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    鴨緑

    @gatoyosee

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    鴨緑

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    去年のうぇぶおんりのアオ主の読み物
    アオガミと少年が動画配信サービスで映画見る話

    レイトショー アオガミとの同棲生活が始まってから習慣になっている事がある。映画鑑賞だ。アオガミにはもっといろんな事を知ってほしい。アオガミが守るべき人間がどのような存在なのか、良いも悪いも知るべきだし、東京の他にも世界にはたくさん楽しいものがある。美しい景色もある。歴史がある。それを手っ取り早く知ってもらう為に思いついたのが映画鑑賞だった。
     正直、アオガミと出会う前はもっぱら読書だけで映画なんてあまり見ない方だった。自分にとっても世界が広がる良い習慣になったし、何より見終わった後、眠くなるまで感想を言い合うのは楽しいものだった。
    「今日はどれを観よう?」
     ベッドのふちを背もたれにして、タブレットの画面を二人で覗く。
    「少年、実は私が見てみたい作品をリストアップしたのだが、今夜はそれでも良いだろうか?」
    「いいね、見よ見よ」
     そうして、オンデマンドのリストを確認する。普段は自分から提案するのだが、アオガミからの提案は珍しく、どんな作品を観たいんだろうと内心ワクワクした。
     
     『恐怖!その名はマタン吾郎』
     『大体30000人ちょい』
     『エイトヘッドシャーク』
     『砂漠の大戦争』
     
     どうしよう。思わず頭を抱えた。
     アオガミがチョイスした4作品は映画について詳しくない自分が見てもあからさまに分かるぐらい怪しい作品だった。作品紹介から画像を見て更に不安になってきた。唯一、パロディ映画と思われる作品は元になった映画を観た事がない為、今回は除外した。今度ちゃんと本家の方を見よう。そうしてアオガミの提案から泣く泣く消去法で決めた結果、
    「…今夜は『砂漠の大戦争』にしよう」
    「了解。今回はどの様な作品なのだろうか…」
    「ソウダネ。ところで、なんでコレ観たいと思ったの?」
    「今まで視聴してきた映画を分析し、まだ未視聴のジャンルを解析した結果、B級映画、パロディ映画、サメ映画、クソ映画が出た」
    「うそぉ…」
     信じられない。このラインナップ全て、無知からでの選択ではなく、分かってての選択に驚きが隠せなかった。アオガミ、正気か?
    「アオガミ……正気か?」
    「正気だ、少年。私は何故、映画と言う素晴らしい映像作品がクソと呼ばれなくてはならないのか、その理由を知りたい」
     何ともアオガミらしい理由だった。そう言えば、今まで見てきた作品はどれも名作と呼ばれたオススメ作品を適当に選んだ物だった。どれも名作と呼ばれて当然の傑作だった為、まだクソ映画と呼ばれる負の名作を鑑賞をした事がなかったのだ。何なら自分も見た事がない。これは、アオガミにとっても自分にとっても知見が広がる良い機会なのでは?さぁ、飲み物もお菓子も用意した。準備は万端だ。どこからでも掛かって来い。
    「じゃあ…再生するぞ…」
     地獄の90分の始まりだった。
     
     端的に言うと虚無だった。
     題名にも書かれていた大戦争と呼ばれるシーンは最後の五分だけ、しかも雑なCGによるものだった。主人公は始終棒読みの様な話し方で、それからは長い砂漠を歩いては主人公が一言、また歩いては一言とそれ以外何もなかった。よくよく見たら砂漠も床に敷かれた砂だったし、背景も取って付けた様な合成映像だ。感想が全く出てこない。コレがクソ映画と呼ばれる所以なのか?
     途中で観るのを止める事もできたのに、どうでもいい意地で結局、最後まで観てしまった。
     その間、アオガミはいつもと同じように黙って映画に集中していたのが、今回ばかりはその行為が若干怖く感じた。
     アオガミはこの虚無を観て何を感じたのか?
    「……どうだった?」
     恐る恐る、聞いてみる。
    「少年……私は君と数多の作品を観てきた。作品や、君の感想を通じて感性を培ってきたと思っていた…だが…」
    「だが?」
     アオガミがそっぽを向き、言葉を詰まらせている。この先の言葉が言いにくいのは察しがついていた。
    「この作品からは…何も……感じる事ができなかった……」
     ……アオガミにもこの映画はつまらないものだったらしい。
    「少年……何も感じる事ができないのは……」
    「全然おかしな事じゃないからな?今回は何も感じなくて正解だからな?」
    「…そうか……すまない少年。私が提案したばかりに…」
    「たまには……こう言う事もあるって……うん…なんか……ゴメン…」
     
