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    noa/ノア

    @eleanor_dmei

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    noa/ノア

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    [風信&南風✈] 南陽航空の忘年会で酔っぱらって事故る南風💋
    めずらしく酔っぱらってふにゃふにゃの風信さん大好き南風がいます。

    #天官賜福
    Heaven Official’s Blessing
    #風信
    windGod
    #南風
    southerlyWind
    ##風南
    ##パイロットAU

     広い店内に、熱気と笑い声が満ち溢れている。
     南陽航空の系列ホテルのバーを貸切っての忘年会。毎年代わり映えしないのだが、仕事以外でめったに集まることのない、パイロットに客室乗務員から地上クルーまでが集まるこの機会は大いに盛り上がる。
     いつもは緊張を強いられる毎日。だが切り替え上手な者ばかりな分、羽目を外す時にはしっかり外すのがお決まりだ。
    「南風、お前やってみろよ」
     テーブルを囲むソファ席では、若手のパイロット達がはしゃいでいる。その真ん中ですでに頬を赤く染めている南風が、グラスをテーブルに置き、一つ咳払いをすると、もったいぶった様子で操縦桿を握る真似をすると、ぐっと眉間に皺を寄せる。
    「南陽エアー099、スタンバイ・フォー・テイクオフ。……クソっ、玄真航空さっさとどけ!」
     見守っていた面々から笑い声が弾ける。
    「似てる似てる!」
    「さすが、風信機長ファンクラブ会員ナンバー001!」
     南風は得意げに鼻をひくつかせ、グラスを取ってぐっと一気に煽るとソファに背を預けた。「風信機長のことならなんでも任せろって」
     だが、手を叩いて笑っていた何人かが、南風の後ろを見て、さっと顔を引きつらせた。
    「ふ、風信機長……!」
     のけぞったまま、南風はぐっと目を上に向ける。
    「あれぇ、機長、いらっしゃったんですか?」
     悪びれることもなく南風はヘラヘラと笑いながら体を起こして振り返った。ゆらりとゆれる首が若干心もとない。
    「明日フライトだからいらっしゃらないかと」
    「アルコールは飲まない。誘われたからちょっと顔を出してみただけだ」
     目線で、後ろの機長たちが座っているカウンター席の方を指し、そちらに向かって歩き出す。「機長ー! こっちでいっしょにどうですか?」
     南風のよくとおる声は、がやがやとした会場をも通り抜けていく。カウンター席の面々も振り返った。
    「おう、風信。君の大事な坊やがお呼びだぞ」
     こちらもほんのりと頬を染めた面々がにやにやと笑いながら風信を見る。
    「残念ながらこっちは空いてないなぁ」「ほら、行ってやらないと飲み物にアルコールを入れるぞ」
    「冗談でもやめてください」風信が苦笑いしながら眉間を揉む。
    「風信機長~!」
     後ろから聞こえる声に風信は大きく溜息をついて振り返ると、ソファから乗り出さんばかりに身をのばして手を振る南風を見つめた。
     年配の機長に誘われて断れずにやってきたが、風信は他の機長の面々の中では一番の若手だ。彼らと宴席を過ごすのは、平たく言えば気を遣う。風信は、先輩連中に軽く会釈をして、もう一度進路を変えた。
     機長がやってくるのを見て、周りの若手たちが色めき立って場所を開ける。誰かが、さっと水のボトルを持って来て新しいグラスに注いで渡す。風信は空いた南風の隣に座ると、会釈して受け取った。
    「機長が来てくださってうれしいです~」間延びした声で言いながら目を輝かせる南風に、風信はやれやれと小さく首を振る。
    「お前、明日フライトがないからって飲みすぎじゃないか?」
    「えー、そんなに飲んでないですよ」と言いながら、南風は隣の同僚に「俺、何のんだっけ?」と尋ねる。
