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    雨音🌟

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    雨音🌟

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    ⚠️キャラクター捏造注意⚠️
    未来の話。“彼女”から見た眞鍋瑚太郎。

    ホットサマーアンドモーニンググローリー「お母さん、行ってきます!」
    「いってらしゃい。暑いから気を付けるのよ」
    「大丈夫!」
     心配症なお母さんの言葉に応えて、私は家を出た。途端に、痛いくらいの日差しが目や肌に突き刺さってくる。
     暑い。
     ほんの少し、くらり……とした感覚がして、慌てて日傘を刺す。
     今年の夏は、例年にない暑さだって、確かニュースで言っていた。
     子どもの頃も夏は当たり前みたいに暑かったけれど、だんだんと、暑くなってきてる気がする。
     嫌だなぁ……暑いの嫌いだなぁ。
     塾なんか行かないで、クーラーの効いた涼しい部屋で、ゲームしたり冷たいものを飲んだりしていたい。
     でも、そうも言ってられないな……
    「暑い………」
     諦めて歩き出したけれど、ふと、目の端に紫色の花が見えて、私は足を止めた。
     お隣のお家。
     庭の窓の近くに置いてある、緑のプラスチックの植木鉢。
     中の土に突き立てられた棒と、それに絡まる緑のツル。
     咲き誇る、丸い、大きな、紫色の花。
     朝顔。
     たぶん、隣のお家の、小学生の子が学校から持って帰ったものだと思う。
     私も、朝顔を育てていた。小学生の頃、学校の課題で。
     とても、綺麗に咲いた。
     たぶん、クラスで一番綺麗だった。
     だって………
    「先生が、そう言ってくれたもんね」
     くすり、と、小さく笑う。
     けれど同時に、少しだけ、ちくりと胸が痛くなった。
     朝顔を見る度、思い出す人。
     小学校の頃、大好きだった先生。
     うさぎのサスペンダーが可愛かったな、て、思い出す度に思う。
    「……せんせい」
     あの頃、お母さんが、少しだけ怖かったことがある。
     誰にも相談できなかったけれど……私を見る目が冷たくて。
     たくさん勉強してもテストの点数か上がらない私を、時々ビックリするくらい冷たい目で見てた。
     そんなお母さんは、夜に派手な化粧でお出掛けして、朝まで帰ってこなかったこともある。
     あの頃は、子どもだから分からなかったけれど……今なら、あの頃のお母さんが何をしていたか、なんとなく想像できた。
     なんで、お父さんがあんなに怒っていたのかも。
     でも……
    「ね、先生」
     ある日。お母さんが、怪我をしていた。
     階段から落ちた、て、言ってたけど……たぶん、違う。
    「私、知ってるんだよ?」
     あの日、お母さんが学校に来てたこと。
     怒っていることがわかったから、近付けなくて……廊下の端っこから、お母さんと先生が応接室に入って行くのを見てた。
     何を話しているのかなんか、分からなかったけれど……お母さんが、何か、先生に怒鳴っているのはうっすらとだけどわかってた。
     そんなお母さんが、本当に怖くて……怒鳴られてる先生が心配になって。でも、身体が動かなくて。
     そうやって震えてたら……大きな音がたくさん聞こてきて、また驚いた。
     怖くて怖くて、私は何も見てない!! て、そう思うしかなくて。くるって背中向けて、そのまま、お家に帰ってきた。
     ただ。
     帰る時、一言だけ、聞こえた。先生の声。
     
    「美斗さんが育てたアサガオは、クラスで一番立派に咲いたんですよ?」
     
     今思い出して考えても、なんでこの声だけ? て、不思議で。
     だからもしかしたら、気のせいかな? とか。記憶を作ってるだけかもしれない、て、思うことだってある。
     でも……きっと、先生は褒めてくれていたんだ。
     だって、その日から、お母さんはまた優しくなったから。
     夜に出かけるのもやめて、テストの点数も褒めてくれて。朝顔も「綺麗ね」て、言ってくれたから。
    「……あ。大変!」
     朝顔を見て懐かしくなったから……思ったより、ゆっくりしてしまった。
     急がないと、電車に乗り遅れちゃう。
     パタパタと駅に向かって駆け出して。けれど朝顔が、頭の隅っこで、ずっと咲いていて。
    「ね、先生」
     先生。
     眞鍋先生。
     眞鍋コタロー先生。
     私、知ってるよ。
     お母さんが優しくなったのも、私をまた愛してくれるようになったのも、先生のお陰でしょ?
     あの頃……今日みたいに暑い夏の日。突然、先生は居なくなってしまったけれど。
     行方不明、て、大人たちは言ってた。
     根拠なんて無かったけれど……何も分からなかったけれど、「もう会えない」て、それだけは、なんとなく分かってた。
     コタロー先生。
     先生は、私の、ヒーローだった。
     今私、教育大学を目指してるんだよ。いつか、私も先生になる。
     先生みたいになれるか分からないけれど……子どもたちを笑顔にできる先生になれたらいいな、て、思ってる。
     あの時の、先生みたいに。
     
    「コタロー先生」
     
     あの時、子どもの私を、たくさん褒めてくれてありがとう。
     今でも、先生のことが大好きです。

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