「“祝福の子”カカワーシャ、君に誓おう。もし僕達のどちらかでも人間として終わりを迎えた時。互いを食い合い、果てよう。」
「ははっ、それって大損失なんじゃない?」
「君が人間でなくなれば、僕も日常への寄る辺を失いジャームとなる。その後の損害を考えれば些細なことだ。」
「教授…それって…。」
「君を愛している。君のいない日常に戻れない程に。」
「あはは…僕もだよ、ベリタス。君のことを絶対手放したくない。あっ、でも君を絶望させた世界には復讐したくなるかも。」
あの時、そんな熱烈な告白をされたっケ。
だから、僕タチは今。
「あははははははっ!ムダだよ!君の策謀も、運も!すべて僕タチが喰らい尽くした!君タチが望んだ通りにネ!」
僕タチは『同族喰らい』として、世界に望まれるままの影絵芝居を演じてやっているんだ。世界にはとことん付き合ってもらわないと困る。
「互いに命を賭けたギャンブル!その勝者は、僕タチダ!死んでくれ、████!!」
「…知識は、尺度……誤謬を、粉砕する。」
彼の甘やかな囁きに自然と頬が緩む。
ああ、この身がジャームに堕ちても彼と生きているんだと感じる。紛れもない幸福がここにある。
「へへっ、ただいマ。」
ちょっと埃にまみれた体をぎゅっと抱きしめてもらって、彼の匂いを堪能する。ああ、今日も彼と一緒にいる。
同族喰らいのウロボロス。
一部の事実を誇張したとんでもない誤謬によるいわれのない誹謗中傷。
ほんの偶然でウロボロスシンドロームに目覚めてしまった僕も彼も紛れもない被害者だった。
そんな世界である日彼は絶望し、日常への寄る辺だった彼を喪った僕もジャームに堕ちた。
僕タチを追いかけてきたヤツは全部潰して、僕タチを悪く言ったヤツもみんな潰して、今日も僕タチは一緒にいる。
彼の優秀なアタマはまだまだいろんなことを考えているらしいけど、中身までは知らナイ。もしかして正気の取り戻し方…なんてね。ジャーム化は不可逆だって他ならぬ彼が言っていたコトなんだし。
あっ、そういえば。公にはまだ「Dr.レイシオ」は生きているらしいヨ。彼、論文は出してるんだって。すごいよね。