所で。

     一対複数だ。とてもスマートな身のこなしなど出来る訳もない。ある物を使い一撃でも多く敵に叩き込んだ。そうして血まみれになりながらも反吐が出るその貴族とやらに一太刀浴びせるも致命には至らなかった。そこで援軍が駆け付けて来たため、悔しながら俺はその地を後にした。




     その後、王都でクーデターが起きたのは逃亡を図るには返って良い方に転がった。貴族街はゴタゴタし、市民区でも慌ただしくなった。おかげで貧民街には兵士が来る余裕もなく、俺は父と第五騎士団。そして魔獣についての情報を集めつつリムブルムを去る事が出来た。

     心残りは皆が命を落とした地に花を手向けられなかった事だ。自分にかけられた追手の事を考えれば、そこに近付くのは自殺行為。いつか復讐を果たした後に改めて行こうと奥歯を噛み締めながら心に誓った。

     調べによると魔獣は大型の虎のように見えたと言う。騎士団と交戦のあったリエナ砦から西の森へと姿を消してからその後の消息は不明。
     俺がやるべきは魔獣の足取りを追いながら、父さえ敵わなかったという魔獣を倒す術を手に入れる事。その為には修行がてら路銀を稼げる冒険者になるのが分かりやすい。幸い冒険者の登録には身元を改められない。クエストを受けるに足る最低限の実力と登録手続きをする為の金が有れば良いのだ。シンプルで分かりやすく、そして身分を隠すには丁度良かった。

     登録に当たって変装も兼ねて装備を整えた。
     遠く異国の地で転々と旅する青の一族と呼ばれる一団がいると聞く。ふと、昔父から聞いた噂話を思い出した。滅んだ王朝の末裔だと言われているが真偽の程は定かではない。なんとなくそれを思い出して深い青の衣を首元に巻いてマントとした。これなら口元も隠せるし悪くない。

     冒険者ギルドでは旅の剣士シェゾ・クォンティーと名乗った。リムブルムの土地とは違う響きの名は、父が俺に貴族以外の道で生きる時の為にと付けてくれたのだ。父は知っていたのだ。自分が仕える王の時代は長くないと。だから貴族の血に縛られないお前は自分で生き方を選べるのだと、そう俺に言った。

     きっと、復讐に生きる事を父は喜ばないだろう。あの人はそういう人だ。だが、それでも…。俺は大切な人が笑われたままなのは嫌だ。この怒りと悲しみを抱えたままでは次になんて進めない。父さん。これが貴方の息子が選んだ道です。そして全てが終わったその時は、今度こそ貴方の望んだ道へと歩みましょう。それまでは…俺は復讐に身を焼く悪鬼となります。




     冒険者の仕事は、物によって癖はあれど存外難しい物では無かった。俺には剣の才があると聞いてはいたが、確かにそこらの奴には負ける事はないだろう。この容姿のせいで不埒な輩が度々沸くが、それも叩きのめせば良い。これでも自分が他より整った顔立ちなのは理解している。そのせいで孤児院から連れ去られ、そして貴族連中の一部からは下卑た目を向けられた。もっと父のように雄々しい顔立ちなら良かったのにと思った事もあるが、無いものは無いのだ。だからもうお行儀良くしなくて良い今の俺は、気に食わなければ黙らせれば良い。その点においては冒険者はとても楽だった。

     冒険者となって四年も経つとその殆どが俺への名指しの依頼になっていた。腕を買われての仕事なら良いが、顔を買われて呼ばれる事も多くうんざりしてしまった。気が付けばほどほど会話もしなくなった。まぁ、そもそも冒険者など物のついでにやっているようなものだ。依頼の傍ら魔獣の足取りを探すのが本来の目的だからな。

     この四年、魔獣らしい獣の目撃は無い。大型のモンスターは数いるが、冒険者の所にも討伐依頼が上がらないとするとそういった所に出没せずとも食料の確保出来る深い山林を寝床にしているか移動している可能性が高い。地図を広げて指でなぞる。リムブルムの西でそういった地形となるとある程度場所が限られて来るのだ。そして目ぼしい場所には今まで足を運んで調査も行った。さて、では次はどの辺りの調査をしようかと考えている所にその依頼は飛び込んで来た。

     大手バルト商会代表マセ・バルト氏の邸宅護衛任務。バルト商会と言えば二年前から鉱石の採掘で勢力を伸ばしている。そしてそのバルトの土地はリムブルムの西方、怪物が隠れるにはうってつけの森がある。ここは商会管理下にあって手が出せなかったエリアだ。この期にここを調査しようと決めた。




     呼び出しに応じてバルト邸に足を踏み入れる。すると他の冒険者が彷徨いているのが目に入った。どうやら依頼を受けたのは俺だけでは無いらしい。確かに屋敷の警備だ。複数いる方が効率的だろう。