     しばらく目線が合わせられず、沈黙が続く。
     すごい気まずかった。
     …………………………………………
    「今日はもう寝る!」
    「しょうね…」
    「はい!布団に入る!オレは歯磨きしてから寝る!先!寝といて!」
     この沈黙に耐えきれなかった。歯磨きから終わった後も申し訳なさそうに隅で座っているアオガミを無理矢理ベッドに押し込める。もう早くこの一日を終わらせたい、その一心だった。
    「おやすみ!また明日!」
    「………おやすみ……少年………」
     小さく、すまない…と聞こえてくる。返事の代わりに頭をめちゃくちゃに撫でてやった。
     今だけはあの大きなアオガミがとても小さく感じる。それはとても可笑しかった。けど、同時に段々の罪悪感も感じてきた。そもそも自分があの時観るのを止めていればこんな事にはならなかったのだ。楽しく過ごすはずだったはずなのに!嗚呼!クソ!
     ファッキュー!クソ映画!
     
     朝、昨日の気まずさなど無かった。いいね?と言わんばかりに黙々と登校の身支度を済ませる。
    「少年、昨日は本当にすまなかった」
    「もう終わった事だし、気にすんなって」
    「ありがとう…少年。寛大な君に感謝する」
    「大袈裟だなぁ」
    「これは私の力が及ばなかった所為だ…だが安心してくれ」
     そう言ってオンデマンドのリストを見せてきた。項目にはタイトルからしてお察しな映画がズラリと並んでいる。…まさか。
    「更なる同系統の作品を視聴、学習する事によって新たな知見、感性を得る事ができると推測」
     どうしてこうなった。
    「それにより、私もクソ映画と呼ばれる作品に対し、正しい見解を持つ事が可能になるはずだ」
     やめてくれ。
    「私はしばらくこの……少年?」
     勢い余ってアオガミに抱きついた。もう…もう!あの気まずいのは二度とゴメンだ!無理!しんどい!
     
     あの後、絶対ダメ、と無理に押し通した。強く言えば大概は向こうから折れてくれると知ってて卑怯だとは思いつつ、ごねまくって未遂で終わらせた。
     アオガミと一緒なら、どんな事でも楽しくやれると思ってたのに無理な物もある。と言う事を証明してしまった体験だった。
     もう二度と、同じ轍は踏まない。
     けれども、昨晩の小さくなっていたアオガミの頭を撫でたアレは、とても可笑しく、とても楽しかった。
     
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    鴨緑

    PAST去年のうぇぶおんりで出したアオ主の読物
    「走馬灯」から次の日の告白の話
    AM11:43 ダアトでの大冒険から次の日の朝の事であった。
    「そうだ、今日はもう学校サボろう。」
     制服に袖を通し、登校の準備が出来てからの言葉だった。
    「少年、学校には行かないのか?」
    「ん、よくよく考えたら昨日しんどい思いしたし…今日一日サボってもバチは当たんないなって。それに…」
     そう言ってアオガミの方をジッと見る。白い装甲に黒と赤のラインをまじまじと眺め、
    「今、すっごいパフェって気分。」
     
     そして今現在、ファミレスのボックス席に横並びで座ってる二人の前にはいちごチョコパフェとクリームソーダが並んでいた。モーニングと呼ぶには少し遅めの、人気が少ない時間帯だった。
    「いっただっきまぁす!」
    「…いただきます。」
     古津の行動を真似るかの様にアオガミも続いて食事の挨拶をする。アオガミにとって神生で初めての食事だった。被造物…神造魔人である彼でも人間と同じ様に生活の営みはできる様に設計されていた。しかし、戦闘用に造られた彼には食事は不要なものであり、マガツヒだけでも活動する事ができた彼には、今の今まで食事の機会が無かったのだ。
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