王女異世界旅行記 Ⅳ「…もう朝ですの…?」
まるで地面で寝ているかのような硬い感触のまま、寝たような気分にはなれずに朝を迎えてしまった。
「朝だぞ、起き……てるな。」
河合さんが灰色の紙束を片手に持ちながら、引き戸をガラッと開けてくる。直接日の光が入ってくるわけではないけれど、朝日が眩しく感じてしまう。
あまり寝た気はしなさそうだなと言われながら、湯呑みというものを渡される。透明感のある飲み物を一口だけ口に含んでみると、驚く事に味が何もしなかった。
「あの…こちらのお飲み物は…?」
「白湯だ。寝起きに丁度いいだろう。」
白湯を飲みつつ、外出の準備を始める。初めて着る和服も、着方が分からずにすぐはだけてしまう。埒が明かないので、河合さんが洗濯してくれた私の服を、即刻乾かして着ることにした。折角貸してくれたから少し申し訳ない気持ちもあるけれど、致し方ないことだから…。
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