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    _shikimi

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    書き途中あげですみません。
    「ライカブとちょっと怖い話」がテーマです。
    随時更新してなるべくイベント中には完成させたい…!

    貴方を渡さない(仮)メリニが建国されてまだ一年には満たない頃。
    カブルーはいつも彼の傍に――とはいかず、城に投げ込まれるさまざまな相談ごとを最初に聞いて、適材適所に割り振る役割にほとんどの時間を割いていた。
    なにぶん国が興ったばかり。
    国の中枢には勿論優秀な人が揃っているけれど、肩を並べて仕事をするのは初めて同士だらけだ。その中でカブルーが一番、誰がどんな能力に秀でているだとかコネクションの繋がりだとかを把握するのが早かった。
    何より人と人を繋ぐのが上手いと頼られて自然と仕事と人との調整に手を入れて円滑化しまくった結果、今のポジションに就いてしまった。
    頼られるのは勿論嬉しいし、己の能力を認めてもらえるのはまあ、嬉しい。何よりそれがライオスの役に立って彼にとって必要な人物になっているのは、少し前の自分からしたら信じられないくらいだ。
    いつも追いかけて、見て欲しくて――そんな彼が今は。
    そう、今は。
    カブルーはため息をつく。
    そう、今のライオスはカブルーの顔を見ると、こちらの様子を伺うような顔で少し上目遣いで見てくるようになりました。
    何を考えているかはおおよそ想像がつく。
    彼なりに、カブルーに対して申し訳なさとかこちらを慮っているようなことだと思う。
    ライオスは色々問題のある人ではあるけれど、基本的に育ちが良い人間独特の『素直』さがあると思う。
    ヒネていないともいう。
    だから色々な問題に直面して周りの人達に好き勝手何かを言われたりしながら、それでも自分の役目からは逃げないし、カブルーに対しても『巻き添えにして申し訳ない』という気持ちを拭えず、さりとて直接はそういう話を詰める余裕も器用さもなくて『ああいう』態度を向けてくるのだろうなと思う。
    カブルーからしてみればライオスと離れる事が増えたのは少し寂しくもあるけれど、重要な会議や面会の時はライオスから直接横にいて欲しいと言われるし、このポジションも自分に合っていると思っている。
    なので何もライオスから申し訳なく思われることはないのだけれど。
    なんとか自分の気持ちを彼に伝えて、抱えている重みを解消してあげたいのだがあれはあれで――デカい図体なのに捨てられた子犬のようにこっちを見てくるのは――正直ちょっと可愛い。優越感と意地悪ごころがブレンドされてこっそり微笑みを抑える時もある。
    ライオスの色々な面をもっと知りたい。
    いち冒険者だった時と一見同じようなその欲望は、今はちょっと形を変えている、と思う。
    まだ自分の中に秘めてなるべく確認しないようにしてる『それ』は、ライオスと接している時に何度も自覚させられるし、最近は眠る前にふと思い出してベッドで転がって振り払ってから寝ることもある。
    ただでさえ振り回されてるのに、もう多分駄目だと思う。
    「惚れた側が弱いんだよなぁ……」



    カブルーがいつものように雑多な相談事を聞いていると、どうしても王様に直接相談したい、とある集落の長の代理という男がやってきた。
    かなり不安そうな顔をして、最初に対応した者の話ではとにかく王様に合わせて欲しい、の一点張りだそうだ。
    カブルーは男へと穏やかに微笑みながら
    「どうぞ楽になされてください。まず私にお話を聞かせてくださいますか? どうすれば貴方の良いお力になれるのか城の皆で考えますから安心なさって下さい」
    男はカブルーの方を不安そうに見つめながら、落ち着きなく両手を胸の前で動かしている。掌にはマメがたくさん出来ていて、男はそれを指先でなぞりながらポツポツと呟き出した。
    「でも……うちの長は……王様に、と」

    カブルーは椅子を立って正面に座る彼の方に近寄る。
    男は動かぬまま、不安げにカブルーを見上げる。
    カブルーは男の両の手を自分のそれで包み込み、さっきよりもゆっくりと話しかけた。
    「何か……大変なお話なのですね。大丈夫ですよ。私も王とは直接会話のできる立場です。貴方のお話を聞いて、必要であれば必ず王へ伝えるとお約束致します」
    柔和な笑顔を向けてカブルーが促すと
    「ありがとう……ございます……動揺してしまって、俺。不躾な……あの、すみません」
    「大丈夫ですよ。記録には今ここからの事だけを書きますから」カブルーがウインクすると男はほっとした表情を浮かべ、頷いた。
    (計算どおり)
    ひとまず話が聞ける状態になってよかった。
    これはまだ午前中2つ目の案件なのだから。

