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    _shikimi

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    【8/24 22:58】少し更新しました!

    書き途中あげですみません。
    「ライカブとちょっと怖い話」がテーマです。
    随時更新します!

    貴方を渡さない(仮)メリニが建国されてまだ一年には満たない頃。
    カブルーはいつも彼の傍に――とはいかず、城に投げ込まれるさまざまな相談ごとを最初に聞いて、適材適所に割り振る役割にほとんどの時間を割いていた。
    なにぶん国が興ったばかり。
    国の中枢には勿論優秀な人が揃っているけれど、肩を並べて仕事をするのは初めて同士だらけだ。その中でカブルーが一番、誰がどんな能力に秀でているだとかコネクションの繋がりだとかを把握するのが早かった。
    何より人と人を繋ぐのが上手いと頼られて自然と仕事と人との調整に手を入れて円滑化しまくった結果、今のポジションに就いてしまった。
    頼られるのは勿論嬉しいし、己の能力を認めてもらえるのはまあ、嬉しい。何よりそれがライオスの役に立って彼にとって必要な人物になっているのは、少し前の自分からしたら信じられないくらいだ。
    いつも追いかけて、見て欲しくて――そんな彼が今は。
    そう、今は。
    カブルーはため息をつく。
    そう、今のライオスはカブルーの顔を見ると、こちらの様子を伺うような顔で少し上目遣いで見てくるようになった。
    何を考えているかはおおよそ想像がつく。
    彼なりに、カブルーに対して申し訳なさとかこちらを慮っているようなことだと思う。
    ライオスは色々問題のある人ではあるけれど、基本的に育ちが良い人間独特の『素直』さがあると思う。ヒネていないというか。
    だから色々な問題に直面して周りの人達に好き勝手何かを言われたりしながら、それでも自分の役目からは逃げないし、カブルーに対しても『巻き添えにして申し訳ない』という気持ちを拭えず、さりとて直接はそういう話を詰める余裕も器用さもなくて『ああいう』態度を向けてくるのだろうなと思う。
    カブルーからしてみればライオスと離れる事が増えたのは少し寂しくもあるけれど、重要な会議や面会の時はライオスから直接横にいて欲しいと言われるし、このポジションも自分に合っていると思っている。
    なので何もライオスから申し訳なく思われることはないのだけれど。
    なんとか自分の気持ちを彼に伝えて、抱えている重みを解消してあげたいのだがあれはあれで――デカい図体なのに捨てられた子犬のようにこっちを見てくるのは――正直ちょっと可愛い。優越感と意地悪ごころがブレンドされてこっそり微笑みを抑える時もある。
    ライオスの色々な面をもっと知りたい。
    いち冒険者だった時と一見同じようなその欲望は、今はちょっと形を変えている、と思う。
    まだ自分の中に秘めてなるべく確認しないようにしてる『それ』は、ライオスと接している時に何度も自覚させられるし、最近は眠る前にふと思い出してベッドで転がって振り払ってから寝ることもある。
    ただでさえ振り回されてるのに、もう多分駄目だと思う。
    「惚れた側が弱いんだよなぁ……」



    カブルーがいつものように雑多な相談事を聞いていると、どうしても王様に直接相談したい、とある集落の長の代理という男がやってきた。
    かなり不安そうな顔をして、最初に対応した者の話ではとにかく王様に合わせて欲しい、の一点張りだそうだ。
    カブルーは男へと穏やかに微笑みながら
    「どうぞ楽になされてください。まず私にお話を聞かせてくださいますか?どうすれば貴方の良いお力になれるのか城の皆で考えますから安心なさって下さい」
    男はカブルーの方を不安そうに見つめながら、落ち着きなく両手を胸の前で動かしている。掌にはマメがたくさん出来ていて、男はそれを指先でなぞりながらポツポツと呟き出した。
    「でも……うちの長は王様に、と」

    カブルーは椅子を立って正面に座る彼の方に近寄ると、男は動かぬまま、不安げにカブルーを見上げた。カブルーは男の両の手を自分のそれで包み込み、さっきよりもゆっくりと話し掛けた。
    「何か大変なお話なのですね。私も王とは直接会話のできる立場です。貴方のお話を聞いて、必ず王へ伝えるとお約束致します」
    柔和な笑顔を向けてカブルーが促すと
    「ありがとうございます……!動揺してしまって、俺。不躾なことを……すみません」
    「大丈夫ですよ。記録には今ここからの事だけを書きますから」
    カブルーがウインクすると男はほっとした表情を浮かべ、頷いた。
    (計算どおり)
    ひとまず話が聞ける状態になってよかった。
    これはまだ午前中2つ目の案件なのだから。

