無題明日も早いしもう寝ようか。そんな会話をしながら寝具に入ったのは、23時を過ぎた頃だった。
しばらく静かな空気が流れていた。オレはベッドの中で目を閉じ、明日の仕事のことや今日あった出来事を思い返していた。
そのとき、突然ヒロトがぽつりと口を開いた。
「…緑川がどこかに行ってしまうのが怖い。」
その声には、いつものヒロトらしさはなく、不安と切なさがこもっていた。
突然の発言に少し驚きながらも、ヒロトの中で何かあったことを察した。
オレがどこかに行ってしまうのが怖いだなんて…
ふらっとどこかに行ってしまいそうなのはヒロトじゃないか。
こんな風に弱気になっているヒロトは珍しい。
でも、オレは知っている。
どんなに完璧に見えても、その内は想像もつかないほど悩んでいる事があるということを。
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