    男の話はまとめるとこんな内容だった。
    集落の長が古道具の市場で鏡を購入したらしい。壁掛けの小さな飾りぶちのついた鏡は、長のまだ幼い娘が一目で気に入って自室に飾ったそうだ。
    娘は部屋で鏡をよく眺めていたらしく、最初はそんなに気に入ってくれたならよかったと長も微笑ましく見ていたという。
    ある日の真夜中。
    遅く仕事を終えた長が娘の部屋の前を通ると話し声が聞こえた。こんな真夜中に?と立ち止まって耳を澄ませてみると独り言のようなそれは、しかし誰かと会話しているようだった。
    長が耐えきれず娘の部屋に入ると、真っ先に窓越しに入る月光を反射して輝いている鏡に目を奪われた。
    娘に目をやると、彼女は鏡の横で寝息を立てている。
    何かゾワゾワとしたものが背筋を伝った長は、その衝動に押されるように娘を起こした。
    「お父さん……? 」
    娘が目を擦りながらぼうっとした声を発するのを聞いてやっと少しほっとする。
    「お前の部屋の前を通りがかったら、お前が誰かと話しているような声がしてね、思わず入ってしまったんだ」
    どうやら寝言だったようだね、と長が続けると娘は
    「あのね、鏡の妖精さんに会ってたの」
    と娘は笑ったという。
    愛する娘のいつもと変わらない笑顔。
    妖精とは、と詳しく聞いてみたところ
    「鏡の中から話しかけてくれてお友達になったの。色々お話を聞いたんだけどよくわからなくて……そしたら私は違う世界の"妖精"さん、かなって言ってた」
    夢の話なのだろうそれは何やら薄気味が悪く、結局"妖精"も何かはわからずで、もしや魔物が娘を誑かそうとしているのかと心配になった長は、メリニの王ことライオスが魔物を滅する事ができる能力があると知って是非鏡の魔物退治を依頼したいのだという。

    カブルーは心の内側で二人の自分が取っ組み合いをしているさまをなるべく冷静に抑えながら
    「なるほど……事情はわかりました。しかしそれは鏡を捨ててしまえばすぐに解決するのでは? 」
    「長も別の鏡を買ってやるからと娘さんを宥めたらしいんですが……娘さんはかなりその鏡を気に入っていて難しいらしいんです。魔物が憑いていると言っても信じてくれず手放すどころかますます……」
    「その……何故その妖精が魔物だと思うのですか? 」
    カブルーのなんとなくのイメージではそういう話は結構『霊の仕業だ』と言われることが多い気がする。
    「それは……俺もそう思うんですが……長が言うには人を誑かそうとするのは魔物に違いない、と」
    「その誑かそうというのは具体的には……」
    「うーん、長もそのあたりは頭に血が上っててあんまり説明が要領を得なくて、俺も詳しくは……」
    あとは何を聞いても大した補足情報にはならなかった。
    (完全に怖い話じゃないか)
    カブルーは戸惑った。
    こんな話を素直にそのままライオスにお出ししたらどんなとんでもない事になるんだろう。
    (でも魔物ではなく幽霊話っぽいし? )
    (いや……でも魔物の仕業とか言われそうな気がしないでもない。ありえる)
    カブルーが真剣に考え込んでいると、来客室の扉がノックされた。
    次の相談相手の約束の時間のようだ。
    ノック音で時間を察した男は急にさっとカブルーに近づいて両手を掴んで訴えてくる。
    「どうかどうかお願いします……王様連れてこないと俺も長に何を言われるか……」
    カブルーは笑顔で頷きながらそれを解くと、一礼して去る男の背中を見ながら呟いた。
    「どうするかな……これ……」

    その日の相談諸々の受付を終了する頃になっても、カブルーの頭の中は鏡の話でいっぱいだった。
    丁度今日は他に大きなトラブルになりそうな事や、緊急性を要するような話が出てこなかったのもある。
    (やっぱりどう考えてもライオスにそのまま報告したら面倒になる話だ。絶対)
    カブルーが受けた話は、一度ヤアドを通してからライオスに伝えることになっている。ヤアドと相談して、ライオスまですぐに報告は必要ないだろうと判断される話なんて山ほどある。
    (ライオスに報告する時には解決済みのパターンにすればいいか)
    最終的には全てライオス――『王様』へ報告するのが決まりではあるけれど、それが一番平和にやり過ごせる気がする。
    もはや固い意志に変わったそれを、カブルーはすぐにヤアドに伝えようと部屋を出た。
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