    男の話はまとめるとこんな内容だった。
    集落の長が古道具の市場で鏡を購入したらしい。小さな飾りぶちのついた鏡は、長のまだ幼い娘が一目で気に入って自室に飾ったそうだ。
    娘は部屋で鏡をよく眺めていたらしく、最初はそんなに気に入ってくれたならよかったと長も微笑ましく見ていたという。
    ある日の真夜中。
    遅く仕事を終えた長が娘の部屋の前を通ると話し声が聞こえた。こんな真夜中に?と立ち止まって耳を澄ませてみると独り言のようなそれは、しかし誰かと会話しているようだった。
    長が耐えきれず娘の部屋に入ると、真っ先に窓越しに入る月光を反射して輝いている鏡に目を奪われた。
    娘に目をやると、彼女は鏡の横で寝息を立てている。
    何かゾワゾワとしたものが背筋を伝う衝動に押されるように彼は娘を起こした。
    「お父さん……?」
    娘が目を擦りながらぼうっとした声を発するのを聞いてやっと少しほっとする。
    「お前の部屋の前を通りがかったら、お前が誰かと話しているような声がしてね、思わず入ってしまったんだ」
    どうやら寝言だったようだね、と長が続けると
    「あのね、鏡の妖精さんに会ってたの」
    と娘は笑ったという。
    愛する娘のいつもと変わらない笑顔。
    妖精とは?と詳しく聞いてみたところ
    「鏡の中から話しかけてくれてお友達になったの。色々お話を聞いたんだけどよくわからなくて……そしたら違う世界の"妖精"さんかな?って言ってた」
    夢の話なのだろうそれは薄気味が悪く、"妖精"も何かはわからずで、長はもしや魔物が娘を誑かそうとしているのかと心配になった。そして、メリニの王は魔物を滅する事ができる能力があると聞き及んでいたので、是非鏡の魔物退治を依頼したいのだという。

    カブルーは心の内側で二人の自分が取っ組み合いをしているさまをなるべく冷静に抑えながら机の上に肘をついて祈るようなポーズをした。
    実際その仕草には無意識に祈りが込められていたと思う。
    「なるほど……事情はわかりました。しかしそれは鏡を捨ててしまえばすぐに解決するのでは?」
    「長も別の鏡を買ってやるからと娘さんを宥めたらしいんですが……娘さんはかなりその鏡を気に入っていて難しいらしいんです。魔物が憑いていると言っても信じてくれず手放すどころかますます……」
    「その妖精が魔物だという核心が、長にはあるのでしょうか」
    カブルーのイメージではそういう話は巷では結構『霊の仕業だ』と言われることが多い気がする。
    「長が言うには人を誑かそうとするのは魔物に違いない、と」
    「その誑かそうというのは具体的には」
    「実は長もそのあたりは頭に血が上ってて説明があんまり要領を得なくて、俺も詳しくは……」
    困った顔で男は頭をぼりぼりと搔く。あとは何を聞いても、大した補足情報にはならなかった。
    (完全に怖い話じゃないか)
    カブルーは戸惑った。
    こんな話を素直にそのままライオスにお出ししたらどんなとんでもない事になるんだろう。
    (でも魔物ではなく幽霊話っぽいし?)
    (いや……でも魔物の仕業とか言われそうな気がしないでもない。ありえる)
    カブルーが真剣に考え込んでいると、来客室の扉がノックされた。
    次の相談相手の約束の時間のようだ。
    ノック音で時間を察した男は急にさっとカブルーに近づいて両手を掴んで訴えてくる。
    「どうかどうかお願いします!王様連れてこないと俺も長に何を言われるか……」
    カブルーは笑顔で頷きながらそれを解くと、一礼して去る男の背中を見ながら呟いた。
    「どうするかな……これ……」

