稽古後に、外の水道で二人して顔を洗いタオルで拭いていると、良守の爪がひっかかってツーっと糸が出てしまった。
「ありゃ、爪が割れちゃってる」
良守の左人差し指の爪がかけてしまっていて、そこにタオルの繊維がひっかかったようで、正守の目の前に出して見せてくる。
「たぶんさっきぶつけた時かな」
このタオル父さんに見つかったら怒られるかなぁなんてのんきなことを言っている。
「ちゃんと爪切っとけよ」
「うーん、そろそろ切らなきゃなとは思ってたんだけど、父さん忙しそうで」
「なんで、父さん忙しそうだと爪切らないんだよ?」
「え?だって切ってって言いづらいじゃん」
「え?」
「え?」
話がかみ合っておらずお互い疑問符を飛ばしていたが、正守はふと思いついた。
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