智藤♀君が甘いものはあんまり、というのは、なぜか本人からじゃなく彼の双子の兄弟から聞いていた。
「甘いものというか、添加物があんまり、というか」
「ね、ね、意味わかんないでしょ?まあ智将の分は俺が引き受けるから、葵ちゃんも安心して」
「は、は?それこそ意味わかんないだろ主人、勝手に横から奪い取るな」
たしかに、要がぼりぼりぼりぼり食ってる毎日のおやつも、彼が手をつけているところは見たことがない。けどまあ、俺の作る弁当は特に文句もなく食べてくれるんだけどな。なんて、空っぽになった本日のお弁当箱を眺めながらニヤつく。
だから、2月14日も別に全然心配してなかった。
「智将、中学のときも断りまくってたよ」って言質は取れてるし、断りきれなかったとしても要行きだろう。
だから、偶然告白のタイミングドンピシャに通りかかってしまっても大丈夫。
「悪い、甘いものは食べないんだ」ってアイツはサラッと流してくれるはず。
「悪い、彼女からしか受け取らないんだ」
予想外のセリフに、そこでハッと息を吐く。知らず知らずのうちに、呼吸を止めていた。
2月だというのにほっぺたが暑くって、何度も撫でた。
どうがんばっても口元が上がってきてしまって、クッと唇を噛み締める。
まるで告白する前みたいに吸って、吐いてを繰り返して、妙にドキドキ彼に近づく。
「よう。彼女からのバレンタインあるけど、いる?」
たぶんだけど、貰う君よりうれしそうな顔、してる。