    「シェゾ・クォンティー様ですね。お待ちしておりました」

     老年の執事が恭しく礼をして俺を案内すると言う。彼に従って導かれるまま足を進めた。しかし小綺麗な屋敷ではあるが、そこここの細かな装飾が華美過ぎて景観のバランスを崩しているのが嫌でも目に入る。なるほど成金趣味とはこういう事かと気が付いた。下品で好みではないな。胸焼け気味に窓の外へと視線を移す。

    「!」

     庭の噴水の側に一人の冒険者が佇んでいるのが見えた。俺は何故かその冒険者に目を奪われたのだ。黒髪、壮年と思われる男。中肉中背…いや、やや背は低いかもしれない。軽装具合からしておそらくレンジャーだろう。荒っぽい冒険者も多い中、やや物腰穏やかそうに見える。ただ、それだけ。特段気になるような事はない筈なのに、どういう訳かその男を目で追っていた。

    「…どうかなさいましたか?」
    「…………いや。他の冒険者が多いな」
    「はい。一般冒険者にも公募致しましたので。ですが特別にお招きしたのは蒼の剣士様お一人にございます」
    「そうか」
    「はい。さ、旦那様はこちらでございます」

     蒼の剣士。気付けばこのマントの色からそんな通り名が付いていた。俺の剣技は素早いからか、翻るマントがよく目に付くそうだ。正直どうでも良い。だが、おかげで金には困らない。好きに呼ばせておくさ。

     通された部屋に入る。主人の、私室か。応接室では無いのが気にかかったが、今はまぁいいとしよう。奥から巨漢の主人が顔を出した。

    「これはこれはクォンティー殿。お噂は予々」
    「期限は二ヶ月と聞いているが間違いないな?」
    「ええ。それで構いません。それどころか、もし当方を気に入って頂けるなら専属の用心棒になって頂く事も出来ますよ。一介の冒険者より良い給金をご用意する事をお約束します」
    「………考えておく。では仕事に入らせてもらおう。失礼する」

     踵を返して退室すると先程の執事が慌てて追いかけて来た。

    「ク…クォンティー様のお部屋をご案内させて頂きます」

     こういう使用人の姿を見ると少々居た堪れない気持ちになる。バルトの部屋を早々に出たのは、あれ以上あの男と一緒に居たくなかったの一言に尽きる。
     欲に肥えた体型はおいておくとしても、身に纏う装飾品の数々がただ金を持っている事を誇示するだけのものとしてあしらわれ気品さの欠片もない。何より俺を舐め回すように見る目付きはただの猿だ。エロ商人が。
     しかし主人がどうであろうと使用人は給金の為働かねばならない。あんな男の元では苦労も絶えんだろうに。

     自由に使っていいという部屋に着くと先ずは旅支度を解いた。そして装備を整え直す前に、軽く部屋を改める事とする。あの商人の事だ。妙な魔法罠が無いとも限らん。

     調べた所、ベッドの下とテーブルの裏、窓際にそれらしい魔法陣の施しが有ったので全て破って破棄する。大方、魔法で徐々に弱らせて俺を手篭めにでもする気だったのだろう。金があるとやり口が回りくどくてうんざりする。気分転換も兼ねて仕事に移る事にした。

     屋敷内を歩き回って構造と立地を把握する。すると玄関ホールでまたあの冒険者を見付けた。そして先程見た時より近いおかげか、その男が少々珍しい人種である事がわかった。

     黒髪に黒い瞳の組み合わせは見た事が無い。顔立ちもやや丸味を帯びているが、俺の知識の中にはそれに該当する国が思い当たらないのだ。若しくは秘境の少数部族なのかもしれない。その男には確かに目を引くような華やかさは無い。ともすれば地味に見える。だが何処かエキゾチックさのある外見をしていた。俺はそれに惹かれてあの男を見ていたのだろうか?

     二階の廊下からその男を見下ろす。黒髪の冒険者はどうやら玄関扉の造りが気になるのか錠の辺りなどをシゲシゲと見回していた。

    (何がしたいんだ? あの男)

     冒険者であるなら建具に興味があるという訳でも無いだろうが、意味がわからない。扉を破られる心配でもしているのだろうか? そんな大掛かりな物を持ち出すなら敷地に近付いた段階で分かるはずだ。では何か。考えていると後ろから声をかけられた。

    「へぇ。まさか蒼の剣士までこのクエストに参加してるとはね」

     見るとそこには無骨なハンドアックスを両腰に携えた女戦士がいた。様子からして同業者か。しかし俺はこの女に用は無い。直ぐに顔を背けた。

    「はは。本当に噂通りスカした奴だ。心配しなくてもあたしはアンタの追っかけじゃあないよ」
    「…………」

     確かに他の冒険者と組んだりギルドに足を運ぶと俺に取り入りたいという輩によく絡まれる。そういうのも全て合わせて面倒になり、基本的に会話はしないでいるのが常だ。そしてここもそれで終われば良かったが、女冒険者は俺の目線の先が気になったようだ。

