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    もすけ

    もすけのポイピクです!

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    もすけ

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    学校へ行こう分からないって??時代だぁ…😭
    ※モブの名前が出てきます。がっつり喋ります!

    憧れ、シュチュエーション   ワンライお題:
         憧れ、シュチュエーション
         
               ※モブ視点
                学校へ行こう風
     
     
     

     同じクラスの隣の席、ちらりと盗み見ると同じ男子高校生とは思えない綺麗な横顔がそこにあった。
     すっと背筋を伸ばして、ちゃんと先生の話を聞き真面目に授業を受けている。
     彼の回りだけキラキラしてまるで世界が違って見えた。
     授業なんてそっちのけで思わず見惚れていると、先生の「おい矢澤」と呼ぶ声が聞こえ、はっと我に返って勢いよく立ち上がり「はい!!!」と大きく返事をした。
     思ったよりも大きい声が出てしまった。やべぇやっちまった、と思ったけど今更もう遅い。
     先生からは「授業に集中しろよ」とお咎めを受け、顔に熱が集中していくのが分かった。ほとんどのクラスメイトはくすくすと笑っている。
     視線だけ轟くんを見てみたけど、彼はいつもと変わらない表情をしていた。彼の顔は彫刻のように美しいけど、まだ俺に笑いかけてくれた事は一度だってない。
     卒業までには話しかけて笑ってもらうぞ、と顔を赤くしたままの俺は手で頬を覆いながら椅子に座りそう決意した。

     と、言うのが数日前の話。
     高校3年の春、長期戦覚悟の上での決意表明であったが卒業までのノルマは数日後にあっさりとクリアされてしまったのである。
     とある月曜日。
     いつものように学食を頼んで空いている席を探したがどこもいっぱいでとてもじゃないけど友達と一緒に食べれる状況ではなく、残念ながら別の席で食べる事になった。
     今日の昼飯は唐揚げ定食にした。安いしうまいしハズレがない。両手を合わせて箸を取り唐揚げを掴んだ時だ。
    「隣いいか?」
     ぽろ、と掴んでいた唐揚げを皿の上に落としてしまった。あまりにも唐揚げに夢中になりすぎて隣の奴が食べ終わったこと、席を立ったこと、隣に人が居ることにも気がつかなかった。
     そして、顔を見なくともわかること声の主は。
     ぎこちなく右ななめ上を見ると、想像の通りきらきらオーラを纏った轟くんがお盆を持って立っていた。
     やべぇ!!!!初めて話しかけられちゃった!!お盆持っててもサマになるってどう言うこと!?!?
    「へ、あ、うん!どうぞどうぞ!!」
     心と頭と口が全部違う人間になったみたいに色んなところが大変なことになっていた。
     憧れの存在が隣にいる!!いや、いつも隣にいるけどこの距離は!!
     さっと顔を逸らす、こんなニヤニヤした顔見せられねぇと思ったからだ。
     隣から「わりぃな」と言う声が聞こえた。
     いえ、とんでもございません!と心の中で返事をして「こちらこそです!?」なんて訳の分からないことが口から出た。
     失敗した…もう轟くんの方見れない…と思ったけど、ふっ、って空気の抜ける音がした。
     気になって轟くんの顔を見てみたら、なんか、花が飛んでいた。いや、花が周りに見えた気がした。轟くんが微笑んだと数十秒経ってから気がつく。
     破壊力がえげつないイケメンの微笑みを見てしまって暫く固まっていると轟くんが「矢澤?」と聞く。「だだだだだ大丈夫!!!!」と、どもりながらもなんとか返事をすると轟くんは笑った。「そうか」と言いながら学食の蕎麦を食べ始めている。
     食べた後も一言二言交わして轟くんはその場を後にした。
     唐揚げの味は分からなかった。多分俺の足、地面から5センチは浮いていたと思う。
     最初は顔がいいくらいにしか思っていなかったのに、笑った顔を見て好きだと気づいてしまった。思えば他人に興味のない俺が気になる時点で好意を持っていたのだろう。
     男同士だとかそんなのはもう関係ない、この想いは止まらない。
     隣の席だと言うこともあって、轟くんとは日常的に話すようになりかなり距離が近づいた。
     轟くんがいつも蕎麦を食べているから、好きなのかと思って俺の実家が蕎麦屋だと言う話をしたら大きい目をきらきらさせて「すげぇ!」と言ってもらえて嬉しかった。
     人生で一度も蕎麦屋を継ぐことを考えていなかったけど、蕎麦職人もいいかもな、なんて思ったりして。
     店内にはエプロンを付けた轟くんが注文を聞いて、俺が蕎麦作って。目が合った瞬間にっこり笑うんだろ、最高じゃないか。蕎麦屋になろう。そう決意した。
     ある日は首元に赤い虫刺されの跡があって、指摘したらあわてて隠していた。そんな恥ずかしがらなくてもいいのに、可愛いなぁ。羨ましい蚊め。