    「ビール、ワイン、ウィスキーのロックにテキーラ」優秀そうな彼がすらすらと答える。
    「……すごい飲み合わせだな」風信の呆れ顔もどこ吹く風といった様子で、南風は「そんなにのんだっけ?」ととぼけた。
    「でも俺、めずしくあさってまでフライトないんです~!」
     満面の笑みで言う南風に、風信もふっと笑みを漏らす。
    「まあ、たまには羽を伸ばすのも大事だな」風信が言うと、その場の空気も緩む。
    「やったぜ、風信機長のお墨付き! テキーラもう一杯いく人!」
     南陽航空きってのエースパイロットは憧れの存在であるものの、機長の中でも自分たちと年が近い風信は、副操縦士達の中でも人気がある。彼を囲む顔はどれも嬉しそうだ。
    「そういえば、この間、すごかったですね!」
     だれかが言うと、皆が尊敬の眼差しを風信に向ける。機体トラブルに見舞われながら、風信が安全に着陸させた出来事は、まだ皆の記憶に新しい。
    「いや、別に教本通りのことをしたまでだ。お前たちも、何が起きても対処できるようにならないとな」
     風信が笑顔を浮かべながらコップを傾ける。
    「それに南風もよくやってくれた」
     風信が、隣でふにゃりと座っている南風を軽く小突くと南風が真っ赤な顔で、えへへっと表情を崩す。その顔の赤さが、アルコールのせいなのか照れなのかはもはや判別不能だ。
     その様子を見て、周りの連中がクスクス笑う。
    「南風~、お前ほんとに風信機長好きだよなー」
     その言葉に南風も「ああ、好きだぜ」と返す。
    「お前、そんなに機長が大好きなんだもん、キスとかできるんじゃ」
     誰かが言った言葉に爆笑が弾ける。
    「バカか、お前、南風がキスできるのなんてヒコーキくらいのもんだぜ!」
    「アイツ、操縦のことならドンと来いだけど、女の子と手繋いだことすらないんだぞ」
     まったくこの年頃の連中は、と風信も苦笑いする。
    「お前たち、冗談もいい加減にしろよ? だいいち、南風だってそんなことしたくないに決まってるだろうが」風信が笑って言っても、鎮火どころか一層盛り上がるだけだ。
    「俺、できるし!」
     ソファに身を預けて連中を眺めていた風信の耳に、南風の声が聞こえた。
     ん? と顔を向けようとした風信は、その途端、どん、と自分の体に重いものがのしかかるのを感じた。顎の下に熱い手が触れる。
    「……!」
     その口から言葉が漏れる前に、風信の口は、温かく湿った柔らかなものに塞がれていた。
     不測の事態を察知した風信の頭が、それが自分の唇に落とされた南風の唇だと認識するのにはコンマ一秒もかからなかった。だてに訓練しているわけではない。
     周りで、歓声と笑い声と囃し立てる声の混じったものが広がっていく。自分より少し背が低いとはいえ、重みのある南風の体にのしかかられ、ソファの背からずり落ちた上体を風信は腕で支えた。周りが良く見えないが、部屋中の視線が自分に向けられているのを感じ、顔が燃えるように熱くなる。
     さらにもとめるように南風の唇が動き、風信は自分の唇の隙間を柔らかい舌が掠めるのを感じた。思わず風信の目が見開かれる。
     だがそれはキスというよりは、まるで乳をもとめる赤ん坊のようで、風信は乱暴に突き放すのをためらった。しかしそうはいっても、ずっとこうしているわけにはいかない。赤ん坊らしからぬアルコールの香りを感じながら、風信は自分の顎を掴む腕を押し返す。やっと南風の唇が離れた。
     はぁ、と水から出た時のように息をつく南風の顔を、風信は見おろした。
    「お前……」だが南風はそのまま目を閉じ、ずるずるとずり落ちていき、風信の胸に落ち着いた。
    「南風……? おい」だが、その声に答えるのは、ん……というくぐもった声だけだ。風信がその顔を覗き込むと、穏やかな寝息をたてていた。
     まったく――。そのなんとも幸せそうな笑みを浮かべた顔を見つめ、風信は苦笑いしながら天井を仰ぎ見る。ぎゅっと自分にしがみつく腕を感じながら、風信はその背を優しく叩いた。
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