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    天野叢雲

    @onitakemusya
    だいたい出来心

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    天野叢雲

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    興が乗ったので2話目。状況はちっとも好転しないね。今の所カプ要素ほぼ無いですが、一応は花嫁×獣憑きです。美形×平凡で年下攻めのおっさん受け。まぁ、このおっさんまだ40手前の見た目ですがね。

    #創作BL
    creationOfBl
    #魔獣の花嫁
    brideOfTheHexenbiest

    魔獣の花嫁 #2「壊し屋と剣士」 魔獣が人間に恋をする。おとぎ話ならありそうな話ではある。しかしそういう話ってのは、大体が悲恋で終わるものだ。

     昔、一目惚れとは遺伝子が適正の相手を見付けたシグナルだとかそういった説を耳にした事があるが、この場合はそれの真逆に当たる。そもそも異種間では寿命が違うのだから添い遂げることが出来ない。必ずどちらかが先に死ぬし、生物として子孫を残せない。いや、ファンタジーならハーフ種として確立する場合もあるが、この異世界ではどれほどが可能なのだろうか。少なくとも男同士では無理だろう。でなければ性別が男女に分かれている意味がない。

     おそらくだがこの老衰した魔獣は、大昔に人間に恋をした。そこまでは良い。長い長い年月を経て、今生きているのはその魔獣に好かれた人間の末裔だろう。若しくは、偶然にも物凄〜く似ているだけ。当人はきっと骨すら残って無いだろう。で、問題はここからだ。魔獣の性別が雌雄どちらだったか俺は知らん。俺の男としての機能が今までなんの問題も無かったからてっきりオスだと思っていたが、まぁそれは置いておこう。兎に角コイツは男であり人間である俺に取り憑いた。そして、この魔獣が今この世界で再会を果たした想い人のそっくりさんだか末裔だかも男だった。


     結果として、俺は出会い頭の男に唐突にキスし、その相手に殺されそうになっている。


     目の前の野郎からすれば俺は変態以外の何者でもないので報復を受けるのは分からんでもないが、俺からしたら俺だって被害者なのだ。いくらイケメンだろうと同じ男にトキメキなんて覚えたくなかったし、こんなのとキスして気持ちいいとか思いたくも無かった。魔獣の恋心のせいで俺の感覚が狂わされているんだ。正直、こいつの匂いさえいい匂いに感じてる自分がショックでならない。辛いし泣きたい。
     ずっとただ会いたいという感覚はあったが、まさかそれが恋心からっだったなんてこいつとキスするまで知らなかった。こんな事なら苦労して探さなければ良かった。

     そしてもういっちょ辛いのは、変態のまま死んでしまいそうなこの状況だ。そんな不名誉な勘違いをされたまま死ぬとかただの拷問だ。あんまりだ。もしこれが神の思し召だというなら、俺はその神様とやらの親でも殺したのだろうか?どれだけ恨まれたらこんな状況になるんだ。教えて欲しい。

     しかし残念な事に俺がやってしまったという事実は揺るがない。ここでレア過ぎる魔獣の話をしたとて、言い訳に宇宙人にやらされたと言い出す精神異常者のような扱いをされるのがオチだ。なんて説明したら信じてもらえるのか見当も付かないのだから、どういうつもりだと聞かれても寧ろ俺が聞きたい。

     俺が答え兼ねていると、とうとう痺れを切らしたのか向こうが口を開いた。

    「壊し屋クロノ。今回は一応同じ仕事を請け負った同業者として斬らずに様子を見たが、その必要も無かったようだ。目障りだ。死ね」

     蒼の剣士シェゾ・クォンティー。この後に及んで彼が俺の名前と顔を把握していた事に少しばかり嬉しさを覚える。俺の名も売れたもんだ。まぁ、あまり良い通り名とは言えないがな。