    「ああ、アンタもアイツを見てたのか。ホント変な奴だよ。朝からああやってずっと屋敷中のドアだ窓だのの鍵見て回ってんの。笑っちゃう。攻めて来たら倒しゃ良いだけなのに」

     屋敷中と聞いて流石に驚いた。あの男は賊の侵入経路になるような所を洗い出しているのだと気が付いたからだ。ただ攻めて来るのであればいくらでも戦える者はいる。だからあえて暗殺の線での突破に備えているのだろう。これはその下準備か。思っていたより物の見える男なのかもしれない。興味が無かったらか知らないが、ひょっとしたら名の通った冒険者なのではないだろうか。

    「…奴の名を知っているか?」
    「確か…壊し屋クロノ。だったかな。仲間の一人が昔クエストで一緒したらしいが、行動だけじゃなく名前でも笑わせてくれるよ。あんなたいした獲物も持ってない奴に一体何が壊せんだか。仲間の話じゃ、キレたアイツにはウォーリアーの称号持ちも深傷を負って撤退したらしい。本物を見れば見るほど嘘っぽっく聞こえてくるよ」

     その女の言う通り、あの黒髪の冒険者は腰に括り付けた大型ナイフ以外に武器らしい武器が見当たらない。レンジャーならそれでもどうにかなるクエストは有るだろう。若しくはパーティーメンバーに恵まれていれば支援役として活躍も出来る。しかし頑強さに秀でているウォーリアークラスを負傷させ、剰え撤退させたとなるとどう考えてもナイフ一本でどうにかなるとは思えない。魔術師だと言うなら方法はあるが、魔術師特有の補助装具を付けているようにも見えない。

    (俺の知らない技術でも持っているのか…?)

     もしそうだとするならば、それは魔獣を倒すに至る技術だろうか。それを知る事が出来れば、俺の復讐は終わるのだろうか? それはただの可能性に過ぎないが、確認する価値は有ると感じた。

     そんな事を考えながらクロノという冒険者を見れば、玄関扉の確認が終わったらしい。立ち上がると何か考え込むように左手で口元を覆う。思案を巡らせているのか、覆ったまま人差し指だけがトントンと小さく動いた。

     クロノのそんな姿を見た俺は慌ててその場を移動する。

    「おや。行っちまうのか」

     後ろでそんな声が聞こえたが振り返りはしない。足速に仮の自室へと入ると後ろ手に忙しなくドアを閉めた。

     そのままドアに背を預けると、堪えきれず俯いて両手で顔を覆った。俺が…この俺が。…自分がこんな些細な事で狼狽えるなんてと思う反面、それだけに足る理由なのだとどこかで納得する。そうだ。俺は今、動揺している。

     俺は気付いてしまったのだ。

     何故クロノを目で追っていたのか。唐突に理解した。
     ああ、そうだ。あの考え込む仕草。忘れもしない。右手を腰に当てながら左手で口を覆う姿を俺は過去何度も見たのだから。

     顔を覆っていた手で髪を掻き上げ、窓の外を見る。

     俺がクロノに反応した理由。考え込む時にするあの左手の癖は父レナルドルフにもあった。クロノは父さんに似ているんだ。外見は全然違うのに、纏う雰囲気がどこかあの人を想わせる。もうこの世にはいない想い人の面影を俺は追いかけていたんだ。

    「……………」

     溜め息を吐いた。どんなに似ていようともクロノは父ではない。俺にとって一番大切な人はもう四年も前に死んだのだ。あまりにも女々しいな。俺は。いくら望んだ所で、あの人が俺に触れる事は二度と無いというのに…。

     復讐の怒りでこの恋心を塗り潰してしまったつもりでいたのに、あの同業者のせいでそれが出来ていない自分に気が付かされてしまった。報われぬ恋など辛いだけなのに。この世にすらいないなんて、寂しささえ埋める事も出来無い。恨むぞ、クロノ。これはあんまりだ。

     それから俺はクロノを避けるようにした。もうあの男を通して父の影を追いたくない。ただ虚しいだけの自分でいたくないから。俺はその父の為に復讐すると誓ったのだから。そうだ。この地で俺は成すべき事がある。見知らぬ冒険者にうつつを抜かしている暇など無いのだ。そもそもあの男が本当に強いのかも定かでは無い。それについては女冒険者の話が嘘ではないと分かってから調べても遅くは無いのだから。

     そんな風に決めて仕事へと戻る事にした。



     そう決めた矢先の事だった。俺がクロノに唇を奪われたのは。

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