    その日の相談諸々の受付を終了する頃になっても、カブルーの頭の中は鏡の話でいっぱいだった。
    丁度今日は他に大きなトラブルになりそうな事や、緊急性を要するような話が出てこなかったのもある。
    (やっぱりどう考えてもライオスにそのまま報告したら面倒になる話だ。絶対)
    カブルーが受けた話は、一度ヤアドを通してからライオスに伝えることになっている。ヤアドと相談して、ライオスまですぐに報告は必要ないだろうと判断される話なんて山ほどある。
    (ライオスに報告する時には解決済みのパターンにすればいいか)
    最終的には全てライオス――『王様』へ報告するのが決まりではあるけれど、それが一番平和にやり過ごせる気がする。
    もはや固い意志に変わったそれを、カブルーはすぐにヤアドに伝えようと部屋を出た。



    「なるほど。それはかなり……」
    カブルーの報告を聞いて、ヤアドは沈痛な面持ちで言葉を切った。椅子の背に体を深く預けると、両の瞳を閉じて片手で顎を弄りだす。
    「ですからこれは、私が王の代理という事で現地に向かって解消すべき案件かと思いまして。勿論王には」
    「……解決済み、として?」
    ヤアドがチラリと片目を開けて、上目遣いにカブルーを見てくる。その瞳には頼るような光が揺れている――気がする。
    「例え何か悪さをしているものが"居る"としても、それは王の手を煩わせるほどの事ではないと思います。私一人で解決出来るならそれが一番良いかと」
    「そうですね…もし、万が一にも」
    「そうなんです。アレの仕業だったら……」
    「……大変やっかいですからね」
    今、カブルーとヤアドの脳裏には共通のあの単語が浮かんでいる。

    『魔物』

    これが絡んだ場合、カブルーにもヤアドにも、ライオスの介入という名の暴走を止めるのはかなり面倒だ。
    「わかりました。それでは申し訳ないのですがお願いしてもよろしいでしょうか?いつもいつもこういう役割までこなして頂いて申し訳ないのですが……」
    「いえ、それがベストだと思います。解決できるよう微力を尽くしますので」
    話はすんなりとまとまり、その瞬間から二人はどこからか急にライオスが『今の話聞いてたぞ!』と飛び出してこないかと恐怖を覚えて、そそくさと解散する事にした。
    「くれぐれも無理はなさらず。何かあれば応援はちゃんと呼んでくださいね」
    ヤアドはカブルーに頭を下げる。
    カブルーも深く一礼して、部屋を辞した。

    急に忙しくなってしまった。
    でも、正直外に一人で出られるのは、面倒ごとをさておけば少し良い羽伸ばしになりそうだ。
    ライオスを極力近づけない案件なのがとても惜しい。
    もしも一緒に。例えば、二人きりで旅が出来たら。
    魔物のことなんて忘れるくらい――は難しいのでまあほどほど魔物の話をしても構わないから。
    ライオスは魔物第一ではあるけれど、他にもなんでそんな事を?というような雑学も色々知っている。自分が少しでも興味のある事を、こっちの理解の速度はお構い無しに喋りまくるライオスの表情は――言っている事はほとんどわからないのに――悔しいけれどぴかぴかに輝いていて見ていて心地よいのだ。
    それを独り占めしながら、色々な場所を回る事ができたなら――。
    そこまで考えて、あまりにも自分が『恋している人間』過ぎて両の頬を軽く叩く。
    この任務はむしろ彼を近づかせてはいけない案件なのだから。
    それでも、荷造りをしながら自室の窓越しにライオスの執務室にまだ明かりがついているのを見つけてしまうと、どうしても言葉を交わしたくなってしまう。
    (明日、俺、城を離れますからね)
    というかライオスに会いたい。
    自分の面倒臭さに少し笑って、カブルーは身支度の続きを始めた。



    翌日。男の泊まってた宿はあらかじめ聞いていたので早速訪ねて事情を話すと、彼は興奮を抑えながら
    「王様にちゃんと話してくれたんですね?それで貴方がまず様子を見て下さることになったと」
    「はい、安心して下さい。私の見聞きした事は必ずライオス王へ伝えます」
    内心は無理矢理にでも解決する気満々なカブルーは、それでも表面は慇懃に振る舞う。男はすっかり安心したようだった。ふう、と息を吐いて
    「良かった……本当にありがとうございます!」
    宿の主人に言って馬を借りると、二人は早速集落へと急いだ。