     シェゾの剣の切っ先は、ぐるりと水平に彼の後方へと軌跡を描いた。その速さ、身のこなしは流石は噂に登るほどの剣士だ。鮮やかに体勢を切り替えて背後に近寄る賊を斬り捨てた。

    「ぐぁっ!」

     闇に紛れる為だろう。黒衣装を身に纏った男が濁った声を漏らして崩れ落ちる。軽装だし音を忍ばせる腕前から暗殺者ってとこかな。依頼主の商人を狙ってやってきたんだろう。流石は大金出して冒険者を傭兵に雇うだけある。随分恨みを買ってるらしい。
     綺麗な床に暗殺者から流れる黒い液体が広がって行く。腹を斬られたようだ。なるほどこれはもう動けない。

    「お見事」
    「…………いつから敵の侵入に気付いていた?」
    「ん?」
    「俺にくだらん目配せをして来ただろう。知らせる為に。いつからだ?」
    「あ〜…………キスする前、かな」

     バツが悪そうにそう答えると、シェゾは舌打ちをする。そう、俺は気が付いていた。そしてこの剣士が俺の合図を理解した事も。だから剣を突きつけられた状態であんなに悠長に構えていられたんだ。まぁ、この剣士が俺を斬らない保証なんて何処にも無いんだがな。

    「奇襲を知らせるならもっと他の手を使え。ああいうふざけた事をするなら、次は構わず斬る」
    「まぁ、俺もそうしたいね」

     俺は立ち上がりながら頷いた。シェゾにキスしたのは魔獣が暴走したせいだし、自分に対してショックを受けたのも間違いないのだが、一番最初に彼に近付いた理由はこの奇襲を知らせる為だった。侵入の音は忍ばせられても俺の鼻は誤魔化せない。本当だったら普通に知らせてそのまま一緒に応戦するつもりだったのだ。……本当に、魔獣さえ暴走しないでいてくれたならな。

     気を取り直して腰に挿していた円柱の棒を取り出す。それを両手でグッと握り込むと棒に仕込んでもらった呪術が発動して1メートル20センチ程度に伸びた。全く術とは便利なものだ。それを握り直して半歩右足を出し、本手に構える。暗殺者は一人では無いのだ。

    「魔法の杖か?」

     シェゾが剣を構え、敵の襲撃に備えたまま声だけをこちらに投げてきた。俺も同じく言葉だけを返す。

    「いや、杖〈じょう〉だな。打撃武器。魔法も使えたら良かったんだけど」
    「…………………」

     シェゾが何を言わんとしているのかは想像がつく。『壊し屋』なんて危なそうな通り名のくせに、俺の体付きは多少確りしてるものの所詮は東洋人。欧米のゴリマッチョには絶対になれない。しかも取り出した武器が細っこい棒とくりゃ詐欺って言葉が嫌でも頭に浮かぶ。

     だって仕方が無いだろう。悪党を捕まえるのは警察のお仕事。警備員はけして戦う生き物では無いのだ。制服を着ているだけの一般人。仕事で触れる武器らしい武器なんて法律で認められている一部護身用具だけなのだ。この棒、警戒杖だって呪術が仕込んである以外はただの護身用具だ。更に付け加えるなら、銃砲刀剣類所持法違反なんてもんがあるおかげで現代日本人は他人に武器を向ける事に慣れてない。枝や魚、モンスターには迷いなく腰の大型ナイフを振り回せるが、対人戦となるとどうにも刃物は気が引けてしまうのだ。
     まぁ一応弁解させてもらうと、一見幟旗の棒部分のような頼りない警戒杖だが、日本では古武術に杖道なんてものがあるし警察もそれを取り入れている。ただ、ドが付く程マイナーなだけだ。その道の武芸者か警察と警備員くらいしか扱った事なさそうだが、本当にある。と言っても、俺も警備の検定を取ろうとするまで触った事無かったけどな。そして当然その扱い方も今やほぼ我流になってるんだが、もうそれは致し方ないだろう。日本にはモンスターも魔法も無かったのだから。

