似ているようで明らかに違う種の嫌悪感を浴び、それでもお構いなしに歩を進めた。
「こんなところにいたのですね。〇〇様がお探しでしたよ」
嘘である。
茨が無碍にできないということはそれなりの地位を持つものなのだろうと判断し、局の所謂「お偉いさん」の名前を出した。
なんでも無い風に、だがその吐き気がする醜穢な眼差しと長々と対峙するつもりも毛頭ない。
茨の身体に蔓のように絡みつく腕を素早く取り去った。
茨の返事も待たずに腕を掴み踵を返す。
「おい、まだ話が......」
男の粘着質な声が鼓膜に広がる。
不愉快だと思うと同時に、初対面のはずのこの男のなにがそんなに気に入らないのかを私はまだよく理解していなかった。
汚らわしい。
1939