    「おお、こんなに早く……!ささ、どうぞどうぞ」
    集落の長は興奮した面持ちでカブルーを見て、すぐに家の中へと招く。
    彼はカブルーを案内した男によくやったとそっと袋を渡す。報酬なのだろう。男は男でそれを受け取るとじゃあ俺はこれで、と足取り軽くその場から離れていく。
    案内された場所は交通網から少し外れた、小さな集落だった。
    長の話ではここは自給自足で、たまに少し離れた町へ買い物に行くのが娯楽のようなひっそりとした場所だという。
    「それでも今までは色々ありましたけどねぇ……今の王様のお陰でどうやら魔物の被害には遭わないようになったらしいんでしょう?感謝しておりますよ」
    客間などは無いようで、いつも家族で食事をしているような部屋に案内された。素朴な椅子とテーブルに、二人は向かい合わせに座る。
    「ええと」
    多分お茶でも出させようと妻を呼ぼうとした長を遮って、カブルーは少し前のめりに
    「お気遣いなく。早速本題に入りたいのですが」
    「おお、はい」
    長はハッとした顔をして、それでも同じように前のめりになり少し声をひそめて大体のお話は聞いて下さってると思いますが……と続けた。
    カブルーは頷き
    「ええ、ですので早速その鏡を見せていただいても?」
    「わかりました。ただ……お聞き及びかと存じますがあれはその、娘が大切にしておりまして」
    「今も娘さんがお持ちなんですか?」
    「娘が『あれ』を見た日からは妻が娘と寝ておりますので鏡と娘を二人きりにはしておりませんが……鏡を隠すとぐずるので手を焼いておりまして。ですから使者様にも失礼があればと……それが」
    「お気遣いなく」
    カブルーはにっこりと笑う。

    実際、長の心配は杞憂だった。
    カブルーはすぐに幼い少女の心を掴んで、彼女はすっかり懐いてくれた。
    少女からしたら、急に王様の使いとして年上の青年が現れただけでもかなり衝撃的なんだろうと思う。
    鏡もあっさりとカブルーの手に取らせてくれた。
    その鏡は、カブルーが想像していたような古めかしい意匠も、凝った細工などもなかった。
    シンプルな装飾のもので、大きさからすると洗面所におくようなものより少し小ぶりだ。
    少女が持つと少し抱きしめるような形になるけれど、カブルーは易々と片手で持てる。
    (家の入り口に掛けたり机に置くようなものっぽいかな……?)
    カブルーがまじまじと鏡を眺めている間に、少女は鏡を手に入れてから自身に起こった事を身振り手振りでカブルーに語ってくれる。
    内容はおおよそ把握していたこと、そして予想していた事だったのでカブルーもうんうんと頷き先を促していると
    「それでね、それでね。ほんっとうにびっくりしたの!だってね!お兄さん夢の中で会ったひとに、とってもよく似てるのよ!」
    急にとんでもないことが飛び出してきた。
    「お……僕がその……『妖精さん』に?」
    「そうなの!だからわたしてっきり夢の中から出てきてくれたって思って!それでとっても驚いて」
    (俺に似てる妖精……?!なんでそんな話になるんだ?!)
    内心全く冷静で無いカブルーをよそに、少女はかなりはしゃいでいるようだ。
    「でもお兄さんは王様の使いの方なんでしょう?そしたら、妖精さんはどうしてお兄さんに似ていたのかなぁ……それに」
    こっちが聞きたい、という言葉を飲み込んで、カブルーはあどけない視線を上に遣りながら頬杖をついている考え込んでいる少女に
    「夢にその『妖精さん』が出てきたのは一度きりなんだね?」
    と確認した。
    もし仮に鏡に何か宿っていて(もしくは鏡自体が魔物だとして)少女に取り憑こうとしているなら、接触が一度きりなのはなんとなく腑に落ちなかった。
    少女は自分の考えを何か言おうとしていたようだったが、カブルーの質問に
    「そうなの!だから……そう!だからね、お兄さんが来た時に鏡の中から迎えに来てくれたんだって思って」
    その瞬間。
    カブルーは少しゾクリ、とした。
    どうしてなのかはわからない。
    でも、そう。多分。
    『迎えに来た』という言葉がきっと。

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