    「!」

     途端、天井の暗闇の中から敵の刃物が俺を目がけて降ってくる。それをバックステップで避けると手を返して杖に遠心力を乗せ、暗殺者の肩口に打ち込む。鎖骨が折れる手応えがあった。貧弱そうな杖だが、仕込んである呪術は伸縮だけじゃない。これは俺の生命力を吸って硬度を増す呪物だ。獣憑きでもなけりゃ握ってるだけで立てなくなるような危険な代物。そして悪いが今はオルハリコン並みに硬い凶器になっている。

     しかし相手もプロだ。やられながらも後方に下がって距離を取る。それで一度仕切り直しになるはずだった。だったが、残念ながらそれは普通の相手なら、だ。魔獣の力か宿った俺ならそのスピードについて行ける。暗殺者を追いかけてまたもや杖の一撃を今度は顔面にぶち込んでやった。

    「がっ…ぁ」

     そのまま地面に叩きつければさしもの暗殺者も暫く起き上がれないだろう。奴さんの頭が床に衝突した際、勢い余って床タイルが割れて一部捲れ上がった。
     すまんな敵さん。こんな形してるが、俺は人間相手に力と速さではそうそう負けないんだわ。おかげで荒事も随分慣れちまったしな。自分で言うのもなんだが、熊かなんかと闘ってると思ってもらった方が近いんじゃねーかな。

     杖を納めて振り返ると、シェゾは既に剣を鞘に収めていた。確かにここにはこいつら二人しか入り込んでいないようだ。他に音も臭いもしない。彼もそれに気が付いたのだろう。武装解除と言った所か。そして最後の一人を俺が相手してたからかこっちの戦いぶりを確り見ていたようだ。なんとも言えない視線を投げかけてくる。
     ……いや、うん。よくそういう顔をされるんだよな。俺は物腰とか見た目がなんの変哲もないこんなんだから、そのパワーとのギャップに大体の奴がビビるんだ。こいつホントはヤベーのだったって顔される。まぁ、いつもの事だ。ちょっと寂しいが…。すまんって気持ちになる。

    「…え〜、と。ほら、あれだ。他のトコも襲撃受けてないか確認しないとな」

     流石にちょっと気不味くて辺りを見回してそんな事を言ってみる。するとシェゾから短く了承の声が返ってきた。その声が思ったより大丈夫そうで、何故かこっちが安心する。

     いやぁ、俺の力って噂の剣士さんでも引くレベルなんだな。まぁ、人だと思ってたら熊でした、だもんな。でも魔法だって熊レベルの威力は出せるだろう。そういう意味では魔術師や呪術師の方がずっとヤバいんじゃないかと思うんだがなぁ。やっぱり見た目なのか?俺がもっと武闘家みたいな成りしてれば良かったのかもしれない。
     今の俺の装備ときたら、体の丈夫さに甘えて防御力低めのレンジャーのような出立になっている。鎧の重さは平気なんだが、どうしても動き回るのに邪魔で仕方ないんだよなぁ。そして武闘家程マッチョでもないから、なんというか…ああいう剥き出しの装備は余計に貧相に見えるというか…。機能性やなんやを加味した結果、今の装備に落ち着いた訳でこれを変えるのもどうかと思う。
     結局、初対面の奴と共闘すると毎度ビビられてしまう。もうこれはどうしよもない。

     さて、いつまでもここでのんびり立ち話もしていられない。暗殺者の内一人はまだ息があるし、死体もこのままにしておけない。何より依頼主の安全確認と報告をしなくては。では何から始めようかと彼に聞くべく振り返る。そして見てしまった。

