「む」
「あ」
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仙台市国分町。
日が沈み、疲れ切った大人が疲れと愚痴を酒と食で吹き飛ばす場所。
そこで縁下もまた、生ビールとホヤ酢で疲れを吹き飛ばしていた。
「っ〜〜」
炭酸が喉を通り、麦の香りが鼻を通り出ていく。すぐさまホヤを口に入れれば、酢とホヤの磯と甘さが口いっぱいに広がる。
生き返る~
縁下の仕事は理学療法士である。
患者一人一人、症状はバラバラで対応が同じなんて事はない。患者ごとに覚える事も考える事も多いし、体力はあれど仕事はしんどい。けれども、だんだんと回復していく患者の様子は嬉しいしやり甲斐もある。
でもやりがいとしんどいは別だ。
だからこうやってたまに吹き飛ばしにくる。
大概は同僚や友人らと来るが、今日は一人で来ていた。
1958