夢のはなし「最近、よく夢を見るんだ」
「夢……ですか」
「あぁ、死の間際のね」
「バーソロミュー、それは……」
「ははっ、いや、気にしないで。そんなに重い話じゃないさ」
「ですが……」
「聞き流してくれていい、ただわたしが誰かに話して整理したいだけだからね」
「そう、ですか」
夢を見る。死の間際の夢を。
命は途絶えたはずなのに、その後の光景が、音が、感触が。
「この船のありったけの宝を船長にっ……!!」
「服も、宝石も、貴金属も! 全てだ!!」
「絶対に! 絶対に船長の死体を奴らに渡すもんか!!」
そうして乱戦の中クルーたちに飾り立てられた私の身体は、彼らの手によって海へと還される。
だんだんと海面の光が遠ざかる中、聞こえるはずのない声が聞こえていた。
『愛してくれて、ありがとう』
『最期まで、貴方をまもるわ』
『手足が捥げようとも』
『背骨が砕けようとも』
『この身体に火が放たれようとも』
『貴方が深い深い海の底で、安らかな眠りに包まれるまで』
知らないけれど、よく知っている。
聞いたことはない、けれどすぐに彼女の声だとわかった。
『そうして、貴方がそこへたどり着いたら』
『わたしも、共に沈みましょう』
『決して貴方が暴かれないように』
『あたたかな海の底で』
『わたしも、共に眠りましょう』
『愛しているわ……ロバーツ』
ロイヤル・フォーチュン。あぁ、私の愛しい船(ひと)。
最期まで共に海を駆け、死後は共に海底で眠り、そして今……
「今、あなたの宝具として共に闘っている……」
「あぁ。彼女は私の、最高のパートナーさ」
「あなたに愛されているからこそ、この船はこんなにも美しいのだね」
「おや、惚れてしまったかい? でもだめだよ、彼女は私だけの愛しい船(ひと)だからね」
「えぇ、もちろん理解しています。ただ少し……羨ましいな」
「羨ましい?」
「こうしてお互いを無二のパートナーとして想い合える相手がいることが、羨ましいと思うよ」