しきざき草むしりさえご自身でやってもらえれば、室内はこちらで清掃しますよ。
なんて、甘い言葉に騙されたのが悪かった。
「はあ、疲れた……」、朝から開始した新居クリーニング大作戦は午前中をゆうにぶっ潰し、太陽はとっくにてっぺんを過ぎている。
大学からほど近くにある、長年空き家になっている一軒家。格安で貸し出してやるという口約束につられてホイホイやって来てしまったが、さすがに誰か巻き添えにしてくるべきだった。
ふう、とペットボトルのフタを閉めながら、庭を眺める。玄関から縁側、ガスや室外機周りといった住み心地に直結しそうな部分は大体終わらせた。まあ、普通に住む分にはもう問題ないだろう。
あと気になるのは、と庭の隅に目を向ける。背の高い雑草に隠れるように埋まっていた小さな祠。神社のような小さな鳥居もついているそこは、一般家庭の片隅にあるにしてはやや豪華な造りをしている気もする。
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