     なんてことがあったりして、とうとう夏がやってきた。
     うちの学校に近々、テレビの番組で芸能人がやってくるらしい。
     『高校へ行こう』って言う番組で、高校生が全校生徒の前で思いの丈を叫ぶって企画を毎週やっている。昔からそれを見るのを楽しみにしていた。
     自分が言う側として全く興味なかったけど今年最後の高校生活だしこんな機会人生でもうないだろうから、せっかくだからと申し出てみた。
     そしたらなんと、通ってしまった。
     あれよあれよと言う間に時は流れて、今屋上で待機している。
     ドキドキしすぎて心臓が口から飛び出そうだ。
     前の奴が終わったみたいで「矢澤くんどうぞ」と声を掛けられる。深呼吸を3回して、セットされている屋上の台に登る。
     手をぎゅっと握りしめて、下を見下ろした。
     声が震えないように、息をしっかり吸って叫んだ。

    「三年C組ぃ!矢澤 良平ぇ!今日は、ある人に言いたい事がありまぁぁあす!!」
    「「なーにー!!」」

     自分がテレビで見たのと一緒だ。全校生徒が声を揃えて返事をしている。
     色んな髪色の人が居る中でお目当ての人物を探す。分かりやすい赤と白の頭を見つけてゴクリと唾を飲んだ。轟くんがこちらを見上げている。

    「同じクラスのぉ!!轟 焦凍くん!!」

     ざわざわ、と下に居る人から口々に声が聞こえた。轟くんからの返答はない。
     隣に居た知らない緑色の頭の男子が轟くんに声をかけているのが見えた。そしてはっとしたように「俺か…?」と呟いて居るのが目に入った。俺は視力がいいんだ。
     轟くんは「わりぃ、俺だと思わなかった」とこちらに聞こえるように声を出し、それを聞いて大丈夫ー!!と返事をする。
     ついに、告白だ。拳を更にぎゅっと固く握って再び口を開く。

    「男同士だとか、そんなの関係なく好きです!!俺と付き合って下さいーーーー!!」

     はぁ、はぁ、言ってしまった…。下からはひゅーだのきゃーだの色々聞こえた。問題の轟くんはと言うと、きょとん顔だ。俺は徐々に顔が赤くなっていくのを感じる。
     轟くんが口を開くのが見えた。

    「わりぃ、俺爆豪と付き合ってるからお前とは付き合えねぇ!」
    「おい半分野郎が何勝手に言ってやがんだよ!!!!」
    「正直に言わねぇと悪いだろうが」
    「時と場合によるだろうが!!!!秘密にしようって言ったのどこのどいつだ!?あぁ!?」
    「俺だな」
    「舐めとんのかクソ舐めプ野郎が!!!!」

     下ではそんなコントが繰り広げられ、俺の告白よりも彼らが付き合っていた事にみんな興味津々のようだ。先程よりも更にザワついている。
     気の強そうな金髪と付き合ってると聞いた俺は「轟くん、ありがとうー!!これからも友達で居て下さいーー!!」と叫んだ後、返事も聞かずに待機場所に戻り膝から崩れ落ちた。
     ってことはあれか、前に見た首元に蚊の刺された跡があった訳じゃなくそう言う事だったのか…。
     悔しくて悲しくて轟くんが好きで好きで、気がつけば涙を流していた。
     とん、と肩に手を置かれて顔を見上げると、滲む視界の中で知らないクラスの赤髪男子が「ドンマイ、あいつらあぁ見えて相思相愛だから、次の恋愛で頑張れ」と言ってきた。
     その優しさに俺はまた泣いた。そうして赤髪男子は次呼ばれたと言って屋上の台へと向かったのだった。
     こうなったら絶対に蕎麦職人になってやる。有名になって轟くんが店に来た時にあっと見返してやるんだ!!!そう意気込んで十年が経ち、念願の店を開いて本当に轟くんが客としてやってきた。
     隣にはあの時の気の強そうな金髪が。
     轟くんとそいつ、互いの薬指にシルバーのペアリングが光っているそれを見た俺はまた泣いた。
     
     
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