     シェゾに斬られ死んだと思っていた暗殺者が、最期の力を振り絞ってナイフを投げたのを。

    「‼︎」

     完全に不意を突かれたシェゾは剣を抜く事も出来ず、ギリギリで飛んできたナイフを避けるのが精一杯。刃は彼の脇腹を掠めて壁に突き刺さった。

    「ッ……」

     賊はもう動いていない。それきりで死んだのだろう。しかしシェゾの腹に血が滲んだのが見えて一気に体の自由が利かなくなった。


     ──ドクン──


     血の臭いがする。シェゾの血の臭い。不味い、これは不味い。この湧き上がってくる感覚。また魔獣が暴れ出す。さっき勝手にキスした時のような可愛いもんじゃない。辺りを一切合切壊しまくって、気が晴れるまで自分を止まられなくなる。人も物も見境なく、ただの猛獣になってしまう。こうなったら俺にはもう止められない。


     ──ドクン──


    「シェ…ゾ………に、げろ。殺しち……ま、ぅ…」
    「…クロノ。今度はどうし…」


    『グオオオオオ!』


     俺から獣の雄叫びが上がる。完全に体の主導権を奪われた。その証拠に黒い呪いが枝のように体に巻きついているのが可視化してしまってる。魔獣の力が強すぎるんだ。理性など無い狂戦士、バーサーカー。こうなってしまった時の俺はただの無力な傍観者。意識はあれど見ている事しか出来無い。目を背ける事さえ許されない最悪の時間。

     魔獣は俺の体で怒りを露わにする。先ずはまだ息のある俺がのした暗殺者の頭を踏み潰した。床タイルが割れて更に崩れて行く。ただの獣になった俺は何度も何度もその頭だった所を踏む。念入りに。そして次はナイフを投げたあの暗殺者だ。もう死体でしかないその体に跨り拳を振り下ろす。叩いて叩いて、引き千切って。廊下を破損しよと血が辺りに飛び散ろうと関係ない。それでも止めようとはしないのだ。それをただの肉塊に変え、どれが何とも分からなくなる。

    (もう、止めろ……。止まってくれ)

     今まで何度そう願い叫んでも、俺の体は指先ひとつ反応しない。わかってる。そんな事。
     まただ…。バーサクして人を殺すのはこれで何人目だ。チクショウ…。自分の意志で戦って死ぬなら、ここはそういう世界だ。好き嫌いを別にしていい加減慣れた。でも違う。魔獣の殺し方は、ただ壊す為だけに殺す。食う為ですらない。こんな一方的な虐殺をどうして馴れられる? 全て魔獣のせいだと言うのは簡単だ。でもそれは俺の体で、手に…その感覚が残ってる…。そして願ってしまいそうになる。誰か、俺を殺してくれと。

    「止めろ…クロノ。それはもう、とっくに死んでいる」
    『…………………』

    (……え?)

     気が付けば、俺の背後にシェゾがいた。いや、逃げろって言ったはずだ。言ってなくても普通逃げるだろ、こんな状態見たら。なんで逃げてないんだよ。お前俺の噂知ってるんだろうが。 “壊し屋クロノ。一度我を失ったら何もかも壊して殺す壊し屋” それが俺の通り名だ。確かにお前は強いかもしれないが危険を侵して止める必要なんて無いはずだ。こっちは出来れば誰も殺したくないんだよ。分かれよ!

     魔獣がシェゾを見付けてゆっくりと向かい合う。蒼の剣士は此方に剣を向けているがまだ間合いの外だ。

     刹那。シェゾが動いた。斬りかかろうろと剣の切っ先が踊る。そう、それはまさに踊っているかのように軽やかに、そして華やかに見えた。素早い剣舞。それが彼の剣技だった。だが魔獣も速かった。数撃いなして避け、そして大上段へと振り上げられた彼の腕を叩き落とした。

     カラリと音を立てて剣は吹き飛ぶ。

     しかし剣士の闘気は消えておらず、空かさず回し蹴りを叩き込んでくる。鞭のようにしなるその蹴りを俺の体は肩で受け止めた。なかなかな衝撃だったが魔獣は怯まない。そのままタックルをしてシェゾを押し倒した。


     俺の体が、倒れた剣士の上に乗り上げて彼の自由を奪う。危険を感じたシェゾも抜け出そう、攻撃しようともがくが体勢の崩れた力ではこの魔獣はどうにもならない。

    (殺すのか? 俺はとうとう同業者まで手にかけるのか? お前、こいつに惚れてんだろ⁉︎ 頼むから…もう止めてくれっ)

     シェゾの冷えた青色の瞳が此方を睨んだ。その視線に胸を抉られる。
     魔獣は構わず彼の血のついた脇腹の布を乱暴に引き裂いた。白い肌とナイフで切られた傷が露わになる。するとそこに顔を寄せると傷から漂う血の臭いを嗅ぎ始めた。何が目的なのか分からず一瞬頭がついていかない。途端、ぐわりと口を開けた。

    (まさか、喰うつもりか⁉︎)


     ──ぺチャリ──


     魔獣は、その傷口を舐めた。

    「ッ………」

     何度もそこに舌を這わせて丹念に舐める。口の中に血の味が広がっている。シェゾの血の味と臭い。そして肌が近いせいで彼自身の匂いも濃い。俺は一体何をしているんだ? 傷口を俺の唾液まみれにして漸く魔獣は顔を上げる。と思ったら次はシェゾを抱きしめたのだ。力で潰さないように優しく、けれど離さないように確りと。縋り付くように額を彼の肩口に擦り付ける。

    「……まさか、俺を心配して暴れたのか…?」

     その可能性に思い当たったシェゾの声には信じられないといった音が含まれていた。そしてもう俺の腕の中で暴れる様子もなかった。正直、俺自身も信じられない。今まで疲れ果てて倒れるまで止まらなかった魔獣が、シェゾに触れているだけでこんなにも大人しくなるなんて。そして今、遠かった体の感覚も少しずつ戻ってくる。体の呪いの枝が、消えて行く。

     それに気が付いたシェゾが動き出したので、まだ完全に戻り切ってない感覚のまま無理やり声を出す。

    「まっ…て、くれ………。も、少し…だけ………完全に…魔獣が、落ち着くまで………」
    「!」
    「……このまま、で…いさせてくれ………」

     俺の声を聞いてシェゾが動きを止めた。有難い。このまま確り体の感覚が戻るのを待とう。魔獣が誰かを好きになるとはこういう事なのか。シェゾの匂いが悔しいくらいに落ち着く。そして思い知らされる。俺にはこの男が必要なんだと。俺の中にいる魔獣をこんな風に止められるのはシェゾしかいない。彼がいてくれれば、俺はもう無駄な惨劇を繰り返さなくて良くなるかもしれない。

     そんな事を思った矢先だ。俺の胴にシェゾの靴裏がメリ込み、蹴り込まれた俺の体は後方に吹っ飛ばされた。

    「ぅぐっ…」

     蹴りは確りと鳩尾に入っていた。こっちは完全に脱力してたもんで、モロに食らって息が辛い。いくらなんでもいきなり過ぎる。さっきまで大人しかっただろうと言いたいが、流石に直ぐには声も出せない。

     そうこうしている内に俺に蹴りをくれやがった剣士は廊下に転がる剣を拾っていたらしい。切っ先が俺の眉間にピタリと当たる。あれ? この光景、なんか見覚えあるぞ。だってほら、シェゾがキレている。

    「…何故、貴様の口から魔獣などという言葉が出てくる…? 言え! 貴様の知っている全てを。場合によっては、ここで貴様を…殺してやる……ッ」

     構図も状況もそっくりなのに、前回剣を突き付けられた時と一つだけ大きく違う。目の前の男、シェゾの声には怒りと憎悪があった。冷えたブルーの瞳が本気だと伝えて来る。彼に何があったのか俺は知らない。だが、蒼の剣士シェゾ・クォンティーは魔獣を…若しくはそれに連なる何かを恨んでいる。それだけははっきり分かった。

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